誰の人生にも訪れる「ピンチ」や「危機」。
絶体絶命の危機、困難な状況、進むも退くもできない窮地…そうした状況を表す言葉が、私たちの日本語には驚くほどたくさん存在します。
この記事では、「ピンチ」や「危機」にまつわることわざ、慣用句、故事成語、四字熟語を集め、その意味や背景を解説します。
「ピンチ」「危機」を表す言葉 一覧
ことわざ
- 苦しい時の神頼み:
普段は神仏を信じない人でも、苦しい状況や困った事態に陥ると、神や仏に助けを求めて祈ること。 - 一寸先は闇:
少し先のことも、何が起こるか全く予測できないということ。人生の不安定さや危うさのたとえ。 - 溺れる者は藁をも掴む(おぼれるものはわらをもつかむ):
非常に困窮した状況では、頼りにならないものでも、必死に頼ろうとすることのたとえ。 - 風前の灯火(ふうぜんのともしび):
危険がすぐ目の前に迫っていて、今にも滅びそうな状態のたとえ。 - 火中の栗を拾う(かちゅうのくりをひろう):
自分の利益にならないのに、他人のために危険を冒すことのたとえ。 - 窮すれば通ず(きゅうすればつうず):
行き詰まってどうしようもなくなると、かえって思いがけない活路が開けるものだということ。 - 後の祭り:
時期を逃してしまい、手遅れで役に立たないことのたとえ。祭りが終わった翌日に山車(だし)などが来ても意味がないことから。 - 背水の陣:
一歩も退くことのできない絶体絶命の状況で、決死の覚悟で事に当たることのたとえ。(故事成語でもある) - 窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ):
追いつめられた弱い者が、必死になって強い者に反撃することのたとえ。
慣用句
- 首の皮一枚で繋がる:
もう少しで完全にだめになるところを、ぎりぎりの状態やわずかな差で持ちこたえているさま。 - 板挟みになる:
対立する二つのものの間に立って、どちらにもつかれず、苦しい立場に置かれること。 - 崖っぷちに立たされる:
これ以上後がない、非常に危険で切羽詰まった状況に追い込まれること。 - 土壇場に追い込まれる(どたんばにおいこまれる):
物事の決着がつく、ぎりぎりの瀬戸際に追い詰められること。 - 進退窮まる(しんたいきわまる):
進むことも退くこともできず、どうしようもない困難な状況に陥ること。 - 万事休す(ばんじきゅうす):
もはや施すすべがなく、すべてが終わってしまった、どうしようもないという状態。 - 八方塞がり(はっぽうふさがり):
どの方面にも障害があって、身動きが取れず、どうしようもない状態。 - 抜き差しならない:
身動きがとれない、どうにも切り抜けられない、のっぴきならない状況。 - 袋の鼠(ふくろのねずみ):
逃げ道が完全に塞がれて、どうすることもできない状態のたとえ。
四字熟語
- 絶体絶命(ぜったいぜつめい):
体も命も絶たれるような、どうにもならない危険な状況。 - 四面楚歌(しめんそか):
周りをすべて敵に囲まれて、味方が一人もなく孤立した状態。(故事成語でもある) - 危急存亡(ききゅうそんぼう):
危険が迫り、生き残るか滅びるかの瀬戸際であること。 - 孤立無援(こりつむえん):
仲間もなく、誰からの助けもない、ただ一人でいる状態。 - 進退両難(しんたいりょうなん):
進むことも退くことも困難で、どうにも身動きが取れない状態。 - 内憂外患(ないゆうがいかん):
国内(内部)に心配事があり、国外(外部)からもわざわいが迫ってくること。国や組織などの困難な状況。
故事成語
- 背水の陣(はいすいのじん):川を背にして陣を敷き、退却できない状況で兵士に決死の覚悟をさせたという、中国の韓信の故事から。決死の覚悟で臨むこと。(ことわざでもある)
- 四面楚歌(しめんそか):楚の項羽が漢の劉邦に敗れ、垓下(がいか)で包囲された際、四方の漢軍から故郷である楚の歌が聞こえてきて、楚の民まで漢に降ったのかと嘆いた故事から。敵に囲まれ孤立すること。(四字熟語でもある)
- 危急存亡の秋(ききゅうそんぼうのとき):国などが滅びるか、生き残るかの非常に重大な局面。諸葛亮(しょかつりょう)の『出師の表(すいしのひょう)』の一節から。
- 臥薪嘗胆(がしんしょうたん):薪(たきぎ)の上に寝て、苦い肝(きも)をなめること。目的を達成するために、長い間苦労や苦痛に耐えることのたとえ。
春秋時代の呉王夫差(ふさ)と越王勾践(こうせん)の復讐の故事から。ピンチをバネにする決意を表す。 - 呉越同舟(ごえつどうしゅう):仲の悪い者同士が、同じ場所や境遇にいること。
また、共通の困難や利害のために協力すること。春秋時代の呉と越は敵対していたが、同じ舟に乗り合わせ嵐に遭えば協力して助かるだろう、という『孫子』の記述から。ピンチが協力のきっかけとなる状況。
まとめ – ピンチを語る言葉が示すもの
この記事では、「ピンチ」や「危機」に関係する様々な表現を見てきました。
これほど多くの表現があるということは、人間が歴史を通じて多くの危機や困難に直面し、それを乗り越えたり、教訓として語り継いできた証と言えるでしょう。
「絶体絶命」「四面楚歌」のような直接的な表現から、「窮すれば通ず」のように逆境の中に活路を見出す希望、「臥薪嘗胆」のように困難をバネにする強い意志まで、これらの言葉は状況を説明するだけでなく、先人たちの知恵や精神性も伝えています。
普段何気なく使う言葉にも、こうした深い背景や意味が込められていることを知ると、言葉への見方が少し変わるかもしれません。
そして、自身がピンチに陥ったとき、これらの言葉が状況を客観視したり、乗り越えるためのヒントを与えてくれるかもしれません。
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