「虎視眈々」の意味・教訓 – 獲物を狙う虎の眼差し
「虎視眈々」とは、虎が獲物を鋭い目つきでじっと見つめ、狙っているように、機会をうかがって静かに形勢を見守っているさまを表す四字熟語です。
まさに、獲物に飛びかかる直前の虎のような、油断なく隙をうかがい、目的を達成しようと鋭く状況を見つめる様子を指します。
多くの場合、権力や地位、利益などを得ようと、相手の隙や弱点をじっと狙っている、といった少しネガティブで警戒すべき状況で使われます。
この言葉は、目標達成への強い意志や執念を感じさせると同時に、油断すれば付け入られるかもしれないという緊張感をも示唆しています。
「虎視眈々」の語源 – 『易経』に見る鋭い視線
「虎視眈々」は、「虎視」と「眈々」から成ります。
- 虎視(こし):虎が獲物を狙う鋭い視線や、隙をうかがう態度。
- 眈々(たんたん):じっと見つめる、鋭く見下ろす様子。「眈」が見つめる意。
この言葉の出典は、古代中国の書物『易経(えききょう)』です。
そこには「虎視眈眈」という表現が、「虎が獲物を狙うようにじっと見つめ、欲望が尽きない」といった意味で使われています。
元々は貪欲さへの戒めでしたが、後に広く「機会を鋭く狙う様子」を指すようになりました。
「虎視眈々」の使用される場面と例文
「虎視眈々」は、競争相手やライバルが、こちらの隙やチャンスをじっとうかがっているような状況でよく使われます。
ビジネス、政治、スポーツなど、様々な競争場面で登場する言葉です。
- 企業間の競争(例:シェアの奪取、新市場への参入機会)
- 組織内の権力争いや出世競争
- スポーツでの対戦相手の分析や隙の探求
- 領土や権利などをめぐる国家間の対立
このように、目的達成のために機会を狙い、油断なく状況を見守っている様子を表す際に用いられ、多くの場合、見られている側にとっては警戒すべき状況を示します。
例文
- 「ライバル企業は、我が社の新製品発売の失敗を虎視眈々と狙っている。」
- 「彼は社長のポストを虎視眈々とうかがっているという噂だ。」
- 「試合中、相手チームはこちらの守備の穴を虎視眈々と探していた。」
- 「隣国は、領土問題をめぐり、虎視眈々と機会をうかがっている。」
「虎視眈々」の類義語
- 隙をうかがう:相手の油断や弱点を見つけて、付け入る機会を待つこと。
- 機会を狙う:目的を達成するためのちょうど良い時機を待ち構えること。
- 手ぐすねを引く:弓に弦を張り矢を番(つが)えて待つ意から、準備を整えて待ち構えるさま。
- 油断なく:少しも気を許さず、注意を払っているさま。
- 目光炯炯(もっこうけいけい):眼光が鋭く光るさま。強い意志や集中力を感じさせる視線。
「虎視眈々」の対義語
「虎視眈々」が機会を鋭く狙い、警戒している状態を表すのに対し、以下のような言葉が対照的な意味合いを持ちます。
- 無警戒:危険や攻撃に対する備えや注意をしていないこと。
- 無防備:防御する備えがないこと。
- 油断:注意を怠ること。気を抜いている状態。
- 放心:他の物事に心を奪われて、ぼんやりしていること。
「虎視眈々」の英語での類似表現 – Watching Vigilantly
- watch vigilantly (like a tiger eyeing its prey)
意味:(虎が獲物を狙うように)油断なく見守る。 - keep a watchful eye on
意味:~から目を離さない、~を油断なく監視する。 - wait for one’s chance / bide one’s time
意味:機会を待つ、好機をうかがう。 - glare like a tiger
意味:虎のように睨みつける。鋭い視線を表します。
「虎視眈々」のまとめ
「虎視眈々」とは、虎が獲物を狙うように、鋭い目つきでじっと機会をうかがっている様子を表す四字熟語です。
「虎視」は虎の鋭い視線、「眈々」はじっと見つめるさまを意味し、その由来は中国の古典『易経』に遡ります。
この言葉には、目標達成への強い意志と、油断なく状況を見極める鋭敏さが感じられます。
同時に、狙われている側にとっては、いつ攻撃されるか分からないという緊張感や警戒心をもたらす言葉でもありますね。
静かに、しかし確実に機会を狙うその姿は、私たちに油断大敵であることを教えてくれるのかもしれません。
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