「戦々恐々」という四字熟語は、人が何かにひどく怯えている様子を表します。
聞くだけで少し緊張感が走るようなこの言葉について、その意味や由来、使い方を詳しく見ていきましょう。
「戦々恐々」の意味
「戦々恐々」とは、「非常に恐れて、びくびくしている様子」を意味します。
何か悪いことが起こるのではないか、あるいは危険が迫っているのではないかと、強い不安や恐怖を感じて落ち着かない状態を表します。
恐ろしさのあまり震え上がっているような、切迫した心境を示す言葉です。
「戦々恐々」の語源 – 古典に由来する表現
この言葉は、中国の古い詩集である『詩経』に由来します。
その中の一節に、「戦戦兢兢として、深淵に臨むが如く、薄氷を履むが如し」とあります。
「戦戦」も「兢兢(恐々)」も、恐れ慎む様子を表す言葉です。
この詩は、「まるで深い淵のすぐそばに立っているかのように、また、薄く張った氷の上を歩くかのように、恐れ慎重に行動する」という意味合いを持っています。
危険な状況に臨む際の、極度の緊張感や恐れが表現されており、これが「戦々恐々」の語源となりました。
「戦々恐々」が使われる場面と例文
「戦々恐々」は、人が強い恐怖や不安を感じている心理状態や態度を描写するのに使われます。
- 失敗や叱責への恐れ:重要な任務で失敗しないか、上司や親に厳しく叱られないかと心配している時。
- 悪い知らせや結果を待つ時:試験の合否発表、病気の検査結果、リストラの発表などを待つ間の不安な気持ち。
- 危険や脅威を感じる状況:不安定な社会情勢、会社の経営不振、身に危険が迫っていると感じる時。
- 権力者や怖い相手の前:威圧的な相手の前で、びくびくしている様子。
例文
- 「部長の機嫌を損ねないかと、部下たちは皆戦々恐々としている。」
- 「度重なるミスで、彼はいつ解雇されるかと戦々恐々の日々を送っていた。」
- 「敵軍の接近を知り、城内の兵士たちは戦々恐々としていた。」
「戦々恐々」の類義語
「戦々恐々」と似た、恐れや不安を表す言葉には以下のようなものがあります。
- おびえる:怖いものに対して不安を感じ、落ち着きをなくすこと。
- びくびく:絶えず何かを恐れて、落ち着かない様子。
- おどおど:恐れや不安から、挙動が落ち着かず、自信なさそうに見えるさま。
- 危惧(きぐ):良くないことが起こるのではないかと心配し、恐れること。
- 恐怖:おそろしくて、体が震えるような強い恐れ。
「戦々恐々」の対義語
「戦々恐々」とは反対に、恐れることなく、落ち着いていたり、大胆であったりする様子を表す言葉です。これまでに紹介した言葉も含まれます。
- 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく):ゆったりと落ち着き払っているさま。
- 泰然自若(たいぜんじじゃく):何があっても落ち着き払い、動じないさま。
- 平静沈着(へいせいちんちゃく):感情に動かされず、冷静で落ち着いているさま。
- 大胆不敵(だいたんふてき):度胸があり、全く物事を恐れないさま。
- 豪放磊落(ごうほうらいらく):度量が大きく、小さなことにこだわらないさま。恐れを知らないような堂々とした様子。
「戦々恐々」の英語での類似表現
英語で「戦々恐々」のニュアンスを伝えたい場合、恐怖や不安の度合いに応じて様々な表現が使えます。
- tremble with fear / shake with fear
意味:恐怖で震える。文字通り震えている様子。 - be in fear and trepidation
意味:恐れおののいている。強い不安と恐怖の中にいる状態。 - walk on eggshells
意味:(卵の殻の上を歩くように)びくびくしている、細心の注意を払っている。相手の機嫌を損ねないか恐れているような状況で使われることが多い。 - quaking in one’s boots / shaking in one’s shoes
意味:(靴の中で)びくびくして震えている。強い恐怖を感じている様子。 - scared stiff
意味:(恐怖で)体がこわばって動けない。
まとめ – 恐れと不安の心境
「戦々恐々」は、何かをひどく恐れ、びくびくとしている切迫した心境を表す四字熟語です。『詩経』に由来するこの言葉は、まるで薄氷を踏むかのような、強い不安と緊張感を伝えています。
日常生活ではあまり経験したくない状態ですが、文学作品やニュースなどで、登場人物や人々の不安な心理状態を表す際によく用いられます。この言葉を知ることで、表現の幅が広がるかもしれません。
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