竹を割る時、最初の節に切れ目を入れると、あとは力を入れなくてもパカーンと一気に割れていきますよね。
あの小気味よい様子を思い浮かべてみてください。
「破竹(はちく)の勢い」という言葉は、まさにその竹を割る様子から生まれた、非常に勢いのある状態を表す表現です。
今回は、この「破竹の勢い」という言葉がどのような意味で使われ、どんな由来を持っているのか、そして関連する言葉などについて詳しく解説していきます。
「破竹の勢い」の意味・教訓
「破竹の勢い」とは、竹が容易に、一気に割れるように、物事が非常な速さで進むこと、また、その勢いが激しくて誰にも止められないさまを意味します。
止めようとしても止められないほどの猛烈な勢いで進撃したり、成長したりする様子を指します。多くの場合、連戦連勝の快進撃や、急激な発展・成功など、ポジティブな状況を表すのに用いられます。
この言葉には、一度勢いがつけば、あとは流れに乗って突き進むことができる、という状況や、その勢いの力強さ、爽快感といったニュアンスが含まれています。
「破竹の勢い」の語源 – 中国・晋の武将の故事
この言葉の語源は、中国の歴史書『晋書』に記された故事です。
晋(しん)の武将・杜預が、敵国・呉を攻めた際、
「今の我が軍の勢いは、まさに竹を割るようだ。
最初の数節を割れば、あとは刃に応じて自然に割れていく」と述べ、進撃を続けて呉を滅ぼしました。
この故事から、「破竹の勢い」は、止められないほどの猛烈な勢いを表す言葉として使われるようになりました。
「破竹の勢い」が使われる場面と例文
この慣用句は、現代でも様々な場面で、止められない勢いを表現する際に使われます。
- スポーツで、チームが連勝街道を突き進んでいる時
- 新興企業が急成長を遂げている様子
- 選挙戦で、ある候補者が圧倒的な優位を保って支持を広げている状況
- 新商品が大ヒットし、驚異的な売れ行きを見せている時
例文
- 「その高校野球チームは、破竹の勢いで勝ち進み、ついに甲子園出場を決めた。」
- 「我が社は今、破竹の勢いで海外市場を開拓している。」
- 「彼はデビュー以来、破竹の勢いでスターダムにのし上がった。」
- 「SNSで話題になったその商品は、破竹の勢いで売上を伸ばしている。」
「破竹の勢い」の類義語・関連語
「破竹の勢い」と似た意味を持つ言葉や、関連する表現を見てみましょう。
- 飛ぶ鳥を落とす勢い:非常に勢いが盛んなさま。特に、権力や人気が絶頂にある様子を指すことが多い。「破竹の勢い」は進行中の勢いを強調する。
- 日の出の勢い:朝日が昇るように、これからますます盛んになろうとする勢い。将来性や発展途上のニュアンスが強い。
- 快進撃:妨げられることなく、気持ちよく進撃すること。連続した成功や勝利。「破竹の勢い」がもたらす結果とも言える。
- 獅子奮迅(ししふんじん):獅子が奮い立つように、激しい勢いで奮闘すること。「破竹の勢い」が進むスピードや止められなさに焦点があるのに対し、「獅子奮迅」は活動の激しさや勇ましさも表す。
- 旭日昇天の勢い(きょくじつしょうてんのいきおい):朝日が勢いよく天に昇るような、極めて盛んな勢いのこと。「日の出の勢い」とほぼ同じ意味。
- 猛進:激しい勢いで進むこと。
- 急成長:短期間で急速に成長すること。
「破竹の勢い」の対義語
反対の意味を持つ言葉としては、以下のようなものが考えられます。
- 竜頭蛇尾(りゅうとうだび):初めは勢いが良いが、終わりには振るわなくなること。「破竹の勢い」とは逆に、勢いが持続しないさま。
- 尻すぼみ:終わりの方になるにつれて、勢いが衰えたり、規模が小さくなったりすること。
- 停滞(ていたい):物事が順調に進まず、とどこおっている状態。勢いが失われているさま。
- 劣勢(れっせい):勢いや形勢が相手よりも劣っていること。
- 守勢(しゅせい):守りの態勢。攻め進む「破竹の勢い」とは逆の状態。
これらの言葉は、「破竹の勢い」が示す「止められない進撃」や「盛んな勢い」とは対照的な状況を表します。
「破竹の勢い」の英語での類似表現
英語で「破竹の勢い」のニュアンスに近い表現を探してみましょう。止められない勢いや好調さを表す言い回しがあります。
- Like wildfire.
- 意味:「山火事のように」。物事が非常に速い勢いで広まったり、進んだりする様子を表します。
- An irresistible force.
- 意味:抵抗できない力、止められない力。まさに「破竹の勢い」の止められない側面を表します。
- On a roll.
- 意味:(幸運や成功が)続いている、波に乗っている、絶好調である。連続した成功を表す口語的な表現です。
- Gain momentum.
- 意味:勢いを得る、弾みがつく。勢いが増していく過程を表します。
- Like splitting bamboo.
- 意味:「竹を割るように」。故事を知っている相手であれば意味が通じる可能性もありますが、一般的な表現ではありません。
これらの表現は、「破竹の勢い」が持つ、止められない進行や好調さを伝えることができます。
まとめ – 勢いに乗って突き進む力
「破竹の勢い」は、故事に由来する言葉であり、竹が一気に割れる様子に例えて、止められないほどの猛烈な勢いを表現します。スポーツの連勝、ビジネスの急成長など、様々な場面で使われる、力強くポジティブなイメージを持つ言葉です。
この言葉は、物事を前に進める上で「勢い」がいかに重要であるかを示唆しています。一度流れをつかめば、困難をものともせずに突き進むことができる。そんな力強さと爽快感を、「破竹の勢い」という言葉は私たちに感じさせてくれます。目標に向かって突き進む時、この故事と勢いを心に留めておくと、さらに力が湧いてくるかもしれませんね。
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