「一文惜しみの百知らず」の意味・語源・由来
意味
「一文惜しみの百知らず」とは、わずかなお金を出し惜しみすることで、かえって大きな損をしてしまうことのたとえです。
目先の利益にとらわれ、大局的な判断ができない愚かさを戒める言葉です。
小さなことをケチることで、結果的に大きな利益を逃してしまうことを意味します。
「小利大損」「小を惜しんで大を失う」とも言い換えられます。
語源・由来
「一文」は、江戸時代に使われていた貨幣の単位で、わずかな金額のたとえです。
このことわざは、具体的なエピソードに基づくものではなく、古くからの教訓として言い伝えられてきました。
わずかな出費を惜しんだばかりに、より大きな価値を持つものを失うという、普遍的な人間の心理を突いています。
「一文惜しみの百知らず」の使い方(例文)
- 「無料のサンプルで済ませようとしたら、商品の良さが分からず、結局購入を見送ってしまった。まさに一文惜しみの百知らずだ。」
- 「交通費をケチって古い地図を頼りにしたら、道に迷って約束の時間に大幅に遅刻。一文惜しみの百知らずとはこのことだ。」
- 「安い工具を買ったらすぐに壊れてしまい、結局高い工具を買い直す羽目に。一文惜しみの百知らずだった。」
- 「少しの投資を惜しんで、大きなビジネスチャンスを逃してしまった。まさに、一文惜しみの百知らずだ。」
- 「保険料を出し渋って、万が一の事態に備えなかった結果、多額の医療費を支払うことになった。一文惜しみの百知らずを痛感した。」
注意! 間違った使い方
- 「彼はいつも高級ブランド品ばかり買っている。一文惜しみの百知らずだね。」(✕ 誤用)
※ この場合は、単に浪費家であるだけで、「わずかな出費を惜しんで大損をする」という本来の意味とは異なります。
「一文惜しみの百知らず」の類義語
- 小利大損(しょうりだいそん):小さな利益を得ようとして、大きな損をする。
- 小を惜しんで大を失う(しょうをおしんでだい(たい)をうしなう):小さなものにこだわり、大きなものを失う。
- 安物買いの銭失い(やすものがいのぜにうしない):安いものを買って、結局は損をする。
- 吝嗇は泥棒の基(りんしょくはどろぼうのもとい):ケチすぎると悪い結果を招く。
(※過度な倹約が悪影響を及ぼすという意味では共通点がある)
「一文惜しみの百知らず」の対義語
- 損して得取れ:一時的な損はしても、最終的には利益を得るように行動すること。
- 先んずれば人を制す:人より先に行動すれば、有利な立場に立てること。
- 急がば回れ:急ぐときほど、安全で確実な方法を選ぶべきであること。
使用上の注意点
このことわざは単に『ケチになるな』という意味ではなく、短期的な節約が長期的な損失につながる可能性があるという警告です。
すべての出費を惜しむのではなく、何が本当に価値のある投資なのかを見極めることが重要です。
「一文惜しみの百知らず」に類似した英語表現
Penny wise and pound foolish.
直訳:ペニーに賢く、ポンドに愚か
意味:小銭を節約することに熱心で、大金を無駄にする。
この表現は、18世紀のイギリスで使われ始めたとされ、イギリスの貨幣単位「ペニー(penny)」と「ポンド(pound)」を使った言葉遊びになっている。
類似の英語表現として、“Save a penny, lose a pound”(1ペニーを節約して1ポンドを失う)もある。
ちなみに、1ポンド = 100ペンス(ペニーの複数形)です。
例文:
He saved money by buying cheap tools, but they broke quickly, and he had to buy better ones. He was penny wise and pound foolish.
(彼は安い道具を買って節約したが、すぐに壊れてしまい、もっと良いものを買わなければならなかった。彼は一文惜しみの百知らずだった。)
まとめ
「一文惜しみの百知らず」は、目先の小さな利益にとらわれず、長期的な視点で物事を判断することの重要性を教えてくれることわざです。
「損して得取れ」の精神で、必要な投資は惜しまず、将来の大きな利益につなげることが大切です。
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