意味
「虻蜂取らず」とは、二つのものを同時に得ようとして、結局どちらも得られないことのたとえです。
欲張りすぎると、かえって何も得られなくなるという教訓を表しています。
語源・由来
このことわざの直接的な由来ははっきりとしていません。
しかし、「虻(アブ)」も「蜂」も、刺したり、まとわりついたりする厄介な虫として、古くから人々に認識されていました。
両方同時に捕まえようとすれば、どちらにも逃げられてしまう可能性が高い、という状況は、容易に想像できます。
そこから、欲張って二つのものを同時に得ようとすると失敗する、という意味のことわざとして定着したと考えられます。
一説には、狩人が虻と蜂を同時に捕まえようとして、虻に刺されている間に蜂に逃げられたから、というものもありますが、確証はありません。
使用される場面と例文
「虻蜂取らず」は、主に以下のような場面で使われます。
- 欲張りすぎて、結局何も得られなかったとき
- 二つの目標を同時に追求して、どちらも中途半端に終わったとき
- 欲張りすぎないように、自分や他人を戒めるとき
例文
- 「A社とB社の両方から内定をもらおうとして、結局どちらからも断られた。虻蜂取らずとはこのことだ。」
- 「資格試験の勉強と、新しい趣味を同時に始めたが、どちらも中途半端になってしまった。虻蜂取らずにならないように、一つずつ集中するべきだった。」
- 「彼は、仕事もプライベートも充実させようとして、結局どちらもうまくいっていない。虻蜂取らずにならないように、優先順位をつけるべきだ。」
- 「虻蜂取らずと言うから、欲張らずに、まずは目の前の目標を達成することに集中しよう。」
類義語
- 二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず):二つのものを同時に得ようとすると、どちらも得られないこと。
- 欲の熊鷹股を裂く(よくのくまたかまたをさく):欲が深すぎると身を滅ぼすこと。
- 大欲は無欲に似たり(たいよくはむよくににたり):大きな欲をもつ人は、欲のためにかえって損をし、無欲の人と変わらない結果になる。
対義語
- 一石二鳥(いっせきにちょう):一つのことをして、二つの利益を得ること。
- 一挙両得(いっきょりょうとく):一つの行為で二つの利益を得ること。
英語表現(類似の表現)
If you run after two hares, you will catch neither.
直訳:二匹のウサギを追えば、どちらも捕まえられない。
意味:二兎を追う者は一兎をも得ず。
例文:
He tried to do two jobs at once, but he ended up failing at both. If you run after two hares, you will catch neither.
(彼は二つの仕事を同時にしようとしたが、結局どちらも失敗した。二兎を追う者は一兎をも得ず、だ。)
Fall between two stools
直訳:二つの椅子の間に落ちる
意味:二つの選択肢で迷って、結局どちらも失敗すること。
例文:
I tried to please both my boss and my colleague, but I ended up falling between two stools.
(上司と同僚の両方を満足させようとしたが、結局どちらも失敗した。)
まとめ
「虻蜂取らず」は、二つのものを同時に得ようとして、結局どちらも得られないことを意味することわざです。
欲張りすぎると、かえって何も得られなくなるという教訓を表しており、「二兎を追う者は一兎をも得ず」とほぼ同じ意味で使われます。
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