意味・教訓
「弱り目に祟り目」とは、困っている状況の時に、さらに追い打ちをかけるように悪いことが重なることを意味します。
ただでさえ弱っているのに、さらに災難が降りかかる様子を表すことわざです。
「泣きっ面に蜂」と似ていますが、「弱り目に祟り目」は、より広範な「弱っている状況」を指す点で異なります。
語源・由来
「祟り目」の「祟り」は、神仏や霊などが人間に災いをなすこと、またはその災いそのものを指します。
「目」は、状況や状態を表す接尾語です。
つまり、「祟り目」とは、「祟りを受けている状態」を意味します。
具体的な由来ははっきりとは分かっていませんが、古くから日本人が持っていた、神仏や霊に対する畏怖の念が背景にあると考えられています。
現代では、神仏や霊的なものに限らず、様々な災難や不運を表す言葉として用いられています。
使用される場面と例文
「弱り目に祟り目」は、困っている状況に加えて、さらに悪いことが起こったときに使われます。
例文
- 「風邪で寝込んでいたら、飼っていたペットまで病気になってしまった。まさに弱り目に祟り目だ。」
- 「会社が倒産し、失業保険の申請に行ったら、担当者に書類の不備を指摘された。弱り目に祟り目とはこのことだ。」
- 「財布を落とした上に、雨に降られてずぶ濡れになった。今日は弱り目に祟り目な一日だ。」
- 「テストの点数が悪かったのに、親に怒られ、さらにゲームまで取り上げられた。弱り目に祟り目で、もうやってられない。」
文学作品等での使用例
夏目漱石の小説『吾輩は猫である』には、以下のような一節があります。
「全く弱り目に祟り目と云う奴だ。
この一文は、主人公である猫が、人間社会の不条理や自身の不運を嘆いている場面で使用されており、まさに「弱り目に祟り目」の状況を端的に表しています。
類義語
- 泣きっ面に蜂:泣いている顔をさらに蜂が刺すこと。不運や不幸が重なることのたとえ。
- 踏んだり蹴ったり:人に踏まれた上に蹴られること。ひどい目にばかりあうことのたとえ。
- 一難去ってまた一難:一つの災難がやっと終わったかと思うと、また次の災難が起こること。
- 傷口に塩:傷口に塩を塗ること。つらいこと、苦しいことの上に、さらに苦痛が加わることのたとえ。
- 二重苦:二つの苦しみが重なること。
- 追い打ちをかける:すでに打撃を受けているものに、さらに打撃を加えること。弱っているものに、さらに打撃を加えることのたとえ。
関連語
- 不運:運が悪いこと。めぐりあわせが悪いこと。
対義語
- 果報は寝て待て:幸運は焦らずに待つのが良いということ。(「弱り目に祟り目」のように悪いことが続くわけではない、という点で対義語と言える。)
- 棚からぼた餅:思いがけない幸運が舞い込むこと。(予想外の幸運は、不運の連続とは反対の状況。)
英語表現(類似の表現)
- When it rains, it pours.
直訳:雨が降るときは、土砂降りになる。
意味:悪いことは重なるものだ。 - Misfortunes never come singly.
意味:不幸は単独では来ない。 - To add insult to injury.
意味:侮辱に加えて怪我を負わせる。
弱っている人に対して、さらに追い打ちをかけるような言動をすること。
まとめ
「弱り目に祟り目」は、困っている状況に、さらに悪いことが重なることを表すことわざです。
不運が続く状況を嘆いたり、同情したりする際に使われます。
類義語も多く、日本語の表現の豊かさを感じさせる言葉の一つと言えるでしょう。
人生には良い時も悪い時もありますが、「弱り目に祟り目」の状況に陥った時は、焦らずに対処し、状況が好転することを信じて、辛抱強く乗り越えることが大切かもしれません。
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