竜の髭を撫でる

慣用句
竜の髭を撫でる(りゅうのひげをなでる)

10文字の言葉」から始まる言葉
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「竜の髭を撫でる」の意味 – 極めて危険な行為のたとえ

「竜の髭を撫でる」とは、非常に危険なことをする、あるいは、怒らせると大変恐ろしい相手の機嫌を損ねるような危険を冒すことのたとえです。

伝説上の生き物である竜は、強大で恐ろしい存在とされています。
その竜の象徴ともいえる髭に触れる、ましてや撫でるなどという行為は、竜の怒りを買って命を落としかねない、極めて無謀で危険なことと見なされます。
そこから、非常にリスクの高い行為や、権力者など怒らせると怖い相手に逆らうような行動を指す表現として使われます。

「竜の髭を撫でる」の語源・由来 – 逆鱗の故事との関連

この慣用句に明確な出典はありませんが、中国の古典『韓非子』などに見られる竜の説話、特に「逆鱗(げきりん)」の故事と関連があると考えられます。

逆鱗とは、竜の喉の下にある触れると激怒する鱗のことです。
竜の「髭」も同様にその威厳の象徴とされ、それに触れることは逆鱗に触れるのと同じく、極めて危険な行為と見なされました。
このことから、非常に危険を冒すことのたとえとして使われるようになったのです。

「竜の髭を撫でる」の使用場面と例文 – 恐ろしい相手への危険な接触

主に、権力者や機嫌を損ねると非常に厄介な上司、あるいは一般的に怒りっぽい人など、刺激すると危険な相手に対して、不用意な言動や行動をとる状況を指して使われます。
その行為の無謀さや危険性を警告したり、あるいは客観的に描写したりする際に用いられます。

例文

  • 「社長の機嫌が悪い時に、あんな提案をするなんて、まるで竜の髭を撫でるようなものだ。」
  • 「彼の逆鱗に触れないように注意していたのに、うっかり失言してしまい、竜の髭を撫でる結果となった。」
  • 「あの気難しい評論家に真正面から反論するとは、君も竜の髭を撫でるような真似をするね。」
  • 「危険だと分かっていながら、どうしても真実を確かめたくて、竜の髭を撫でる覚悟で彼に問いただした。」
  • 「その交渉は、まさに竜の髭を撫でるような、緊迫した状況だった。」

「竜の髭を撫でる」の類義語 – 危険を冒す行為

非常に危険な行為や、危うい状況を示す言葉があります。

  • 虎の尾を踏む(とらのおをふむ):非常に危険なことをするたとえ。
  • 逆鱗に触れる(げきりんにふれる):目上の人や権力者を激しく怒らせること。
  • 危ない橋を渡る(あぶないはしをわたる):危険な手段を用いること。成功するかどうかわからない危険なことをすること。
  • 火中の栗を拾う(かちゅうのくりをひろう):自分の利益にならないのに、他人のために危険を冒すこと。(危険を冒す点で共通)
  • 薄氷を踏む(はくひょうをふむ):非常に危険な状況に臨むことのたとえ。

「竜の髭を撫でる」の対義語 – 危険を避ける姿勢

危険なことには近づかない、慎重な態度を示す言葉が対照的です。

  • 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):教養や徳のある人は、危険な場所や状況には自ら近づかないものだということ。
  • 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):余計なことに関わらなければ、災いを招くこともないということ。
  • 安全第一:何よりも安全を優先すること。
  • 安全策:危険を避け、安全を第一に考えた方法や手段。

「竜の髭を撫でる」の英語での類似表現

英語で、「危険を冒す」「虎の尾を踏む」といったニュアンスを表す表現です。

  • beard the lion in his den
    直訳:ライオンの巣穴でその髭をつかむ。
    意味:非常に危険な場所で、恐ろしい相手に大胆に立ち向かう、危険を承知で挑戦する。
  • play with fire
    意味:火遊びをする。転じて、非常に危険なことをする。
  • tempt fate / tempt providence
    意味:運命(神意)を試す。転じて、無謀なこと、非常に危険なことをする。
  • walk on thin ice
    意味:薄い氷の上を歩く。転じて、非常に危険な状況にある、危ない橋を渡る。

まとめ – 危険への無謀な挑戦を戒める言葉

「竜の髭を撫でる」は、触れてはならない存在に無遠慮に近づく、危険極まりない行為をたとえた表現です。

その背景には「逆鱗」にまつわる古典の教訓があり、権力者や気難しい相手への軽率な言動を戒める際にも使われます。

少し古風ながら、リスクの高い行動への警鐘として、今も意味を失っていない表現です。

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