意味
「先んずれば人を制す」とは、他人よりも先に物事を始めれば、有利な立場に立ち、相手を抑えることができるという意味のことわざです。
先手必勝の考え方を示しています。
語源・由来
「先んずれば人を制す」の由来は、古代中国の歴史書『史記』の「項羽本紀」にある以下の言葉だとされています。
「先ずれば即ち人を制し、後るれば則ち人に制せらる」(先即制人、後則人制)
これは、項羽の叔父である項梁(こうりょう)が、反乱を計画している際に、先に兵を挙げたほうが有利であると主張した言葉です。
この言葉が「先んずれば人を制す」の元になったと言われています。
※正確な初出は不明です。
使用される場面と例文
「先んずれば人を制す」は、ビジネス、スポーツ、競争、交渉など、さまざまな場面で、先に行動することの重要性を示すために使われます。
特に、競争相手がいる状況で、優位に立つための戦略として用いられます。
例文
- 「新製品の開発競争では、先んずれば人を制すの精神が重要だ。」
- 「営業活動では、先んずれば人を制す。
競合他社よりも先に顧客にアプローチしよう。」 - 「スポーツの世界では、先んずれば人を制すことが多い。
試合の序盤でリードを奪うことが大切だ。」 - 「交渉の場では、先んずれば人を制すこともある。
最初に提案をすることで、主導権を握れる可能性がある。」
注意点(避けるべき使い方)
- 準備不足のまま先走る場合
「先んずれば人を制す」は、単に早く行動すれば良いという意味ではありません。
十分な準備や戦略なしに先走ると、かえって失敗する可能性があります。 - 相手の出方を見るべき場合
状況によっては、相手の出方を見てから行動した方が有利な場合もあります。
「先んずれば人を制す」に固執しすぎると、柔軟な対応ができなくなる可能性があります。
類義語
- 先手必勝:先に攻撃を仕掛ければ必ず勝つこと。
- 先制攻撃:相手よりも先に攻撃すること。
- 先手を打つ:相手よりも先に手を打つこと。
- 先駆け:他に先んじて物事をすること。
- 出し抜く:相手より先に何かをして、優位に立つこと。
関連する戦略の概念
- 先行者利益:市場に最初に参入した企業が、後発の企業よりも優位に立てること。
対義語
- 後手に回る(ごてにまわる):相手に先を越されて、受け身の立場になること。
- 後れを取る(おくれをとる):相手に先を越されること。
- 遅れ馳せながら(おくればせながら):手遅れになってから、ようやく行動すること。
- 機を見るに敏(きをみるにびん):状況の変化を素早く察知し、適切な行動を取ること。
- 急いては事を仕損じる(せいてはことをしそんじる):焦って行動すると、失敗する可能性が高いこと。
英語表現(類似の表現)
- The early bird catches the worm.
直訳:早起きの鳥は虫を捕まえる。
意味:人より早く行動することで、利益を得られる。 - He who strikes first wins.
意味:最初に攻撃した者が勝つ。 - First-mover advantage.
意味:先行者利益。
まとめ
「先んずれば人を制す」は、他人よりも先に物事を始めることの重要性を示すことわざです。
ビジネス、スポーツ、交渉など、さまざまな競争の場面で、優位に立つための戦略として用いられます。
ただし、「先んずれば人を制す」は、状況によっては必ずしも最善の策とは限りません。
準備を怠らず、状況をよく見極めた上で、この言葉を活かすことが大切です。
時には、対義語である「機を見るに敏」であることも重要でしょう。
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