有終の美を飾る

慣用句
有終の美を飾る(ゆうしゅうのびをかざる)

11文字の言葉」から始まる言葉
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何事においても、「終わり方」はとても大切ですよね。スポーツ選手の感動的な引退試合、長年取り組んだプロジェクトの成功、あるいは人生の最期。私たちは、物事の締めくくりが立派であることに、特別な感慨を覚えます。

「有終(ゆうしゅう)の美を飾る」という言葉は、まさにそのような素晴らしい「終わり」を表現する慣用句です。
今回は、この言葉が持つ意味や由来、そしてどのような場面で使われるのかを詳しく見ていきましょう。

「有終の美を飾る」の意味・教訓

「有終の美を飾る」とは、物事を最後までやり遂げ、立派な成果を上げて締めくくることを意味します。

単に物事を終わらせるだけでなく、その終わり方が素晴らしい結果や内容を伴っている状態を指します。「有終」とは「終わりを全うすること」、「美」は文字通り「美しさ」や「立派さ」を表します。つまり、始めたことを最後まで続け、しかも見事な形で完結させる、という意味合いが込められています。

この言葉は、最後まで努力を続け、良い結果で締めくくることの価値や素晴らしさを称える際に使われます。

「有終の美を飾る」の語源 – 中国古典からの教え

この言葉の語源は、中国最古の詩集である『詩経しきょう』にある一節に由来すると言われています。

その一節とは、「始め有らざるし、く終わり有るすくなし」というものです。
これは、「物事を始める人は多いけれども、それを最後までやり遂げる人は少ない」という意味です。

この教えから、物事を最後まで成し遂げることの難しさと尊さが認識され、「終わりを全うすること(有終)」を「美しく飾る」ことの価値が強調されるようになり、「有終の美を飾る」という慣用句が生まれたと考えられています。

「有終の美を飾る」が使われる場面と例文

この慣用句は、肯定的な評価として、様々な物事の「終わり」や「締めくくり」の場面で広く使われます。

  • 長年活躍したスポーツ選手が、引退試合で素晴らしいパフォーマンスを見せた時
  • 困難なプロジェクトを成功裏に完了させた時
  • 学生が学業を優秀な成績で終え、卒業する時
  • 人生を振り返り、悔いなく立派な生涯を終えたと評される時

例文

  • 「彼は現役最後の試合で見事なゴールを決め、有終の美を飾った。」
  • 「数々の困難を乗り越え、このプロジェクトを成功させ、有終の美を飾ることができた。」
  • 「彼女は主席で卒業し、学生生活の有終の美を飾った。」
  • 「祖父は多くの人に慕われ、穏やかに人生の有終の美を飾った。」

「有終の美を飾る」の類義語・関連語

「有終の美を飾る」と似た意味を持つ言葉や、関連する表現を見てみましょう。

  • 掉尾を飾る(ちょうびをかざる):物事の最後を立派に締めくくること。「有終の美を飾る」とほぼ同じ意味で使われます。
    「掉尾」は魚の尾がピンと跳ね上がる様子から、最後が勢いよく立派なことを指します。
  • 画竜点睛(がりょうてんせい):物事を完成させるための、最後の最も重要な仕上げのこと。「有終の美を飾る」が全体の締めくくりを指すのに対し、こちらは最後の肝心な一点を指すニュアンスがあります。
  • 締めくくり:物事の終わり。結び。単に終わることを指し、「有終の美」のような立派さのニュアンスは含まない場合もあります。
  • 完遂(かんすい):最後までやりとげること。
  • 成就(じょうじゅ):物事を成し遂げること。願いがかなうこと。
  • 集大成(しゅうたいせい):多くのものを集めて、一つのまとまったものにすること。これまでの努力や成果の最終的な形。
  • フィナーレ:音楽や演劇などの終局、大詰め。物事の最後の盛り上がり。

「有終の美を飾る」の対義語

反対の意味を持つ言葉としては、以下のようなものが考えられます。

  • 竜頭蛇尾(りゅうとうだび):初めは竜の頭のように勢いが盛んだが、終わりは蛇の尾のように振るわないこと。尻すぼみに終わること。
  • 尻すぼみ(しりすぼみ):物事が終わりの方になるにつれて、次第に勢いがなくなったり、規模が小さくなったりすること。
  • 中途半端(ちゅうとはんぱ):物事を最後までやり遂げずに、途中でやめてしまうこと。どっちつかずの状態。
  • 画竜点睛を欠く(がりょうてんせいをかく):最後の肝心な仕上げが欠けているために、全体として不完全になってしまうこと。
  • 挫折(ざせつ):目的や計画が途中でくじけ、失敗すること。

これらの言葉は、「有終の美を飾る」が示す「最後まで立派にやり遂げる」こととは対照的な、残念な終わり方を表します。

「有終の美を飾る」の英語での類似表現

英語で「有終の美を飾る」のニュアンスに近い表現を探してみましょう。良い形で締めくくることを表す言い回しはいくつかあります。

  • To end on a high note.
    • 意味:「高い音符で終わる」から転じて、成功裏に、あるいは盛り上がった良い雰囲気で終わる、締めくくる。
  • To finish with a flourish.
    • 意味:華々しく、印象的に終える。見事に締めくくる。
  • To go out with a bang.
    • 意味:(バンという音と共に去るように)派手に、華々しく終わる、引退する。
  • To crown one’s career / efforts.
    • 意味:キャリアや努力に王冠をかぶせるように、最高の形で締めくくる、栄光のうちに終える。

これらの表現は、「有終の美を飾る」が持つ、素晴らしい形で物事を締めくくるというポジティブな意味合いを伝えています。

まとめ – 最後まで輝き続けることの大切さ

「有終の美を飾る」という言葉は、物事を最後まで諦めずに努力し、立派な成果をもって締めくくることの価値と素晴らしさを教えてくれます。

始めることは誰にでもできますが、それを最後まで続け、しかも良い形で終えることは、決して簡単なことではありません。しかし、だからこそ、有終の美を飾ることには大きな達成感があり、周囲からの賞賛も集まるのでしょう。

人生の様々な節目や目標達成において、この「有終の美を飾る」ことを目指す姿勢は、私たちを成長させ、より充実した結果をもたらしてくれるはずです。終わりを意識することは、現在をより良く生きることにも繋がるのではないでしょうか。

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