鳶が鷹を産む

ことわざ
鳶が鷹を産む(とびがたかをうむ)

8文字の言葉と・ど」から始まる言葉
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「鳶が鷹を産む」の意味・教訓

「鳶が鷹を産む」は、平凡な親(鳶)から優秀な子(鷹)が生まれることを意味することわざです。
鳶はトンビのことで、比較的平凡な猛禽類とされる一方、鷹は勇猛で気高く、能力の高い猛禽類として古来より尊ばれてきました。

このことわざは、親の能力や社会的地位だけで子の将来が決まるわけではなく、親よりも格段に優れた才能や能力を持つ子が生まれることがあるという教えを含んでいます。
血筋や家柄ではなく、個人の資質や努力こそが重要だという考え方を示しています。

「鳶が鷹を産む」の語源

このことわざの語源は、自然界の観察に基づいていると考えられています。
鳶(トンビ)は鷹に比べて狩りの腕が劣るとされ、人々の間では「ただの鳶」として軽視される傾向がありました。一方、鷹は狩猟に優れ、昔から貴族や武士の鷹狩りに用いられる高貴な鳥とされてきました。

この両者の社会的価値における大きな差を比喩として用い、身分や家柄が低くても素晴らしい才能を持つ人物が現れる可能性を表現したのが、このことわざの始まりと考えられています。

「鳶が鷹を産む」が使われる場面と例文

このことわざは、平凡な環境や家庭から優秀な人物が輩出された場合や、親の期待を上回る活躍をする子どもについて話す場面で使われます。
特に、社会的地位や家柄が特別でなくても、卓越した才能や功績を残した人物について述べる際に用いられます。

例文

  • 彼の両親は普通の公務員だったが、彼は若くして大企業の社長になった。まさに鳶が鷹を産む典型的な例だ。
  • 田舎の農家に生まれながらも、彼女は国際的な科学者になった。鳶が鷹を産むという言葉がぴったりだ。
  • 平凡な家庭環境だったが、努力と才能で世界的なアスリートになった彼は、鳶が鷹を産むという言葉を体現している。
  • 両親は高校卒業だが、子どもは東大に合格した。鳶が鷹を産むとはこのことだ。

「鳶が鷹を産む」の類義語

  • 龍の落とし子(りゅうのおとしご):優れた人物の子孫という意味で、「鳶が鷹を産む」と逆に、優れた親から生まれる優秀な子を表す。ニュアンスが異なるが、親子の関係性を表現する点で関連している。
  • 石の上にも三年:どんなに辛くても忍耐強く努力し続ければ成果が出るという教え。「鳶が鷹を産む」が才能の出現を強調するのに対し、こちらは努力の大切さを説く。
  • 雉も鳴かずば撃たれまい(きじもなかずばうたれまい):目立たなければ災難に遭わずに済むという教え。「鳶が鷹を産む」が才能の発揮を肯定的に捉えるのに対し、こちらは目立つことのリスクを説く。

「鳶が鷹を産む」の対義語

  • 蛙の子は蛙:子は親に似るという意味で、「鳶が鷹を産む」とは正反対の考え方を示す。親の性質や能力が子に受け継がれるという遺伝的な側面を強調している。
  • 類は友を呼ぶ:似た者同士が集まるという意味。「鳶が鷹を産む」が異質な才能の出現を説くのに対し、こちらは同質性を重視する考え方。
  • 親の因果が子に報い(おやのいんががこにむくい):親の罪や不徳が子に影響するという考え。「鳶が鷹を産む」が子の独自性を強調するのに対し、こちらは親子の因果関係を重視する。

「鳶が鷹を産む」の英語での類似表現

  • An oak may spring from an acorn.
    意味:どんぐりから樫の大木が生じることがある。
    平凡な始まりから偉大なものが生まれるという点で「鳶が鷹を産む」に近い表現。
  • The apple may fall far from the tree.
    意味:リンゴは木から遠く離れて落ちることもある。
    英語の一般的な “The apple doesn’t fall far from the tree”(子は親に似る)の逆の表現で、「鳶が鷹を産む」の考え方に合致する。
  • A diamond in the rough.
    意味:磨かれていない原石のダイヤモンド。
    素晴らしい可能性を秘めているが、まだ発揮されていない才能を表す表現で、「鳶が鷹を産む」の状況を別の角度から表している。

「鳶が鷹を産む」に関する豆知識

実は鳶と鷹は分類学的には同じタカ科に属しています。
しかし、日本の伝統的な価値観では、鷹は高貴な狩猟鳥として尊ばれ、鳶は比較的平凡な猛禽類として扱われてきました。
このような文化的背景が、このことわざの成立に影響しています。

また、徳川家康の側近として知られる本多正信の家系に関して「鳶が鷹を産んだ」と評されたという逸話も残っています。

まとめ – 才能は血筋を超える

「鳶が鷹を産む」は、親の社会的地位や能力にかかわらず、子が卓越した才能を発揮することがあるという人間社会の真理を表したことわざです。このことわざは、家柄や血筋よりも個人の資質や努力を重視する考え方を示しています。現代社会においても、出自に関わらず自らの才能と努力で道を切り開いていく人々の姿に、このことわざの普遍的な価値を見ることができるでしょう。

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