「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」の意味・語源・由来
意味
「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」とは、人が何かをしようとすると、必ず邪魔が入ったり、うまくいかないことのたとえです。
農民の権兵衛が種をまくと、カラスがやってきてその種をほじくり返してしまう様子から生まれました。
特に、不運が続くことや、努力が報われないことを表す際に使われます。
「まきゃ」は、現代語の「まけば」「まくと」にあたる言葉で、「~すれば」という仮定の意味を持つ古い表現です。
語源・由来
このことわざは、三重県北牟婁郡紀北町に伝わる民話「種まき権兵衛」に由来します。
「権兵衛」は、江戸時代によく使われた農民の名前の代表例ですが、この民話に登場する権兵衛は、実在したとされる上村権兵衛という人物がモデルと考えられています。
三重県に伝わる民話「種まき権兵衛」
権兵衛は元々武士の家に生まれましたが、父の死後、武士の身分を捨て農民となり、荒地の開墾を始めました。
しかし、農業に不慣れだったため、種をまいてもすぐにカラスに食べられてしまい、近隣の農家から笑われていました。
それでも諦めずに努力を続け、やがて村一番の農家になったと伝えられています。
また、権兵衛は狩猟の名手でもあり、紀州藩主・徳川宗直にその腕前を披露し、村人の年貢を免除してもらったという逸話もあります。
さらに、馬越峠に出た大蛇を退治したものの、その毒液を浴びて亡くなったとも伝えられています。
村人たちがはやし立てた「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる / 三度に一度は追わねばなるまい」という言葉は、民謡「権兵衛の種まき」として中部地方に広まり、秋祭りの踊りなどに使われるようになりました。
「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」の使い方(例文)
- 「せっかく企画書を作ったのに、上司に却下された。権兵衛が種まきゃカラスがほじくるとはこのことだ。」
- 「ダイエットを始めると、必ず友達から食事に誘われる。権兵衛が種まきゃカラスがほじくるみたいだ。」
- 「権兵衛が種まきゃカラスがほじくると言うけれど、何度失敗しても諦めないことが大切だ。」
- 「新しい事業を立ち上げようとしたら、競合他社に先を越された。権兵衛が種まきゃカラスがほじくるとはよく言ったものだ。」
- 「彼に頼み事をすると、いつもトラブルが起こる。権兵衛が種まきゃカラスがほじくるを地で行くような人だ。」
「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」の類義語
- 一難去ってまた一難:次々と災難が続くこと。
- 泣きっ面に蜂:不運な時に、さらに不運が重なること。
- 弱り目に祟り目:困っている時に、さらに悪いことが起こること。
- 踏んだり蹴ったり:ひどい目にあうこと。
- 前門の虎後門の狼:一つの災いを逃れても、また次の災難にあうこと。
- 二度あることは三度ある:一度起きたことは、繰り返される可能性が高いこと。
- 骨折り損のくたびれ儲け:苦労したのに報われないこと。
「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」の対義語
使用上の注意点
このことわざは、人の努力が報われないことを表すため、誰かが一生懸命頑張っている場面では適さないことがあります。
例えば、友人が新しい仕事を始めたばかりのときに使うと、冷やかしているように受け取られる可能性があるため、慎重に使用しましょう。
「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」に類似した英語表現
ことわざそのものスバリというものはありませんが、近い意味の慣用句や表現を紹介します。
Murphy’s Law
直訳:マーフィーの法則
意味:失敗する可能性のあるものは、いずれ失敗する。
例文:
I tried to fix the car myself, but Murphy’s Law prevailed, and I ended up making things worse.
(自分で車を修理しようとしたが、マーフィーの法則が働き、結局事態を悪化させてしまった。)
Be jinxed
意味:不運に見舞われる、ツイていない
例文:
Every time I try to organize a picnic, it rains. I think I’m jinxed.
(ピクニックを企画しようとするたびに雨が降る。私は呪われているんだと思う。)
One step forward, two steps back
意味:一歩進んで二歩下がる。
例文:
Every time I try to save money, something unexpected happens and I have to spend it. It’s like one step forward, two steps back.
(お金を貯めようとするたびに、予期せぬ出来事が起きてお金を使わなければならなくなる。まるで一歩進んで二歩下がるようだ。)
まとめ
「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」は、人が何かをしようとすると、必ず邪魔が入ったり、うまくいかないことのたとえです。
農民の権兵衛が種をまくと、カラスがやってきてその種をほじくり返してしまうという、農村の日常的な光景から生まれたことわざだと考えられます。
このことわざは、不運が続くことや努力が報われないことを表す際に使われますが、ネガティブなニュアンスが強いため、使う場面や相手には注意が必要です。
特に、他人の努力を軽んじるような場面で使うと、相手を傷つけてしまう可能性があります。
しかし、三重県の民話に登場する権兵衛のように、不運に見舞われても諦めずに努力を続けることが重要です。
このことわざを単なる不運の象徴ではなく、「困難があっても乗り越えられる」という教訓として捉えることで、前向きな使い方ができるでしょう。
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