鶴の一声

慣用句
鶴の一声(つるのひとこえ)

7文字の言葉つ・づ」から始まる言葉
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鶴の一声 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

「鶴の一声」の意味・教訓 – 議論を一変させる一言

「鶴の一声」とは、権威のある人や組織内で力を持つ人の一言によって、それまでの議論や多くの意見が覆り、物事が最終的に決定されることを意味する慣用句です。

長い議論が続いていても、あるいは多くの人が反対していたとしても、社長やリーダーなど、影響力の強い人の「こうしよう」という一言で方針が決まってしまうような状況を指します。
つまり、大勢の意見よりも、たった一人の有力者の意見が絶対的な影響力を持つ状況のたとえです。

この言葉は、決定が迅速に行われる側面を表す一方で、トップダウンの強い意思決定のあり方を示唆しています。

「鶴の一声」の語源 – なぜ「鶴」なのか?

では、なぜ「鶴」の声なのでしょうか。
鶴は、日本では古くから「鶴は千年、亀は万年」と言われるように長寿の象徴であり、その美しい姿から神秘的で縁起の良い鳥として尊ばれてきました。

また、鶴の鳴き声は「キーン」と高く澄み渡り、遠くまで響きます。
その印象的な鳴き声が、普通の人々の声とは違う、特別な力を持つもの、つまり権威や威厳を伴う発言として捉えられるようになり、「鶴の一声」という言葉が生まれたと考えられています。

「鶴の一声」の使用場面と例文 – 決定的な影響力

「鶴の一声」は、会議や議論の場などで、最終的な決定権を持つ人物の発言によって物事が決着する場面でよく使われます。
その一言が良い方向にも、悪い方向にも、状況を大きく動かす決定力を持つことを示します。

例文

  • 「社長の鶴の一声で、新プロジェクトの開発が決定した」
  • 「長年議論されてきた問題だったが、町長の鶴の一声で解決に向かった」
  • 鶴の一声で、長年変えられなかった会社の規則が変わることになった」
  • 「ベテラン議員の鶴の一声で、派閥の意見がまとまった」
  • 「教授の鶴の一声で、研究の方向性が大きく変わった」

「鶴の一声」の類義語 – 逆らえない声

  • 天の声(てんのこえ):目上の人や権威者など、逆らうことのできない命令や意見。また、どこからともなく聞こえるお告げのような声。
  • 神の声(かみのこえ):「天の声」よりもさらに絶対的な力を持つとされる声や意見。

「鶴の一声」の対義語 – みんなで決めること

「鶴の一声」が有力者一人の決定を示すのに対し、多くの人々の意見や合意によって物事を決めるプロセスや状態が対照的と言えます。

  • 衆議(しゅうぎ):多くの人が集まって相談すること。
  • 満場一致(まんじょういっち):その場にいる全員の意見が一致すること。
  • 合議制(ごうぎせい):複数の構成員の合議によって意思決定を行う制度や方法。
  • 多数決(たすうけつ):多数の意見を採用して物事を決定する方法。

「鶴の一声」の英語での類似表現 – The final say

英語で「鶴の一声」のような、決定的な影響力を持つ一言を表すには、以下のような表現があります。

  • The final say
    意味:最終決定権(を持つ人の言葉)。「鶴の一声」が持つ「決定力」の側面をよく表します。
    例文:The CEO has the final say on all important decisions. (最高経営責任者は、すべての重要な決定において最終決定権を持っている。)
  • A word from on high
    意味:上からの言葉、お告げ。権威のある立場の人からの、従うべき言葉というニュアンスです。
    例文:A word from on high changed the company’s policy. (上の人からの言葉で、会社の方針が変わった。)
  • The word of authority
    意味:権威のある人の言葉。その発言の影響力を示します。
    例文:The project was approved by the word of authority. (そのプロジェクトは、権威のある人の言葉によって承認された。)

使用上の注意点 – 使い方と誤解

「鶴の一声」は、権威や権力によって物事が決まる様子を表すため、その言葉が持つニュアンスを理解して使うことが大切です。

  • 使う場面を選ぶ: 民主的な議論やプロセスを重んじる場面で使うと、トップダウンや権威主義を肯定しているように聞こえ、不快感を与える可能性があります。
  • 間違った使い方: この言葉は、状況を決定づけるような強い影響力を持つ発言に使われます。単に面白いことを言ってみんなが笑った、というような状況で「彼の鶴の一声でみんなが笑い出した」のように使うのは誤りです。場を和ませる発言や、影響力のない人の発言には使いません。

「鶴の一声」のまとめ

「鶴の一声」は、権力者や実力者の一言で、議論や状況が一気に動く様子を的確に表した慣用句です。
その語源には、古来より日本人が鶴に対して抱いてきた特別なイメージが反映されていますね。

この言葉は、物事が迅速に決まる様子を示す一方で、使い方によっては権威主義的な響きも持ちます。
類義語や対義語、英語表現などを知っておくことで、より深く言葉の意味を理解し、状況に応じて適切な表現を選ぶことができるでしょう。
コミュニケーションの中で言葉を選ぶ際には、その言葉が持つ背景やニュアンスにも心を配りたいものですね。

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