「火に油を注ぐ」「火がつく」「火の車」など、日本語には「火」を使ったことわざや慣用句が数多く存在します。
本記事では、日本語の豊かな表現力を感じられる「火」にまつわることわざ・慣用句を厳選し、意味や使い方、例文までわかりやすく解説します。
「火」のことわざ
飛んで火に入る夏の虫 (とんでひにいるなつのむし)
意味・教訓:自ら進んで危険や災難の中に飛び込んでいくことのたとえ。夏の虫が光に誘われて火の中に飛び込み焼け死ぬことから。無謀な行動への戒め。
例文:警告を無視して危険な投資に手を出すなんて、飛んで火に入る夏の虫だ。
焼け石に水 (やけいしにみず)
意味・教訓:熱く焼けた石に少量の水をかけてもすぐに蒸発してしまうことから、
努力や援助がわずかで全く効果がないこと、何の役にも立たないことのたとえ。
例文:彼への援助は、焼け石に水だった。
火のない所に煙は立たぬ
(ひのないところにけむりはたたぬ)
意味・教訓:火がなければ煙が立たないように、噂が立つからには、必ず何らかの根拠や原因があるはずだということ。
例文:彼が辞職するらしい。火のない所に煙は立たぬと言うから、何かあったのだろう。
熱い火箸も扱いよう
(あついはしもあつかいよう)
意味・教訓:どんなに気性が激しく扱いにくい人でも対応の仕方によっては従順になったり、うまく扱えたりするということのたとえ。
例文:あの人は短気だが、熱い火箸も扱いようだから、言い方には気をつけて頼んでみよう。
対岸の火事
(たいがんのかじ)
意味・教訓:川の向こう岸の火事は自分に直接の危害がないことから、自分には関係がなく何の苦痛も感じないことのたとえ。
他人事として傍観する態度。
例文:彼の会社の経営危機は、私にとっては対岸の火事だ。
灯火親しむべし
(とうかしたしむべし)
意味・教訓:秋の涼しい夜は、灯火の下での読書に適しているということ。秋の夜長の過ごし方を示す言葉。由来は唐の韓愈の詩。
例文:灯火親しむべし、というから、今夜はゆっくり読書を楽しもう。
火事と喧嘩は江戸の華
(かじとけんかはえどのはな)
意味・教訓:火事が多く、喧嘩っ早いことが、江戸の町の活気を示す特徴であるということ。江戸っ子の気性を表す言葉。現代では騒々しいことの例えにも使う。
例文:火事と喧嘩は江戸の華と言うけれど、現代では迷惑なだけだ。
遠くの火事より近くの喧嘩
(とおくのかじよりちかくのけんか)
意味・教訓:遠くで起こっている大きな事件よりも、身近で起こる小さな揉め事の方が、実際には気になるし、関係も深いということ。
例文:海外の大きなニュースより、近所の騒音問題の方が気になる。遠くの火事より近くの喧嘩とはよく言ったものだ。
風前の灯火 (ふうぜんのともしび)
意味・教訓:風の前に置かれた灯火のように、危険が目前に迫っていて、今にも滅びそうで非常に危うい状態のたとえ。命や物事が長続きしそうにないさま。
例文:彼の会社は、資金繰りが悪化し、まさに風前の灯火だ。
「火」の慣用句
火の車
(ひのくるま)
意味・教訓:生計のやりくりが非常に苦しい状態のたとえ。借金などで金策に窮しているさま。仏教で、罪人を地獄へ運ぶとされる火の燃えさかる車から。
例文:今月も支払いが重なり、家計は火の車だ。
火を見るよりも明らか
(ひをみるよりもあきらか)
意味・教訓:火のように、疑う余地がないほど明白であること。結果が分かりきっているさま。
例文:彼が犯人であることは、火を見るよりも明らかだ。
火に油を注ぐ
(ひにあぶらをそそぐ)
意味・教訓:燃え盛る火に油を注ぐとさらに燃え広がることから、勢いのあるものにさらに勢いをつけたり、事態をさらに悪化させたりすることのたとえ。
例文:二人の喧嘩に口出しするのは、火に油を注ぐようなものだ。
消火に追われる
(しょうかにおわれる)
意味・教訓:次々と起こる問題やトラブルの対応、後始末に忙殺されることのたとえ。
例文:クレーム対応で、毎日消火に追われている。
飛び火
(とびひ)
意味・教訓:火事の火の粉が飛んで他の場所に燃え移ることから、事件や災難の影響が、本来関係のないところにまで及ぶこと。
例文:彼の不祥事のせいで、会社全体に飛び火してしまった。
火がつく
(ひがつく)
意味・教訓:感情が高ぶること。情熱や意欲が燃え上がること。また、事件や騒動が始まること。導火線に火がつくイメージ。
例文:彼の発言がきっかけで、議論に火がついた。
火を消す
(ひをけす)
意味・教訓:燃えている火を消し止めること。転じて、問題や揉め事を解決すること、騒ぎを収めること。
