八方美人

四字熟語
八方美人(はっぽうびじん)

7文字の言葉は・ば・ぱ」から始まる言葉
スポンサーリンク

意味・ニュアンス – 本来の意味と現代での使われ方

「八方美人(はっぽうびじん)」とは、誰に対しても愛想よく、そつなく振る舞う人のことを指す言葉です。

元々は「どこから見ても欠点のない美人」という意味や、「誰からも悪く思われないように、如才なく振る舞うこと」を肯定的に評価する言葉でした。

しかし、現代では主に「自分の意見がなく、誰にでもいい顔をしていて信用できない」「主体性がない」といった、否定的なニュアンスで使われることがほとんどです。
相手の機嫌を損ねないように立ち回る様子を、皮肉や非難の意味を込めて表現する場合が多いでしょう。

語源・由来 – 「八方」と「美人」が意味するもの

「八方美人」の「八方」は、東西南北とその間の四つの方角を合わせた八つの方角、つまり「あらゆる方向」「周囲全体」を意味します。

「美人」は、現代で一般的に使われる「容姿の美しい女性」という意味だけではありません。
この言葉においては、「欠点がないこと」「完璧であること」「抜け目がないこと」といった意味合いで使われています。

つまり、「八方美人」とは、元々「どの方向から見ても欠点がない、完璧な状態」を表していました。
そこから転じて、「誰に対しても欠点なく(そつなく)振る舞う人」を指すようになったと考えられています。
明確な初出は不明ですが、江戸時代にはすでに使われていたようです。

使用される場面と例文 – 現代における使い方

現代において「八方美人」は、主に人間関係において、誰に対してもいい顔をする人を、やや批判的な意味合いを込めて表現する際に使われます。
本心を見せず、相手に合わせて態度を変える様子を指すことが多いでしょう。

例文

  • 彼は誰にでもいい顔をする八方美人だから、あまり信用しない方がいいかもしれない。
  • 会議で自分の意見を言わず、上司や多数派に同調するばかりの彼女は、八方美人だと陰で言われている。
  • グループ内で対立が起きても、どちらにも味方するような八方美人な態度は、かえって状況を悪化させることもある。

類義語・関連語 – 似た意味を持つ言葉たち

「八方美人」と似た意味を持つ言葉はいくつかありますが、それぞれニュアンスが異なります。

  • 内股膏薬(うちまたごうやく):あちらについたり、こちらについたりして、定見のないことのたとえ。八方美人よりも、さらに主体性がなく、日和見主義的なニュアンスが強い言葉です。膏薬が体のどちら側にもつくことから来ています。
  • 風見鶏(かざみどり):状況を見て有利な方につこうとする人。日和見主義者を揶揄する言葉。「八方美人」よりも、利己的な計算高さが強調されます。
  • 世渡り上手(よわたりじょうず):人付き合いが巧みで、世の中をうまく渡っていくこと。こちらは肯定的な意味合いで使われることが多い言葉です。「八方美人」のような否定的なニュアンスは通常ありません。
  • 社交的(しゃこうてき):人付き合いを好み、得意とすること。こちらも肯定的な意味で使われ、「八方美人」のように裏表があるようなニュアンスはありません。

対義語 – 正反対の意味を持つ言葉

「八方美人」とは反対に、自分の信念を貫き、誰に対しても態度を変えない人を表す言葉があります。

  • 頑固一徹(がんこいってつ):自分の考えや態度を意地でも変えようとしないこと。
    ※ 「八方美人」が誰にでも合わせるのに対し、自分の考えを絶対に曲げない点が対照的です。
  • 剛毅木訥(ごうきぼくとつ):意志が強く、飾り気がなく口数が少ないこと。孔子の『論語』に由来し、仁者に近い資質とされる言葉です。
    ※ 愛想よく振る舞う「八方美人」とは対照的に、口数は少なくても誠実さが感じられる様子を表します。
  • 一本気(いっぽんぎ):自分の信じる一つのことに向かって、ひたすら進む性質。
    ※ 周囲に合わせて態度を変える「八方美人」とは違い、一途で直情的な性格を表します。

英語での類似表現 – 英語で伝えるには?

「八方美人」のニュアンスを英語で表現するには、状況に応じていくつかのフレーズが考えられます。

  • people pleaser
    意味:他人を喜ばせようと(過剰に)努力する人。自分の欲求よりも他人の期待に応えることを優先してしまう人を指すことが多いです。
  • try to please everyone
    意味:すべての人を喜ばせようとする。文字通り、誰にでも良い顔をしようとする行動を表します。
  • all things to all men (people)
    意味:すべての人にとってすべてのもの(になろうとする人)。誰にでも都合の良いように振る舞う人を指し、しばしば否定的な意味合いで使われます。聖書の「すべての人に対してすべてのものとなった」(コリントの信徒への手紙一 9章22節)から来ていますが、現代では文脈によって皮肉な意味合いで使われることがあります。

使用上の注意点 – 使う前に考えたいこと

「八方美人」は、現代ではほとんどの場合、否定的な意味で使われる言葉です。
そのため、誰かを指してこの言葉を使う際は、相手を批判したり、非難したりする意図が含まれることを理解しておく必要があります。

直接相手に向かって使うと、人間関係を損ねる可能性が高いでしょう。
陰で噂話として使う場合も、あまり良い印象を与えません。

ごく稀に、文脈によっては「誰とでもうまくやれる」という肯定的な意味合いで使われる可能性もゼロではありませんが、基本的にはネガティブな言葉だと認識しておく方が無難です。
使う場面や相手をよく考えて、慎重に用いるべき言葉と言えるでしょう。

まとめ

「八方美人」は、元々は「どこから見ても欠点がない」という肯定的な意味合いでしたが、現代では主に「誰にでもいい顔をして信用できない」「主体性がない」といった否定的な意味で使われる四字熟語です。
相手に合わせて態度を変える様子を、皮肉や非難を込めて表現することが多くなっています。
類義語には「内股膏薬」「風見鶏」、対義語には「頑固一徹」「一本気」などがあります。
英語では “people pleaser” や “try to please everyone” などが近い表現です。
ネガティブなニュアンスが強いため、使う相手や状況には注意が必要です。
言葉の背景を理解し、適切に使い分けることが大切でしょう。

コメント