古今東西、人の心を惹きつけてやまない「美しさ」。
特に美しい女性を形容する言葉は、詩的な表現から故事に由来するものまで、実に豊かに存在します。
この記事では、そんな「美人」にまつわることわざ、慣用句、故事成語、四字熟語を集め、それぞれの言葉が持つ意味や背景を探ります。
美人を表す「ことわざ」
- 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花
(たてばしゃくやく すわればぼたん あるくすがたは ゆりの はな):
美人の姿や振る舞いを、美しい花々にたとえて形容する言葉。芍薬、牡丹、百合はいずれも美しい花の代表。 - 美人は薄命(びじんははくめい):
美しい女性は、生まれつき病弱であったり、数奇な運命に翻弄されたりして、若くして亡くなることが多いという俗説。 - 秋波を送る(しゅうはをおくる):
美人が、相手に媚びるような流し目を送ること。色目を使うこと。
(元々は女性に限らないが、主に美人が行うさまとして使われる) - 小野小町も一度は老いる:
どんな絶世の美女も、いつかは年老いて容色が衰えるということのたとえ。
小野小町は平安時代の絶世の美女とされる歌人。
美人を表す「慣用句」
- 紅一点(こういってん):
多くの男性の中に、一人だけいる女性のこと。転じて、多くのものの中に一つだけ異彩を放つものが存在すること。(必ずしも美人を指すわけではないが、際立つ存在として使われることがある) - 絵に描いたよう:
非常に整っていて美しいさま。まるで絵画のように完璧な美しさを持つ人や物の形容。 - 目鼻立ちが整う:
顔のパーツ、特に目と鼻の形や配置がバランス良く、美しい顔つきであること。 - 涼しい目元:
知的で、すっきりとしていて魅力的な目元のさま。 - 柳眉(りゅうび):
柳の葉のように細く、長く美しい眉のこと。美人の眉の形容。 - 花も恥じらう:
あまりの美しさに、美しいはずの花でさえも恥ずかしくなって隠れてしまうほどであるということ。若い女性の美しさを称える言葉。
美人を表す「四字熟語」
- 絶世美人(ぜっせいびじん):
この世に二人といないほど、並外れて美しい女性。 - 容姿端麗(ようしたんれい):
顔かたちや姿が、整っていて美しいさま。 - 才色兼備(さいしょくけんび):
優れた才能と美しい容姿の両方を兼ね備えていること。主に女性に対して使う。 - 明眸皓歯(めいぼうこうし):
ぱっちりと澄んだ瞳と、白く美しい歯のこと。美人の形容。 - 沈魚落雁(ちんぎょらくがん):
あまりの美しさに、魚は水の底に沈み、雁は空から落ちてしまうほどであるということ。絶世の美女のたとえ。(故事成語でもある) - 羞花閉月(しゅうかへいげつ):
美しさに見とれて、花は恥じらい、月は隠れてしまうほどであるということ。絶世の美女のたとえ。(故事成語でもある) - 天香国色(てんこうこくしょく):
天から漂うような良い香りと、国中で一番の美しさを持つ花、つまり牡丹(ぼたん)のこと。転じて、絶世の美女を形容する言葉。 - 花顔柳腰(かがんりゅうよう):
花のように美しい顔と、柳のようにしなやかで細い腰のこと。美しい女性の姿の形容。
美人を表す「故事成語」
- 傾国(けいこく)・傾城(けいせい):
君主がその美貌に夢中になり、国や城を傾けて滅ぼしてしまうほどの絶世の美女のこと。中国の故事に由来。 - 沈魚落雁(ちんぎょらくがん):
春秋時代の越の美女、西施の美しさに見とれて魚が泳ぐのを忘れ、前漢の王昭君の美しさに雁が飛ぶのを忘れて落ちたという伝説から。
(四字熟語でもある) - 羞花閉月(しゅうかへいげつ):
唐代の美女、楊貴妃が花の前でため息をつくと花が恥じらうように閉じ、三国時代の美女、貂蝉が月を拝すると月が雲に隠れたという伝説から。
(四字熟語でもある)
まとめ – 美を語る言葉が映し出すもの
美しい女性を讃える言葉は、花や自然の美しさにたとえたり、歴史上の人物や伝説に由来したりと、実に多彩です。これらの言葉は、単に外見の美しさを描写するだけでなく、「立てば芍薬~」のように立ち居振る舞いの優雅さや、「才色兼備」のように内面の知性や才能まで含めて、その人の持つ魅力を多角的に捉えようとしています。
一方で、「美人は薄命」や「傾国」のように、美しさが必ずしも幸福に直結しない、むしろ危うさをもたらすという見方も存在します。
美に対する人々の憧れや価値観、そして時には戒めまでもが、これらの言葉には映し出されているのかもしれません。
言葉の背景を知ることで、日本語の表現の豊かさと、美という普遍的なテーマに対する文化的な眼差しを感じていただけたのではないでしょうか。
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