残り物には福がある

ことわざ
残り物には福がある(のこりものにはふくがある)
異形:余り物に福がある

12文字の言葉」から始まる言葉
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たくさんの選択肢がある中で、あえて最後に残ったものを選ぶ。そんな時、周りからは少し不思議に思われるかもしれません。しかし、「残り物には福がある」ということわざは、そんな控えめな選択にこそ、思わぬ幸運が宿っている可能性を示唆しています。

今回は、この日本的な奥ゆかしさも感じさせることわざの意味や背景、使い方、そして関連する表現について見ていきましょう。

「残り物には福がある」の意味・教訓

「残り物には福がある」とは、他の人が取らなかったり、誰も手を付けなかったりしたものの中に、思いがけず良いものや幸運が残されていることがある、という意味のことわざです。

この言葉は、欲張って先を争うのではなく、控えめな態度でいたり、最後に残ったものを選んだりすることが、かえって良い結果につながる可能性があることを教えています。

また、一見価値がないように見えるものや、人気がないものの中にも、実は素晴らしい価値が隠れていることがある、という視点も示唆しています。

「残り物には福がある」の語源・由来

このことわざの正確な起源は定かではありませんが、その背景には日本の伝統的な価値観が影響していると考えられています。

日本では古くから、我先に利益を求めるのではなく、他人に譲ったり、遠慮したりする控えめな態度が美徳の一つとされてきました。人と争わず、最後に残ったものに満足する姿勢が、結果的に争いを避け、円満な関係を保ち、さらには予期せぬ幸運(福)を呼び込むと考えられたのかもしれません。

また、七福神の一柱で、日本の神様である恵比寿様が、船団の最後尾を守って福をもたらす役割を担っていたことから、「最後に福が来る」という信仰と結びつけて考えられることもあります。

恵比寿様
恵比寿様

「残り物には福がある」が使われる場面と例文

このことわざは、物を選ぶ場面や、控えめな態度を勧めたり、意外な幸運があったりした状況などで使われます。

  • 複数の選択肢から、あえて最後に残ったものを選ぶ時
  • 競争を避け、欲張らない姿勢を良しとする時
  • 人気がないと思っていたものが、実は価値があったと分かった時
  • 遠慮した結果、かえって良いものを得られた時

例文

  • くじ引きで最後まで残っていた券を引いたら一等賞!まさに残り物には福があるだね。
  • みんなが敬遠していた仕事を引き受けたら、意外な経験ができて評価もされた。残り物には福があるかもしれない。
  • 就職活動で最後まで内定が出なかった会社が、実は自分にぴったりの職場だった。残り物には福があるって本当だ。
  • 誰も注文しない隅の席を選んだら、窓からの景色が一番きれいだった。残り物には福があるな。

「残り物には福がある」の類義語・関連語

控えめな態度や、意外なところにある価値を示す、似た意味を持つ言葉や関連する表現です。

  • 余り物に福がある(あまりものにはふくがある):「残り物には福がある」と全く同じ意味。
  • 謙譲(けんじょう):へりくだって、他人にゆずること。控えめな態度。
  • 遠慮(えんりょ):言動を控えめにすること。辞退すること。

「残り物には福がある」の対義語

先に手に入れることの有利さや、積極的な行動を良しとする言葉です。

  • 先んずれば人を制す:何事も人より先に行えば、有利な立場に立てるということ。
  • 早い者勝ち:人より先に手に入れた者が、そのものを得る権利を持つということ。

これらの言葉は、「残り物には福がある」が示す控えめさとは対照的に、積極性やスピードを重視する考え方を表します。

「残り物には福がある」を使う上での注意点

「残り物には福がある」は、心構えや価値観を示す言葉であり、必ずしも「最後に残ったものが物理的に良いものだ」と保証するものではありません

  • 状況による判断:時には「早い者勝ち」や「先んずれば人を制す」が適切な場面もあります。状況に応じて判断することが大切です。
  • 押し付けは禁物:人が明らかに嫌がっているものや、価値のないものを押し付ける際に、このことわざを使うのは不適切です。あくまで、自分がどう捉えるか、という側面が強い言葉です。
  • 控えめさの価値:このことわざの本質は、欲張らない控えめな心や、見過ごされがちなものにも価値を見出す視点にある、と理解すると良いでしょう。

「残り物には福がある」の英語での類似表現

英語にも、待つことや最後に残ったものに価値がある、というニュアンスを含む表現があります。

  • Good things come to those who wait.
    • 意味:「待つ人には良いことが訪れる」。忍耐強く待つこと、焦らないことの重要性を示します。控えめな姿勢が報われるという点で似ています。
    • 例文:I know you’re impatient, but good things come to those who wait. (焦る気持ちも分かるけど、待つ人に良いことが訪れるものだよ。)
  • The last shall be first.
    • 意味:「最後が最初になる」。新約聖書に由来する言葉で、今は恵まれない立場の人も、いずれ報われる時が来る、という逆転の可能性を示します。「最後に福がある」という点に通じます。
    • 例文:Don’t be discouraged if you’re not picked first. Remember, the last shall be first. (最初に選ばれなくても落胆しないで。最後に来る者が最初になるのだから。)
  • Last but not least.
    • 意味:「最後だが、重要さにおいて劣らない」。列挙する際の最後の項目について、それが他の項目と同様に重要であることを示す表現。「残り物」にも価値がある、という考え方に通じます。
    • 例文:And last but not least, I’d like to thank our team. (そして最後に、チームのみんなに感謝します。)

まとめ – 控えめな心が生む、思いがけない幸運

「残り物には福がある」は、欲張らず控えめな姿勢でいることや、人が見過ごしがちなものにも価値を見出すことの大切さを教えてくれることわざです。

競争が激しい現代では、「早い者勝ち」の考え方が主流になりがちですが、時には一歩引いてみたり、最後に残ったものに目を向けたりすることで、かえって心の余裕が生まれ、思いがけない幸運に出会えることがあるかもしれません。
このことわざは、そんな人生の機微(きび)を、奥ゆかしく伝えているようです。

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