楽あれば苦あり、苦あれば楽あり

ことわざ
楽あれば苦あり、苦あれば楽あり(らくあればくあり、くあればらくあり)
異形:楽あれば苦あり/苦あれば楽あり(個別に使用する場合もある)

17文字の言葉」から始まる言葉
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意味

「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」とは、楽しいことの後には苦しいことがあり、苦しいことの後には楽しいことがあるという意味のことわざです。
人生は良いことばかりでも悪いことばかりでもなく、喜びと苦しみが交互にやってくる、人生の浮き沈みや循環を表しています。
このことわざは、「楽あれば苦あり」と「苦あれば楽あり」を組み合わせた形で使われることが多いです。

語源・由来

このことわざの正確な初出は不明ですが、仏教の諸行無常「輪廻転生」の思想が影響していると考えられます。
諸行無常とは、この世のすべてのものは常に変化し、永遠に変わらないものはないという考え方です。
輪廻転生とは、生命は死と再生を繰り返すという考え方です。
これらの思想は、人生の喜びや苦しみも永遠ではなく、常に変化し、循環するという「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」の考え方に通じています。
また、中国の古典『淮南子(えなんじ)』の「人間万事塞翁が馬」の故事や、陰陽思想(万物は陰と陽の相反する要素から成り立ち、互いに影響しあって変化する)も影響している可能性があります。

使用される場面と例文

「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」は、人生の様々な局面で使われます。

  • 良いことが続いている時:将来の困難に備え、気を引き締めるように促す。
  • 悪いことが続いている時:希望を持ち、前向きに生きるように励ます。
  • 人生の転機を迎えた時:人生の浮き沈みを理解し、冷静に受け止めるように助言する。

例文

  • 「仕事が順調な時こそ、楽あれば苦あり、苦あれば楽ありという言葉を思い出して、油断しないようにしよう。」
  • 「今は辛い時期だけど、楽あれば苦あり、苦あれば楽あり。必ず良い時が来るから、諦めずに頑張ろう。」
  • 「人生は、楽あれば苦あり、苦あれば楽ありの繰り返しだ。良い時も悪い時も、その経験を次に生かしていこう。」
  • 「結婚はゴールではなく、新たなスタート。楽あれば苦あり、苦あれば楽ありの精神で、二人で力を合わせて幸せな家庭を築いていこう。」

文学作品等での使用例

「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」という言葉そのものは、文学作品で直接使われることは少ないかもしれません。
しかし、人生の浮き沈み、喜びと悲しみの繰り返しを描いた作品は数多く存在します。

例: 谷崎潤一郎の『細雪』では、四姉妹それぞれの人生における喜びと悲しみ、幸福と不幸が、美しい文章で描かれています。

また、時代劇『水戸黄門』の主題歌「ああ人生に涙あり」の歌詞には、

人生楽ありゃ苦もあるさ
涙の後には虹も出る

歩いてゆくんだしっかりと
自分の道をふみしめて

とあり、「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」の思想が、より親しみやすい形で表現されています。

類義語

  • 人生山あり谷あり:人生には良い時も悪い時もあるという意味。
  • 禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし):幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくるという意味。
  • 沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり(しずむせあればうかぶせあり) :人生には悪い時もあれば良い時もある
  • 良い時もあれば悪い時もある いいときもあればわるいときもある。意味は同じ。

関連する概念

  • 諸行無常(しょぎょうむじょう):前述の仏教用語
  • 輪廻転生(りんねてんしょう):前述の仏教用語
  • 陰陽(いんよう):前述。万物は陰と陽からなる。

対義語

特定のことわざとして、明確な対義語はありませんが、以下のような考え方は対照的と言えます。

  • 人生は楽ばかり:人生は楽しいことばかりだという考え方。(現実には稀)
  • 人生は苦ばかり:人生は苦しいことばかりだという考え方。(悲観的すぎる)

使用上の注意点

「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」は、人生の真理を表す言葉ですが、時と場合によっては、相手を傷つけたり、不快にさせたりする可能性もあります。
例えば、

  • 今まさに不幸のどん底にいる人に、「楽あれば苦あり」と言うのは、酷な場合があります。
  • 成功している人に「楽あれば苦あり」と忠告するのは、余計なお世話、妬みと取られる可能性もあります。
    相手の状況や気持ちをよく考え、言葉を選ぶことが大切です。

英語表現(類似の表現)

Every cloud has a silver lining.

直訳:すべての雲には銀の裏地がついている。
意味:どんなに悪い状況でも、必ず良い面がある、希望はある、という意味。
「苦あれば楽あり」に近い。

例文:
I know you’re going through a tough time, but remember, every cloud has a silver lining.
(辛い時期だとは思うけど、苦あれば楽あり、だよ。)

What goes up must come down.

直訳:上がったものは必ず下がる。
意味:良いことも悪いことも永遠には続かない、という意味。「楽あれば苦あり」に近い。

例文:
The stock market is booming right now, but what goes up must come down.
(今は株価が上がっているけど、楽あれば苦あり、だ。)

Life is full of ups and downs.

直訳:人生は浮き沈みで満ちている
意味:人生には良いときも悪いときもある。「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」とほぼ同じ。

例文:
Don’t be discouraged when things are tough. Life is full of ups and downs.
(つらい時でも落胆しないで。人生は山あり谷ありだよ。)

After rain comes fair weather.

直訳:雨の後には晴天が来る。
苦しいことの後には楽しいことが来る、という意味で、「苦あれば楽あり」に近い。

例文:
Don’t worry, after rain comes fair weather.
(心配しないで、苦あれば楽あり、だよ。)

まとめ

「楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」は、人生の喜びと苦しみは交互にやってくる、人生の不変のサイクルを表すことわざです。
このことわざは、良い時も悪い時も、一喜一憂せず、常に平常心を保つことの大切さを教えてくれます。
また、苦しい時には希望を捨てず、楽しい時には油断せず、人生のあらゆる局面を前向きに生きるための力強い指針となるでしょう。
人生は、良いことと悪いことの繰り返し。その中で、どう生きるかが大切なのです。

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