「小心翼々」の意味
「小心翼々」とは、「気が非常に小さく、常にびくびくとして怯えているさま」を意味します。
度胸がなく、些細なことでも過度に心配したり恐れたりする様子を表します。
非常に慎重であるとも言えますが、多くの場合、その慎重さが度を越して臆病に見える、といったニュアンスで使われます。
「小心翼々」の語源 – 古典に由来する表現
この言葉の背景には、「戦々恐々」と同じく、中国の古典『詩経』の一節があります。
「戦戦兢兢、深淵に臨むが如く、薄氷を履むが如し」という、深い淵や薄い氷の上にいるかのように恐れ慎む様子を表した部分です。
- 小心(しょうしん):文字通り、気が小さいこと、臆病なことを指します。
- 翼翼(よくよく):「翼」には、鳥の翼のように左右対称に整然と並ぶという意味合いから、元々は敬虔で慎み深い様子を表す意味がありました。しかし、「小心」と結びつくことで、ここでは「びくびくする様子」「過度に慎重な様子」を強調する働きになっています。
つまり、「小心翼々」は、気が小さいだけでなく、その態度が常に恐れや過度の慎重さとして現れている状態を指す言葉と言えます。
「小心翼々」が使われる場面と例文
「小心翼々」は、主に人の性格や、特定の状況下での態度を表すのに用いられます。多くの場合、やや否定的なニュアンスで使われます。
- 性格描写:非常に気が小さく、いつも何かに怯えているような人を指して言う。
- 行動や態度の描写:新しいことに挑戦するのをためらう、人前で発言できない、常に最悪の事態ばかり考えてしまう、といった様子。
- 過度な慎重さへの皮肉:石橋を叩いても渡らないような、あまりにも慎重すぎる態度を揶揄して使うこともあります。
例文
- 「彼は小心翼々とした性格で、なかなか自分の意見を言えない。」
- 「彼女は小心翼々として、新しい環境に馴染むのに時間がかかった。」
- 「彼の小心翼々ぶりは、時に周りをいらだたせることもある。」
「小心翼々」の類義語
「小心翼々」と似た、気が小さく臆病な様子を表す言葉です。
- 戦々恐々(せんせんきょうきょう):恐れてびくびくするさま。具体的な恐怖の対象がある場合に使われやすい。
- 気が小さい:度胸がなく、些細なことを気にする性質。日常的によく使われる表現。
- 臆病:わずかなことにも怖気づくこと。
- 引っ込み思案:自分から積極的に前に出ようとせず、ためらいがちな性格。
- 石橋を叩いて渡る:極めて用心深いことのたとえ。慎重さが度を越している様子。
「小心翼々」の対義語
「小心翼々」とは反対に、気が大きく大胆であったり、物事を恐れなかったりする様子を表す言葉です。「豪放磊落」などがこれにあたります。
- 豪放磊落(ごうほうらいらく):気が大きく、小さなことにこだわらないさま。
- 大胆不敵(だいたんふてき):度胸があって、物事を全く恐れないさま。
- 勇猛果敢(ゆうもうかかん):勇ましくて力強く、決断力に富んでいるさま。
- 天衣無縫(てんいむほう):飾り気がなく自然で、無邪気なさま。恐れやためらいがない様子。
- 傍若無人(ぼうじゃくぶじん):周りの人を無視して、自分勝手に振る舞うさま。(良い意味ではないが、小心とは対極にある態度)
「小心翼々」の英語での類似表現
英語で「小心翼々」のような、気が小さく臆病な様子を表すには、以下のような表現があります。
- timid
意味:臆病な、気の弱い、内気な。 - faint-hearted
意味:気の弱い、臆病な、勇気のない。 - overly cautious
意味:用心深すぎる、慎重すぎる。 - chicken-hearted
意味:臆病な、意気地のない。(やや口語的で、侮蔑的な響きを持つことがある) - timorous
意味:おびえた、臆病な、自信のない。
まとめ – 度を越した慎重さ
「小心翼々」は、気が非常に小さく、いつもびくびくとしている様子を表す四字熟語です。『詩経』に由来する言葉で、過度な慎重さや臆病さを指します。
多くの場合、やや否定的な意味合いで使われますが、見方を変えれば「非常に慎重でリスクを避ける」性格とも言えます。
ただし、この言葉を使う際は、相手を不快にさせないよう、文脈や状況に配慮する必要があるでしょう。
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