前門の虎後門の狼

ことわざ
前門の虎後門の狼(ぜんもんのとらこうもんのおおかみ)

16文字の言葉せ・ぜ」から始まる言葉
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「前門の虎後門の狼」の意味・語源・由来

意味

「前門の虎後門の狼」とは、次々と災難や危険が迫ってくる状況、一つの問題に対処しても、またすぐに別の問題が発生し、安心できない状況を表すことわざです。

前門で虎の侵入を防いでいる間に、後門から狼が侵入してくる、という様子から来ています。
苦境が続くこと、困難から逃れられない状態のたとえとしても使われます。
特に、命に関わるような重大な危険や、非常に切迫した状況を表現する際に用いられます。

語源・由来

このことわざの明確な初出は特定されていませんが、中国の古典に由来しています。
「前門拒虎、後門進狼」(前の門で虎を拒み、後ろの門から狼が入る)という表現は、三国志時代の文献『世説新語』や『晋書』などに記録があります。
当時の政治的混乱や軍事的危機を表現するために使われていました。
このような古代中国で広く使われていた表現が、仏教や儒学の伝来とともに日本に伝わり、日本語の慣用表現として定着したと考えられています。

「前門の虎後門の狼」の使い方(例文)

  • 「台風の被害から立ち直ったと思ったら、今度は地震が起きた。まさに前門の虎後門の狼の状況だ。」
  • 「長年の借金をようやく返済したと思ったら、今度は高額な医療費がかかる病気になった。前門の虎後門の狼とはこのことだ。」
  • 「経営危機を乗り越えたと思った矢先、主要取引先が倒産した。会社は前門の虎後門の狼の状態に陥っている。」
  • 「政府は金融危機に対処している間に、深刻な食糧危機が発生した。まさに前門の虎後門の狼の事態である。」
  • 「長い訴訟を終えてほっとしたのも束の間、今度は税務調査が入った。前門の虎後門の狼とはこういう状況を言うのだ。」

「前門の虎後門の狼」の類義語

「前門の虎後門の狼」の類義語は、以下の通りですが微妙なニュアンスの違いに注意。

  • 一難去ってまた一難:単に困難が連続することを表す。
  • 泣きっ面に蜂:悪いことの上に、さらに悪いことが重なること。災難の連続性よりも、不運が重なる点に重点がある。
  • 進退極まる:前にも後ろにも進めない状況。直接的な危険よりも、選択肢がない、身動きが取れない状況を指す。
  • 八方塞がり:どの方向に進んでも解決策がない状況。出口が見えない、絶望的な状況を強調する。
  • 四面楚歌:周囲がすべて敵や反対勢力で、孤立無援の状態。直接的な危険よりも、味方がいない状況を指す。
  • 内憂外患:内部にも外部にも問題や心配事があること。必ずしも切迫した危機とは限らない。

「前門の虎後門の狼」の対義語

  • 順風満帆:物事がすべて順調に進むこと。
  • 安泰:穏やかで変わったことのないこと。心配事がない状態。
  • 平穏無事:何事もなく穏やかなこと。
  • 一陽来復:冬が終わり春が来ること。すなわち、悪い状況が終わり良い方向に向かうこと。
    (文脈によっては対義語として使用可能)

使用上の注意点

「前門の虎後門の狼」は、比較的大きな災難や困難、特に命に関わるような危険や切迫した状況が連続して起こる状況を表すのに適しています。

些細なトラブルには不向き:

  • 「仕事で小さなミスをした後に、通勤電車が遅延した」というような日常的なトラブルが続いた程度で使うと、大げさに聞こえる可能性があります。
  • 「電球が切れた後にリモコンの電池も切れた」というような些細なトラブルには、「泣きっ面に蜂」などの表現の方が適切です。

「前門の虎後門の狼」に類似した英語表現

Out of the frying pan and into the fire.

直訳:フライパンから出て火の中へ
意味:一難去ってまた一難。

例文:
I finally got out of that terrible job, but my new one is even worse. It’s like going out of the frying pan and into the fire.
(やっとひどい仕事から抜け出せたのに、新しい仕事はさらにひどい。まるでフライパンから出て火の中に入るようだ。)

Between the devil and the deep blue sea.

直訳:悪魔と深い青い海の間
意味:どちらを選んでも困難な状況、進退きわまる状態。

例文:
If I tell the truth, I’ll lose my job, but if I lie, I’ll lose my integrity. I’m between the devil and the deep blue sea.
(真実を話せば職を失うし、嘘をつけば誠実さを失う。私は進退きわまっている。)

まとめ

「前門の虎後門の狼」は、一つの災難を逃れても、すぐにまた別の、しかも命に関わるような重大な災難が襲ってくる状況を表すことわざです。

類義語には「一難去ってまた一難」「泣きっ面に蜂」などがありますが、「前門の虎後門の狼」はより切迫した危機的状況を表します。

このことわざから学べる教訓は、リスク管理の重要性、問題解決における優先順位付けの必要性、そして困難な状況でも冷静さを保ち、最善の策を模索し続けることの大切さです。
複合的な危機に直面した際には、まず最も差し迫った脅威に対処し、次に起こりうる問題を予測して対策を講じることが求められます。

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