将を射んと欲すれば先ず馬を射よ

ことわざ 故事成語
将を射んと欲すれば先ず馬を射よ(しょうをいんとほっすればまずうまをいよ)
異形:人を射んとせば先ず馬を射よ

19文字の言葉し・じ」から始まる言葉
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大きな目標を達成したい時、真正面から挑むだけでなく、少し遠回りな方法が効果的なことがあります。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」ということわざは、まさにそうした戦略的な考え方を教えてくれる言葉です。

この言葉の意味や由来、そして現代でどのように使われているのかを、分かりやすく解説していきます。

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の意味と教訓

このことわざは、「大きな目的を達成するためには、直接その中心を狙うのではなく、まずその周辺にあるものや、達成の手段となるものを攻略するのが有効である」という意味を持ちます。

敵の大将を倒したいなら、まずその乗っている馬を射て無力化するのが近道である、という具体的なイメージに基づいています。
転じて、目標達成のためには、一見遠回りに思える手段を取ることが、かえって効果的な場合があるという教訓を示しています。

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の語源 – 杜甫の詩に由来

この言葉の由来は、中国・唐の時代の有名な詩人である杜甫とほが詠んだ「前出塞ぜんしゅつさい」という詩の一節にあります。

その詩の中には「射人先射馬、擒賊先擒王(人を射んとせば先ず馬を射よ、賊を擒えんとせば先ず王を擒えよ)」とあります。
これは、「敵の将兵を射ようとするなら、まずその乗っている馬を射るべきだ。賊を捕らえようとするなら、まずその首領を捕らえるべきだ」という意味です。

この部分が元になり、「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」ということわざが生まれました。

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」が使われる場面と例文

このことわざは、目標達成のための戦略や交渉術として、ビジネスシーンや人間関係など、様々な場面で使われます。
直接的なアプローチが難しい場合に、間接的な方法で状況を有利に進めようとするときに用いられることが多いでしょう。

例えば、影響力のある人物に直接意見を言うのが難しくても、まずその側近や信頼されている人に働きかける、といった状況が当てはまります。

例文

  • 「社長に直接企画を提案するのは難しい。将を射んと欲すれば先ず馬を射よと言うし、まずは部長に相談してみよう。」
  • 「あの気難しい取引先を攻略するには、担当者だけではなく、その上司にも根回ししておくのが、将を射んと欲すれば先ず馬を射よの策かもしれない。」
  • 「ライバル企業の中心人物を引き抜くのは困難だが、将を射んと欲すれば先ず馬を射よで、まずはキーマンとなる技術者をヘッドハントした。」

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の類義語

  • 外堀から埋める:目標達成のために、周辺の問題から解決していくこと。本丸に攻め入る前に、周囲の堀を埋めて防御を弱める戦術から。
  • 側面から攻める:直接的ではなく、別の角度や方法でアプローチすること。

これらの言葉は、直接的な手段ではなく間接的な方法を取る点で、「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」と似たニュアンスを持っています。

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の対義語

  • 単刀直入:遠回しな言い方や前置きなしに、すぐに本題に入ること。
    ※間接的なアプローチを取る「将を射んと欲すれば~」とは対照的。
  • 快刀乱麻を断つ(かいとうらんまをたつ):もつれた事柄を、非常に鮮やかな手際で解決すること。
    ※複雑な問題を根本から一気に解決する様子が、周辺から攻める戦略とは異なる。
  • 機先を制する(きせんをせいする):相手が何かをしようとする、その先手を打って行動し、相手の意図や行動を封じること。
    ※直接的に相手の動きを封じる点で、間接的なアプローチとは異なる。

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の英語での類似表現

  • To shoot the general, first shoot his horse.
    意味:将軍を射るには、まずその馬を射よ。
    ※日本語のことわざをそのまま英語にした表現ですが、意味合いは通じやすいでしょう。
  • Attack the shepherd and the sheep will scatter.
    意味:羊飼いを攻撃すれば、羊は散り散りになる。
    ※リーダーや中心人物を無力化すれば、その集団は弱体化するという点で、間接的な効果を狙う戦略として似ています。
  • Strike at the source.
    意味:源を打て。
    ※問題の根本原因や、力の源泉となっている部分を攻撃するという意味合いで、状況によっては近いニュアンスで使われることがあります。

まとめ – 「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」に学ぶ戦略的な視点

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」は、目標達成のためには、必ずしも直接的な方法だけが有効とは限らないことを教えてくれることわざです。

時には、周辺の状況を整えたり、間接的なアプローチを取ったりすることが、結果的に目的達成への近道となる場合があります。

困難な目標に直面したとき、この言葉を思い出し、多角的な視点から戦略を練ってみることで、新たな道が開けるかもしれません。

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