漁夫の利

ことわざ 故事成語
漁夫の利(ぎょふのり)

5文字の言葉き・ぎ」から始まる言葉
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漁夫の利 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

意味・教訓 – 第三者が利益を得る故事

「漁夫の利」とは、二つのものが争っている間に、関係のない第三者が苦労なくその利益を横取りしてしまうことのたとえです。

争っている当事者たちは互いに消耗するだけで、結局は第三者に良い思いをさせてしまう、という状況を示します。
この言葉は、無益な争いは避けるべきであり、他者に利用される隙を与えてしまうという教訓を含んでいます。
元々は「鹬蚌相争えば漁夫の利となる(しゅつぼう あいあらそえば ぎょふのりとなる)」という句を略したものです。

語源・由来 – 争う鷸と蚌、利を得る漁夫

「漁夫の利」の語源は、古代中国の書物『戦国策』に載っている以下の寓話ぐうわにあります。

ある日、大きな蛤(蚌・はまぐり)が川辺で甲羅(こうら)を開けていました。
そこへ鷸(しぎ)という鳥がやってきて、蛤の身を食べようとしました。
驚いた蛤は素早く甲羅を閉じ、鷸のくちばしをしっかりと挟んで離しません。

鷸は「このままではお前は干からびるぞ」と言い、蛤も「くちばしを放さなければお前は飢え死にするぞ」と言い返します。
両者一歩も譲らず争っていると、そこへ偶然、漁師(漁夫)が通りかかりました。

争いに夢中で動けない鷸と蛤を、漁師は苦労することなく両方とも捕まえてしまいました。

この話から、二者が無益な争いを続けると、関係のない第三者(=漁夫)が利益(=利)を得てしまう、という意味で「漁夫の利」という言葉が使われるようになりました。

使用される場面と例文 – 争いの隙をつかれる状況

「漁夫の利」は、ビジネス上の競争、政治的な対立、あるいは個人的な争いなどにおいて、当事者以外の第三者が利益を得る状況を指して使われます。
争いに夢中になっている当事者の愚かさや、利益を得た第三者の抜け目なさを指摘する文脈で用いられることが多いです。

例文

  • 「ライバル企業同士が値下げ合戦で消耗している隙に、新規参入の会社がシェアを伸ばした。まさに漁夫の利だ。」
  • 「二人の有力候補が互いを非難し合っている間に、ダークホースの候補者が支持を集め当選した。漁夫の利を得た形となった。」
  • 「兄弟げんかの末、おもちゃを親に取り上げられてしまったのは、ある意味漁夫の利と言えるかもしれない。」
  • 「部署間の対立が長引いた結果、別の部署にプロジェクトの主導権を握られてしまった。まさに漁夫の利を許してしまった。」

類義語 – 似た意味を持つ言葉

  • 鹬蚌の争い(しゅつぼうのあらそい):ハマグリとシギが争い、結局漁夫に捕らえられたという「漁夫の利」の元になった故事そのものを指します。
    当事者同士の無益な争いを意味します。
  • 犬兎の争い(けんとのあらそい):犬が兎を追い、両者が疲れ果てたところを農夫が捕らえたという別の故事に由来します。
    二者が争って疲弊した結果、第三者に利益を奪われるという点で「漁夫の利」と同じ状況を示します。

対義語 – 反対の意味を持つ言葉

「漁夫の利」に直接的な対義語は存在しません。

しかし、争いによって第三者に利を与えてしまう状況とは逆に、互いに協力し合うことを示す言葉は、反対の状況を表すと言えます。

  • 協力:力を合わせて物事を行うこと。
  • 協調:互いに助け合い、譲り合って物事を進めること。

英語での類似表現 – 争いと利益

  • When two dogs fight for a bone, the third runs away with it.
    直訳:二匹の犬が骨をめぐって争っているとき、三匹目がそれを奪って逃げる。
    意味:「漁夫の利」と非常によく似た状況を表す英語のことわざです。二者が争っている間に第三者が利益を得ることを指します。
  • Two dogs strive for a bone, and a third runs away with it.
    意味:上記と同様の意味を持つ、少し異なる言い回しです。

使用上の注意点 – 状況描写としての使い方

「漁夫の利」は、特定の状況を客観的に描写する言葉として使われることが多いです。
ただし、文脈によっては争っている当事者を「愚かだ」「視野が狭い」と批判するニュアンスや、利益を得た第三者を「抜け目がない」「ずる賢い」と評するニュアンスを含むことがあります。
誰かを直接非難する意図がない場合でも、そのように受け取られる可能性を考慮しておくとよいでしょう。

まとめ

「漁夫の利」とは、二つの勢力が互いに争っている隙に、全く別の第三者が労せずして利益を手にする状況を指すことわざです。

当事者同士が無益な争いを続けることで消耗し、結局は関係のない誰かに有利な状況を作り出してしまう。
この言葉は、そうした状況への戒めとして、私たちに内輪揉めの愚かさや、時には協力や協調がいかに大切かを気づかせてくれます。

ビジネス上の競争から日常の人間関係に至るまで、様々な場面で応用できる、深く考えさせられる教訓を含んだ言葉と言えるでしょう。

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