眼光紙背に徹す

故事成語
眼光紙背に徹す(がんこうしはいにてっす)

11文字の言葉か・が」から始まる言葉
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「ただ文字を追うだけじゃなく、書かれたことの本当の意味まで読み取りたい」
「あの人の分析は、いつも物事の本質を突いている」

…そんな風に、深い読解力や洞察力に感心することはありませんか?

「眼光紙背に徹す」という故事成語は、まさにそのような鋭い理解力を表す言葉です。

この記事では、「眼光紙背に徹す」の意味や由来、使い方、そして関連する言葉などを分かりやすく解説していきます。

「眼光紙背に徹す」の意味・教訓

「眼光紙背に徹す(がんこうしはいにてっす)」とは
書物を読んで、文字や文章の表面的な意味だけを理解するのではなく、その奥に隠された筆者の真意や本質まで深く読み取ることを意味する故事成語です。

  • 眼光(がんこう):物事を鋭く見抜く、眼の光。洞察力。
  • 紙背(しはい):紙の裏。文字が書かれていない部分、つまり、字句の背後にある深い意味。
  • 徹す(てっす):貫き通る。奥深くまで達する。

つまり、「鋭い眼力(洞察力)が、紙の裏(書かれていない深い意味)まで貫き通る」という意味になります。

転じて、書物に限らず、物事の表面的な事柄だけでなく、その裏に隠された本質や真相まで鋭く見抜く力、すなわち深い洞察力を持っていることも指します。

この言葉は、表面的な理解にとどまらず、物事の本質を深く探求することの重要性を示唆しています。

「眼光紙背に徹す」の語源 – 故事に由来

この故事成語は、中国の南北朝時代、りょうの皇帝であった簡文帝(かんぶんてい)(蕭綱/しょうこう)に関する故事に由来します。

簡文帝は非常に聡明で、文学を深く愛好した人物でした。彼が読書をする際、その鋭い眼光はまるで紙の裏側まで突き通してしまうかのようであった、と伝えられています。つまり、書かれた文字だけでなく、その背後にある筆者の意図や深い意味までも見抜くほどの、優れた読解力と洞察力を持っていた、ということです。

このエピソードから、「眼光紙背に徹す」という言葉が生まれました。

「眼光紙背に徹す」が使われる場面と例文

この言葉は、以下のような場面で、深い読解力や洞察力を持つ人や、その能力自体を称賛する際に使われます。

  • 文学作品や難解な書物を深く読み解く時。
  • 歴史的な文書や記録から、隠された事実や背景を読み取る時。
  • 人の言葉や文章の、表面的な意味だけでなく真意を理解する時。
  • 複雑な状況や問題の本質を鋭く見抜く時。

やや硬い表現なので、日常会話で頻繁に使われるというよりは、書き言葉や改まった場面で使われることが多いでしょう。

例文

  • 「彼の書評は、まさに眼光紙背に徹すもので、作品の新たな魅力を教えてくれる。」
  • 「この古典文学を理解するには、眼光紙背に徹す読解力が求められる。」
  • 「彼女は眼光紙背に徹す洞察力で、会議での発言の裏にある各々の思惑を見抜いていた。」
  • 「捜査官は、容疑者の些細な言動から、眼光紙背に徹して事件の真相に迫った。」

「眼光紙背に徹す」の類義語

深い理解力や洞察力を示す言葉は他にもあります。

  • 読書百遍意自ずから通ず(どくしょひゃっぺんいおのずからつうず):
    意味:どんなに難しい書物でも、繰り返し百度読めば、その意味は自然と理解できるようになるということ。
    ニュアンス:繰り返しによる理解の深化を説く。一瞬で見抜く「眼光紙背に徹す」とはアプローチが異なる。
  • 一を聞いて十を知る
    意味:物事の一部を聞いただけで、その全体を理解できるほど聡明であること。
    ニュアンス:理解の速さ、察しの良さを強調する。
  • 慧眼(けいがん):
    意味:物事の本質を鋭く見抜く、すぐれた眼識(がんしき)。
    ニュアンス:「眼光紙背に徹す」能力そのもの、特にその鋭い「眼」を指す言葉。
  • 洞察力(どうさつりょく):
    意味:物事の本質や、目に見えない部分を見抜く力。
    ニュアンス:「眼光紙背に徹す」能力と同義的に使われる。

「眼光紙背に徹す」の対義語

表面的な理解しかできないことや、本質を見抜けない様子を表す言葉です。

  • 浅薄(せんぱく):
    意味:考えや知識などが浅く、薄っぺらいこと。
    ※ 深く本質まで理解する「眼光紙背に徹す」とは逆の状態。
  • 皮相の見(ひそうのけん):
    意味:物事のうわべだけを見た、浅はかな考えや意見。
    ※ 表面的な理解にとどまっていること。
  • 木を見て森を見ず
    意味:細かい部分にこだわりすぎて、全体像を把握できないこと。
    ※ 本質や全体を見通す「眼光紙背に徹す」とは対照的な視野の狭さ。

「眼光紙背に徹す」の英語での類似表現

「眼光が紙の裏まで通る」という直接的な比喩はありませんが、意味合いの近い表現はあります。

  • read between the lines
    意味:行間を読む。言葉や文章に直接書かれていない、隠された意味や真意を読み取ること。非常に近い表現。
  • penetrating insight
    意味:鋭い洞察力。物事の本質を見抜く力。「眼光」の鋭さに相当する。
  • grasp the underlying meaning
    意味:根底にある意味を把握する。表面的な意味の奥にある本質を理解すること。

まとめ – 「眼光紙背に徹す」力で本質を見抜く

「眼光紙背に徹す」は、書物や物事の表面的な意味だけでなく、その奥深くにある本質や真意まで見抜く、鋭い読解力や洞察力を称える故事成語です。故事に由来する、格調高い響きを持っていますね。

情報が溢れる現代社会において、うわべだけの情報に惑わされず、物事の本質を見抜く力はますます重要になっています。この言葉が示すように、深く考え、行間を読み、隠された意味を探求する姿勢を大切にしたいものです。

ただし、やや硬い表現なので、日常会話で使う際は少し注意が必要かもしれません。

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