山高きが故に貴からず

ことわざ
山高きが故に貴からず(やまたかきが ゆえにたっとからず)

16文字の言葉」から始まる言葉
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立派な肩書きや、きらびやかな外見。私たちはつい、そうしたものに目を奪われがちです。
しかし、本当に大切なのは見た目だけでしょうか?

「山高きが故に貴からず」の意味・教訓

「山高きが故に貴からず(やま たかきが ゆえに たっとからず)」とは、外見や肩書きなどが立派だからといって、それだけで価値があるとは限らない、という意味のことわざです。

山がどんなに高くそびえていても、それ自体が価値の本質ではない、と説いています。
この言葉は、本来「山高きが故に貴からず、樹有るを以て貴しとす(き あるを もって たっとしとす)」と続きます。
つまり、山に人を豊かにする樹木が生い茂ってこそ、その山には真の価値があるのだ、という意味です。

ここから転じて、人間も外面や地位だけでなく、内面に伴う実質的な価値(知識、人徳、能力など)が伴ってこそ尊いのだ、という教訓を示しています。
見た目や形式にとらわれず、本質を見極めることの重要性を教えてくれる言葉です。

「山高きが故に貴からず」の語源

このことわざの出典は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて成立したとされる『実語教じつごきょう』という子供向けの教訓書です。

『実語教』は、寺子屋などで広く用いられ、人としての基本的な道徳や知識を教えていました。
その中の一節
「山高故不貴 以有樹為貴(やま たかきが ゆえに たっとからず、き あるを もって たっとしとす)」が、このことわざの元になっています。
外見の立派さ(山の高さ)よりも、実質的な価値(樹木)が重要であるという教えは、当時から重視されていたことがうかがえます。

「山高きが故に貴からず」が使われる場面と例文

人や物事の価値を判断する際に、外見や肩書き、評判といった表面的な情報に惑わされず、その実質や中身を見極めるべきだと諭す場面で使われます。
また、見かけは立派でも中身が伴わない状況を評する際にも用いられます。

例文

  • 「会社の規模が大きいからといって、必ずしも良い会社とは限らない。「山高きが故に貴からず」だ。」
  • 「どんなに有名な大学を出ていても、実力がなければ意味がない。「山高きが故に貴からず、樹有るを以て貴しとす」だよ。」
  • 「見た目は豪華だけど、使い勝手が悪い商品だった。まさに「山高きが故に貴からず」だね。」

「山高きが故に貴からず」の類義語・言い換え表現

「山高きが故に貴からず」と同様に、外見と中身の関係性や、本質の重要性を示す言葉があります。

  • 人は見かけによらぬもの:外見だけで人を判断してはいけないという戒め。良い意味でも悪い意味でも使う。
  • 玉磨かざれば光なし:優れた素質も、努力し修養しなければ立派にならないこと。潜在的な価値とそれを引き出す努力の重要性。
  • 看板に偽りあり:広告や評判と実際の内容が違うこと。特に悪い意味で使うことが多い。
  • 見かけ倒し:外見は立派だが、実際の内容や実力は劣っていること。

これらの言葉は、「山高きが故に貴からず」が持つ「外見だけでは価値は決まらない、中身こそが重要」という教訓と共通する側面を持っています。

「山高きが故に貴からず」の対義語

「山高きが故に貴からず」と直接的に対になることわざは明確にはありませんが、外見と中身が一致している、あるいは外見通りの価値がある、といった意味合いを持つ言葉が対照的な考え方として挙げられます。

  • 名は体を表す:名前はそのものの実体や性質をよく示しているものだ、という意味。
    ※「山高きが故に貴からず」が見た目と中身の不一致の可能性を指摘するのに対し、こちらは一致する傾向があることを示しますが、常に成り立つわけではありません。文脈によっては対照的に使われます。
  • 看板に偽りなし:広告や評判通りの優れた内容であること。
  • 名実一体(めいじついったい):名声と実質が一致していること。

これらの言葉は、外見や評判と実質が伴っている状態を表し、「山高きが故に貴からず」が戒める「見かけ倒し」とは逆の状況を示します。

「山高きが故に貴からず」の英語での類似表現

英語にも、見た目だけで判断してはいけない、という趣旨のことわざや表現があります。

  • Don’t judge a book by its cover.
    意味:本を表紙で判断するな。
    ※外見で物事や人を判断してはいけない、という意味で、最も近い表現の一つです。
  • All that glitters is not gold.
    意味:光るものすべてが金とは限らない。
    ※見た目が良くても、必ずしも価値があるわけではない、という意味合いです。
  • Appearances can be deceptive (or deceiving).
    意味:外見は当てにならない(人を欺くことがある)。

これらの表現は、「山高きが故に貴からず」が持つ、外見に惑わされず本質を見ることの重要性というメッセージを伝えます。

まとめ – 「山高きが故に貴からず」から学ぶ本質を見抜く目

「山高きが故に貴からず」は、『実語教』を出典とし、「山は高いだけでは貴くなく、樹木があってこそ価値がある」ことから、外見や肩書きではなく、実質的な中身こそが重要であると教えてくれることわざです。

情報が溢れ、見た目の印象に左右されやすい現代社会において、このことわざは、人や物事の本質を見抜く冷静な視点を持つことの大切さを改めて示唆してくれます。
肩書きや評判に惑わされず、その内にある真の価値を見極めるよう心がけたいものです。

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