「親しき仲にも礼儀あり」の意味・語源・由来
意味
親しき仲にも礼儀ありとは、どんなに親しい間柄であっても、守るべき礼儀やマナーがある、という意味のことわざです。
親しいからといって、遠慮のない言動や無作法な振る舞いは慎むべきだ、という教えです。
友人、家族、恋人など、親密な関係にある人に対して、つい甘えや馴れ合いが生じてしまいがちです。
しかし、良好な関係を長く続けるためには、相手への敬意や配慮を忘れず、節度ある態度で接することが大切です。
語源・由来
「親しき仲にも礼儀あり」の正確な語源は不明です。
しかし、『戦国策』に記されている「君子之交淡若水(君子の交わりは淡きこと水の若し)」という言葉が元になっているという説があります。
立派な人物同士の交際は、水のようにさっぱりとしていて、いつまでも変わらないという意味です。
また、武士道の心得を説いた『葉隠』には、「礼儀は親しき仲にも隔てをなすものなり」という言葉があります。
これらの言葉からも、古くから、親しい間柄であっても礼儀を重んじる考え方があったことがわかります。
「親しき仲にも礼儀あり」の使い方(例文)
- 親しき仲にも礼儀ありと言うから、友人に対しても言葉遣いには気をつけている。
- どんなに仲の良い夫婦でも、感謝の気持ちを伝えることは大切だ。親しき仲にも礼儀あり、だね。
- 恋人同士だからといって、何でも許されるわけではない。親しき仲にも礼儀あり、ということを忘れてはいけない。
- 親しき仲にも礼儀あり。家族に対しても、きちんと挨拶をするようにしている。
注意! 間違った使い方
このことわざを誤用するケースは少ないですが、「礼儀」の解釈を間違わないように注意しましょう。
- 「親しき仲にも礼儀あり」だから、友達と会う時も毎回正装する。(過剰な解釈)
ここでいう「礼儀」とは、堅苦しい形式的な礼儀作法のことだけを指すのではありません。
相手への思いやりや配慮、節度を持った言動など、人間関係を円滑にするための心遣い全般を指します。
「親しき仲にも礼儀あり」の文学作品などの用例
このことわざそのものが使われている例は多くありませんが、同様のテーマを扱った作品は数多くあります。
例えば、友情や家族愛を描いた物語では、登場人物同士が互いを尊重し、礼儀をわきまえることで、良好な関係を築いている様子が描かれることがあります。
これは、「親しき仲にも礼儀あり」の考え方を体現していると言えるでしょう。
「親しき仲にも礼儀あり」の類義語
- 狎れるるも垣をせよ(なれるるもかきをせよ):親しくなっても、けじめはつけるべきだ。
- 礼も過ぎれば無礼になる(れいもすぎればぶれいになる):礼儀も度が過ぎると、かえって失礼になる。
- 遠慮は無沙汰の前(えんりょはぶさたのまえ):過度の遠慮は、相手との関係を疎遠にする。
「親しき仲にも礼儀あり」の対義語
直接的な対義語はありませんが、反対の行動・考えを表すものとしては以下が考えられます。
- 無礼講(ぶれいこう):身分や地位の上下を取り払い、格式ばらずに行う宴会。
- 馴れ馴れしい(なれなれしい):親しくもないのに、遠慮のない態度をとること。
- 無遠慮(ぶえんりょ):相手への配慮がなく、慎みがないこと。
使用上の注意点
「親しき仲にも礼儀あり」は、人間関係における大切な心構えを示すことわざですが、あまりに堅苦しく考えすぎる必要はありません。
相手への敬意を忘れず、節度ある態度で接することができれば、自然と礼儀は伴うものです。
「親しき仲にも礼儀あり」の英語表現
Familiarity breeds contempt.
親しすぎると軽蔑を生む。(直訳)
親しい間柄でも、礼儀を欠くと関係が悪化する可能性があるという意味です。
例文: You shouldn’t be too casual with your boss. Remember, familiarity breeds contempt.
(上司に対して、あまり馴れ馴れしくすべきではない。親しき仲にも礼儀あり、だよ。)
A hedge between keeps friendship green.
垣根は友情を新鮮に保つ。 適度な距離感は、良好な人間関係を維持するために重要だという意味です。
例文:It’s good to have some boundaries, even with close friends. A hedge between keeps friendship green.
(親友同士でも、ある程度の境界線は必要です。「親しき仲にも礼儀あり」です。)
Good fences make good neighbors.
良いフェンスは良い隣人を作る 適切な境界は、良好な関係を作る
まとめ
「親しき仲にも礼儀あり」は、どんなに親しい間柄であっても、礼儀やマナーを忘れてはいけない、という教えです。
相手への敬意と配慮を忘れず、節度ある態度で接することが、良好な人間関係を築き、維持するための秘訣と言えるでしょう。
コメント