人間万事塞翁が馬

ことわざ 故事成語
人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)
短縮形:塞翁が馬

14文字の言葉」から始まる言葉
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意味

「人間万事塞翁が馬」とは、人生における幸不幸は予測がつかず、容易に判断できないものである。良いことが悪いことの前触れであったり、悪いことが良いことの前触れであったりもする。
目先の出来事に一喜一憂せず、長期的な視点を持つことの大切さを説く言葉です。

語源・由来

中国、前漢の時代の思想書『淮南子(えなんじ)』の「人間訓(じんかんくん)」にある故事に由来します。

あらすじは以下の通り。

  1. 馬が逃げる:中国北辺の塞(とりで)近くに住む老人(塞翁)の馬が、胡(北方異民族)の地に逃亡。 近所の人々は慰めたが、塞翁は「これは幸いになるかもしれない」と言った。
  2. 駿馬と帰還:数か月後、逃げた馬が(胡の)駿馬を連れて帰還。 人々は祝ったが、塞翁は「これは災いになるかもしれない」と言った。
  3. 息子が落馬:塞翁の息子がその駿馬から落ちて脚の骨を折った。 人々は同情したが、塞翁は「これは幸いになるかもしれない」と言った。
  4. 戦争と徴兵免除:1年後、胡との戦争が起こり、塞の近くに住む若者の多くが戦死した。 しかし、塞翁の息子は脚の骨折のため徴兵を免れ、命拾いをした。

この話から、「人間万事塞翁が馬」は、人生の幸不幸は短期的には判断できず、長期的な視点が必要であること。
また、一見不幸に見えることが幸運に、幸運に見えることが不幸につながる可能性もあるという教訓を表すようになりました。
物事の一面だけを見て判断せず、動じない心を持つことの大切さも示唆しています。

使用される場面と例文

「人間万事塞翁が馬」は、良いことや悪いことが起きたときに、その出来事に一喜一憂せず、冷静に受け止めるべきだという戒めとして使われます。
また、将来のことは予測できないという、不確実性を受け入れる心構えを示す際にも用いられます。

例文

  • 試験に落ちて落ち込んでいたが、「人間万事塞翁が馬」と言うし、この経験が将来役に立つかもしれない。
  • 宝くじに当たったけど、「人間万事塞翁が馬」とも言うから、浮かれすぎないように気をつけよう。
  • プロジェクトが成功したからといって、すぐに喜んではいけない。「人間万事塞翁が馬」というように、この成功が新たな問題を引き起こす可能性もある。
  • 彼女に振られてしまったけど、「人間万事塞翁が馬」だ。もっといい人と出会えるかもしれない。

文学作品等での使用例

芥川龍之介の短編小説『杜子春』には、次のような一節があります。
杜子春がお金持ちになったり貧乏になったりする場面に「人間万事塞翁が馬」の考え方が現れています。

「金」と云うものは、有っても無くても、同じ事だ。現に金が有る間には、あんな憂目にも遇ったのだから、――人間万事塞翁が馬だと、杜子春はしみじみ思いました。

類義語

  • 禍福は糾える縄の如し:幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくるということ。
  • 沈む瀬あれば浮かむ瀬あり:悪いことばかりではなく、良いこともあるということ。
  • 楽あれば苦あり:楽しいことの後には苦しいことがあり、またその逆もあるということ。
  • 人間到る処青山有り:人間はどこへ行っても活躍できる場所があるということ。
  • 一喜一憂:状況の変化に、喜んだり心配したりすること。

関連する哲学・宗教の概念

  • 諸行無常:仏教の言葉で、この世のすべてのものは常に変化・不変のものはないということ。

対義語:反対の行動や考え方

  • 一喜一憂:些細なことに喜んだり悲しんだりすること。
  • 悲観主義:物事を悪い方向にばかり考えること。
  • 運命論(宿命論):すべての出来事はあらかじめ決まっていると考えること。

使用上の注意点

「人間万事塞翁が馬」は、あくまで「幸不幸は予測できない」ということを示すことわざであり、「何もしなくても良い」とか、「努力や行動は無意味だ」という意味ではありません。
努力や行動を否定する言葉ではないので、注意が必要である。

英語表現(類似の表現)

A blessing in disguise

直訳:変装した祝福。
意味:一見悪いことのように見えて、実は良い結果をもたらすもの。

例文:
Losing that job was a blessing in disguise.
(あの仕事を失ったことは、実は幸運だった。)

Every cloud has a silver lining.

直訳:すべての雲は銀の裏地を持っている
意味:どんな悪い状況にも、良い面がある

例文:
I failed the exam, but every cloud has a silver lining; I can focus on other subjects now.
(試験には落ちましたが、悪いことばかりではありません。今は他の科目に集中できます。)

まとめ

「人間万事塞翁が馬」は、人生の幸不幸は予測できず、長い目で見ることが大切だということわざです。
目先の出来事に一喜一憂せず、何事にも動じない心構えを持つことの重要性を示唆しています。
最も重要なのは、良いことと悪いことは表裏一体であり、常に変化し続けるということを理解することです。

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