「情けは人の為ならず」の意味・語源・由来
意味
「情けは人の為ならず」とは、
人に親切にすることは、巡り巡って自分に良い報いとなって返ってくる、という意味のことわざです。
よくある間違いですが、「情けは人の為ならず」とは、人に情けをかけることは、その人のためにならないという意味ではありません。
「為ならず」は、「~のためにならない」という否定の意味ではなく、「~のためである」という意味の古い言い回しです。
現代語では誤解されやすい表現なので、注意が必要です。
人にかけた情け(親切にしたこと)は、いずれは良い報いとなって自分に返ってくるのだから、人には親切に接するべきである。
という教えです。
語源・由来
「情けは人の為ならず」の語源は、明確には特定されていません。
しかし、古くから日本に伝わることわざであり、仏教の因果応報の考え方とも関連があると言われています。
因果応報とは、良い行いをすれば良い結果が、悪い行いをすれば悪い結果が返ってくるという考え方です。
人に親切にすれば、それが良い結果として自分に返ってくるという教えは、この因果応報の考え方と共通しています。
「情けは人の為ならず」の使い方(例文)
- 「情けは人の為ならず」と言うから、困っている人がいたら積極的に助けるようにしている。
- 彼はいつも「情けは人の為ならず」を座右の銘として、ボランティア活動に励んでいる。
- 先輩に親切にしてもらったので、「情けは人の為ならず」の言葉を実感した。
- 彼女は、「情けは人の為ならず」と信じて、人との縁を大切にしている。
注意! 間違った使い方
- 「情けは人の為ならず」だから、あの人には厳しく接した方がいい。(誤用)
- 困っている人を助けるのは「情けは人の為ならず」になるから、やめておこう。(誤用)
「情けは人の為ならず」を、「人に情けをかけることは、その人のためにならない」と解釈してしまうのは間違いです。
本来は、「人に親切にすれば、自分にも良いことが返ってくる」という意味なので注意が必要です。
「情けは人の為ならず」の文学作品などの用例
直接的な用例は見当たりませんでしたが、「情けは人の為ならず」の考え方に通じる表現は多くの文学作品に見られます。
例えば、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』では、主人公のカンダタが過去に蜘蛛を助けたことが、彼が地獄から救われるきっかけとなります。
これは、「情けは人の為ならず」の考え方を表していると言えるでしょう。
「情けは人の為ならず」の類義語
- 陰徳あれば陽報あり(いんとくあればようほうあり):人知れず良い行いをすれば、必ず良い報いがあること。
- 善因善果(ぜんいんぜんか):良い行いをすれば、良い結果がもたらされること。
- 自業自得(じごうじとく): 自分の行いの報いは、自分自身が受けること。(良い意味でも悪い意味でも使われる)
「情けは人の為ならず」の対義語
- 恩を仇で返す(おんをあだでかえす):受けた恩に対して、報いるどころか害を与えること。
- 飼い犬に手を噛まれる(かいぬにてをかまれる): 日ごろから可愛がっていたものから、裏切られる。害を加えられることのたとえ。
使用上の注意点
「情けは人の為ならず」は、人に親切にすることの重要性を説くことわざですが、「見返りを期待して親切にする」という意味ではありません。
あくまでも、純粋な気持ちで人に親切にすることが大切です。
「情けは人の為ならず」の英語表現
What goes around comes around.
良いことも悪いことも、巡り巡って自分に返ってくる。
例文:
Be kind to others. What goes around comes around.
(人に親切にしなさい。情けは人の為ならず。)
Kindness always pays off in the end.
親切は、最後には必ず報われる。
例文:
You should always help those in need, kindness always pays off in the end.
(困っている人は助けるべき。親切は必ず報われる。)
One good turn deserves another.
良い行いには良い報いがある。
例文:
I helped him move, because one good turn deserves another.
(私は彼が引っ越すのを手伝った。情けは人の為ならず、だからね。)
まとめ
「情けは人の為ならず」は、人に親切にすることは、巡り巡って自分に良い報いとなって返ってくるという意味のことわざです。
なお「人に情けをかけることは、その人のためにならない」という意味ではないので、注意しましょう。
この言葉を胸に、日頃から人に親切にすることを心がけたいものです。
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