例文:早急に事態の火を消さなければならない。
火の手が上がる
(ひのてがあがる)
意味・教訓:火事が発生すること。転じて、騒動や戦闘などが始まること。炎が手のように見えることから。
例文:近所で火の手が上がった。
火事場泥棒
(かじばどろぼう)
意味・教訓:火事の混乱に乗じて盗みを働くこと。転じて、他人の不幸や混乱に乗じて、不正な利益を得ようとする卑劣な行為、またはその人。
例文:火事場泥棒のような行為は許せない。
尻に火がつく
(しりにひがつく)
意味・教訓:事態が差し迫って、落ち着いていられなくなること。急いで行動しなければならない状況になること。
例文:締め切りが近づき、尻に火がついた。
火花を散らす
(ひばなをちらす)
意味・教訓:激しく議論したり、競争したりするさま。
刀と刀が打ち合う時に火花が出ることから。
例文:彼らはライバル同士、常に火花を散らしている。
火ぶたを切る
(ひぶたをきる)
意味・教訓:戦いや競争、議論などを開始すること。
火縄銃の火皿の蓋(火蓋)を開けて、発射準備をすることから。
例文:選挙戦の火ぶたが切られた。
水火も辞さない
(すいかもじさない)
意味・教訓:水難や火難のような、どんな困難や危険も避けない覚悟があること。
目的のためにはどんな苦労もいとわない決意を示す。
例文:彼は、友のためなら水火も辞さない覚悟だ。
眼に火を燃やす
(めにひをもやす)
意味・教訓:激しい怒りや憎しみ、強い決意や意欲などを、目に力を込めて表すさま。
例文:彼は目に火を燃やして、必ず成功してみせると言った。
火が消えたよう
(ひがきえたよう)
意味・教訓:それまでにぎわっていた場所などが、急に静かになり、活気がなくなるさま。人気がなくなるさま。
例文:彼が去ってから、職場は火が消えたようだ。
火の粉を払う
(ひのこをはらう)
意味・教訓:自分に降りかかってくる災難や非難、迷惑などを追い払うこと。
面倒なことに関わらないようにすること。
例文:降りかかる火の粉を払うのに精一杯だ。
水火の争い
(すいかのあらそい)
意味・教訓:水と火のように、互いに性質が合わず、激しく対立し争うこと。相容れない間柄。
例文:両国は資源をめぐって、長年、水火の争いを繰り広げている。
火をつける
(ひをつける)
意味・教訓:物事に火をつけること。転じて、事件や騒動の原因を作ること。人の感情を煽り立てること。
例文:彼の不用意な発言が、論争に火をつけた。
火種
(ひだね)
意味・教訓:火を起こす元になるもの。転じて、争いや揉め事の原因となるもの。
例文:二人の間には、以前から対立の火種があった。
「火」の故事成語
火中の栗を拾う
(かちゅうのくりをひろう)
意味・教訓:自分の利益にならないのに、そそのかされて他人のために危険を冒すことのたとえ。
ラ・フォンテーヌの寓話で、猿におだてられた猫が、炉の中の焼栗を拾って火傷をした話から。
例文:彼は、火中の栗を拾うような真似はしないだろう。
心頭滅却すれば火もまた涼し
(しんとうめっきゃくすればひもまたすずし)
意味・教訓:心の持ち方次第で、どんな苦難も乗り越えられるということ。
雑念を払い無心の境地に至れば、火の中にいても熱さを感じなくなるという禅の教え。
快川紹喜の言葉として有名。
例文:彼はどんな困難にも動じない。心頭滅却すれば火もまた涼し、という境地なのだろう。
燃眉の急
(ねんびのきゅう)
意味・教訓:眉毛が燃えるほど火が顔に迫っていることから、非常に危険が差し迫っていること、緊急を要する事態のたとえ。
例文:資金繰りの悪化は、まさに燃眉の急を要する問題だ。
「火」の四字熟語
電光石火 (でんこうせっか)
意味・教訓:稲妻の光や、火打石が発する火のように、きわめて短い時間のこと。
また、行動などが非常に素早いことのたとえ。
例文:彼は電光石火の速さで問題を解決した。
炉火純青 (ろかじゅんせい)
意味・教訓:炉の火が純粋な青色になるように、学問や技術、技芸などが最高の域に達し人格的にも円熟すること。
例文:彼の剣術は、まさに炉火純青の域に達している。
燎原の火(りょうげんのひ)
意味・教訓:広い野原を焼き尽くす火のように、防ぎ止めることができないほどの激しい勢いのたとえ。「燎原之火」とも書く。
例文:彼の改革への情熱は、燎原の火の如く、誰も止めることはできなかった。
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