意味
「人を呪わば穴二つ」とは、他人を呪い殺そうとすれば、自分もその報いを受けて死ぬことになるため、墓穴が二つ必要になる、という意味のことわざです。
他人を陥れようとすれば、必ず自分にも悪いことが返ってくる、という教訓を表しています。
語源・由来
このことわざは、日本の陰陽道(おんみょうどう)に由来すると言われています。
陰陽道では、人を呪い殺すための呪術を行う際、自分も死ぬ覚悟が必要だとされていました。
呪術には、相手を呪い殺すための墓穴と、術者自身が入るための墓穴の、二つの穴を掘る必要があった、という伝承があります。
これが転じて、「人を呪わば穴二つ」ということわざになったと言われています。
使用される場面と例文
「人を呪わば穴二つ」は、他人を憎んだり、陥れようとしたりすることを戒める場面で使われます。
また、悪いことをすれば、必ず自分に返ってくる、という因果応報の考え方を表す際にも用いられます。
例文
- 「ライバルを蹴落とそうと策略を巡らせるのはやめなさい。人を呪わば穴二つと言うでしょう。」
- 「SNSで他人を誹謗中傷するのは、人を呪わば穴二つになる行為だ。」
- 「彼女は、元恋人に復讐しようとしているが、人を呪わば穴二つになるだけだと忠告した。」
- 「不正な手段で利益を得ようとすれば、いつか必ず報いを受ける。まさに人を呪わば穴二つだ。」
注意! 避けるべき使い方
- 「人を呪わば穴二つだから、あいつにも天罰が下るはずだ」(✕ 復讐を肯定する)
※ 他人に不幸が起こることを期待するような使い方は、このことわざの本来の意味から外れます。
あくまで、自分自身の行動を戒めるために使うべきです。
類義語
- 因果応報:(仏教の言葉で)良い行いをすれば良い報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。
- 天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず):天が張りめぐらした網は、広くて目は粗いようだが、悪人を決して漏らすことはない。悪事を行えば必ず捕らえられるということ。
- 自業自得:(仏教の言葉で)自分が行った悪い行いの報いを、自分自身が受けること。
- 身から出た錆:自分の犯した過ちが原因で、自分が苦しむこと。
関連する哲学の概念
- カルマの法則: 行為(カルマ)が良い結果や悪い結果をもたらすという、インド哲学や仏教の考え方。「人を呪わば穴二つ」は、このカルマの法則と共通する考え方と言えます。
対義語
「人を呪わば穴二つ」の明確な対義語はありません。
- 情けは人の為ならず:人に情けをかけるのは、その人のためになるだけでなく、巡り巡って自分に良い報いが返ってくる、という意味のことわざ。
使用上の注意点
「人を呪わば穴二つ」は、復讐や他人への攻撃を戒めるためのことわざです。
このことわざを使って、他人を脅したり、非難したりすることは避けるべきです。
あくまで、自分自身の行動を振り返り、反省を促すために使うようにしましょう。
英語表現(類似の表現)
What goes around comes around.
直訳:巡り巡って戻ってくる。
意味:自分のしたことは、良いことも悪いことも、いずれ自分に返ってくる、という意味です。
例文:
Be kind to others. What goes around comes around.
(人に親切にしなさい。良い行いは巡り巡って戻ってきます。)
You reap what you sow.
直訳:蒔いた種を刈り取る。
意味:自分のしたことの結果は、自分自身が受けなければならない、という意味です。
例文:
If you cheat on the test, you’ll eventually get caught. You reap what you sow.
(カンニングをすれば、いつか必ず見つかります。蒔いた種を刈り取ることになるのです。)
まとめ
「人を呪わば穴二つ」は、他人を陥れようとすると、結局は自分も不幸になる、という教訓を表すことわざです。
この言葉は、私たちに、他人を恨んだり、攻撃したりするのではなく、誠実に生きることの大切さを教えてくれます。
常に心に留めておきたい言葉ですね。
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