虎の威を借る狐

ことわざ
虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)

10文字の言葉と・ど」から始まる言葉
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「虎の威を借る狐」の意味・語源・由来

意味

虎の威を借る狐とは、自分の力ではなく、他人の権力や権威を笠に着て、威張る人のことのたとえです。
自分には実力がないのに、有力者の力を背景にして、いばり散らす小人物を指します。

狐が虎の威を借りて、他の動物たちを恐れさせた、という故事に由来しています。
このことわざは、他人の力を利用して威張る人を批判する際に使われます。

語源・由来:

「虎の威を借る狐」は、中国の古典『戦国策』の楚策(そさく)にある故事に由来します。

【故事の内容】

ある時、虎が狐を捕まえました。 狐は虎に、「私は天帝から百獣の王に任命された。私を食べると、天帝の命令に背くことになるぞ」と言いました。
虎が信じないので、狐は虎を連れて森の中を歩きました。 すると、他の動物たちは、狐の後ろにいる虎を見て恐れ、逃げ出しました。 虎は、狐が百獣の王であると信じ込み、狐を解放しました。

この話は、狐が虎の威を借りて、他の動物たちを騙した、ということを表しています。
ここから、「虎の威を借る狐」ということわざが生まれました。

「虎の威を借る狐」の使い方(例文)

  • 彼は、社長の息子という立場を利用して、威張り散らしている。まさに、虎の威を借る狐だ。
  • 彼女は、有名な政治家とのコネを自慢しているが、虎の威を借る狐に見える。
  • 虎の威を借る狐のような真似はやめるべきだ。
  • 実力もないのに、親の権威を笠に着て威張るのは虎の威を借る狐だ。
  • 「虎の威を借る狐」にならないように、自分自身の力を磨くことが大切だ。

注意! 間違った使い方

以下のような使い方は不適切です。

  • 自分自身が努力して成果を出した人に、「虎の威を借る狐」と言う。
    (他人の力を借りていないので不適切)
  • 正当な権限を持っている人が、その権限を行使する際に、「虎の威を借る狐」と言う。
    (正当な権限の行使なので不適切)

「虎の威を借る狐」の文学作品などの用例

「虎の威を借る狐」という言葉そのものが使われることもありますし、このことわざが表す状況は、多くの文学作品で描かれています。

例えば、権力者の庇護を受けて威張る人や、他人の功績を自分のもののように見せかける人などは、「虎の威を借る狐」の典型的な例と言えるでしょう。 イソップ寓話の「王様を欲しがった蛙たち」も似た内容の物語です。

「虎の威を借る狐」が使われている文学作品の例を紹介します。

中国の古典での使用例

  • 『戦国策』(中国・戦国時代の故事)
    「虎の威を借る狐」の元となった話。

日本での使用例

  • 夏目漱石『坊っちゃん』
    赤シャツという登場人物が、校長(狸)に取り入って権力を利用し、他の教師を抑え込む様子は「虎の威を借る狐」の典型的な例といえる。
  • 太宰治『斜陽』
    戦後没落した貴族社会の中で、他人の権威を利用して自分を大きく見せる者たちが登場し、「虎の威を借る狐」に通じる描写が見られる。
  • 芥川龍之介『藪の中』
    直接の表現はないが、登場人物たちがそれぞれの立場を利用し、虚偽を語る場面は「虎の威を借る狐」の心理に近いものがある。
  • 井原西鶴『好色一代男』
    権力者の側近や取り巻きが、その権力を利用して威張る様子が描かれており、「虎の威を借る狐」のような人物が登場する。
  • ドラえもん
    スネ夫はジャイアンの力を借りて、のび太や他の友達に威張ることが多い。
    自分一人では強く出られないが、ジャイアンのそばにいることで権力を持っているように振る舞う。
    しかし、ジャイアンの機嫌を損ねると自分も怒られたり、時には裏切られることもある。

海外文学での類似表現

  • シェイクスピア『マクベス』
    マクベス夫人が夫を操り、自らの野心を果たそうとする。
  • ジョージ・オーウェル『動物農場』
    豚(ナポレオン)が権力を利用し、他の動物を支配する。
  • ニコロ・マキャヴェッリ『君主論』
    権力者の側近が王の名を使って影響力を行使する場面がある。

「虎の威を借る狐」は、他人の権力や立場を利用して威張る人を表す故事成語ですが、世界の文学にも似た構図がたくさんあります。

「虎の威を借る狐」の類義語

  • 笠に着る(かさにきる): 権力のある人を頼んで、威張ること。
  • 権威を笠に着る(けんいをかさにきる): 権力のある人の威光を背景にして、自分を大きく見せようとすること。
  • 人の褌で相撲を取る(ひとのふんどしですもうをとる: 他人のものを利用して、自分の利益を得ること。

「虎の威を借る狐」の対義語

このことわざに明確な対義語はありません。
「実力があること」や、「自分の力で成果を出すこと」を表す言葉が、対照的な意味合いを持つと言えるでしょう。

  • 実力: 自分自身の力。
  • 自力: 自分の力。
  • 独立独歩(どくりつどっぽ): 他人に頼らず、自分の力で道を歩むこと。

使用上の注意点

「虎の威を借る狐」は、他人を批判する際に使われることが多い言葉です。
使う相手や状況には注意が必要です。 特に、目上の人に対して使うのは失礼にあたる可能性があります。

「虎の威を借る狐」の英語表現

borrow the authority of another

他人の権威を借りる

例文:
He is just a small man, but he is borrowing the authority of his boss.
(彼は小物だが、上司の威を借りている[虎の威を借る狐だ])

bask in someone’s reflected glory

人の反射した栄光を浴びる(直訳)
人の威光を借りて、利益を得たり、威張ったりする

ride on someone’s coattails

人のコートの裾に乗る、人の威光で利益を得る。

まとめ

「虎の威を借る狐」は、自分の力ではなく、他人の権力や権威を笠に着て、威張る人のことのたとえです。
中国の古典『戦国策』にある故事に由来し、他人の力を利用して威張る人を批判する際に使われます。
この言葉を胸に、他人の力を当てにするのではなく、自分自身の力を磨くことの大切さを心に留めておきたいものです。

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