「良薬は口に苦し」の意味・語源・由来
意味
良薬は口に苦しとは、身のためになる忠告や教訓は、耳に痛いものであるという例えです。
よく効く薬が苦くて飲みにくいように、自分の欠点を指摘したり、改善を促したりするような言葉は、素直に受け入れがたいものです。
しかし、そうした耳の痛い言葉こそ、自分を成長させてくれるものであるという教えが込められています。
また、目先の利益や快楽よりも、将来的に大きな利益をもたらすものを選んだ方が良いという意味で用いられることもあります。
語源・由来
このことわざは、中国の古い書物に由来しています。
古代中国の歴史書である『史記』や『孔子家語(こうしけご)』などに、「良薬は口に苦けれども病に利あり、忠言は耳に逆らえども行いに利あり(良薬は、飲めば苦いが病気を治すのに役立ち、忠告の言葉は、聞くのはつらいが行いのために役立つ)」という記述があります。
これが「良薬は口に苦し」の元となった言葉だと考えられています。
昔の薬は、現代のように飲みやすく加工されておらず、非常に苦いものが多かったのでしょう。
そうした苦い薬を飲む経験から、本当に効果のあるものは苦い、つまり、自分にとって耳の痛い言葉は、実は自分を成長させてくれるものだという教訓が生まれたのです。
「良薬は口に苦し」の使い方(例文)
- 上司からの厳しい指摘は、まさに「良薬は口に苦し」だった。 おかげで自分の欠点に気づくことができた。
- 「良薬は口に苦し」というように、親の小言はありがたいものだ。
- 彼の助言は耳が痛かったが、「良薬は口に苦し」と自分に言い聞かせ、素直に聞き入れることにした。
- 先生の言葉は厳しいけれど、「良薬は口に苦し」と思って、しっかり受け止めよう。
- 「良薬は口に苦し」とは言うけれど、あまりにも批判ばかりされると、モチベーションが下がってしまう。
- 「良薬は口に苦し」というように、この苦しい経験が将来きっと役に立つはずだ。
注意! 間違った使い方
- 彼は甘いものばかり食べている。「良薬は口に苦し」とは、まさに彼の食生活のことだ。
(✕ 誤用)
※「良薬は口に苦し」は、耳の痛い忠告を指すので、甘いものの過剰摂取を非難する際には不適切。
「良薬は口に苦し」の文学作品などの用例
世の嘲りを顧みず、たゞ我執のまゝに筆を執るは、心の鬼の責むる所、苦にして苦し。 されど仏云ふ、「良薬は口に苦し」と。
(上田秋成『雨月物語』)
「良薬は口に苦し」の類義語
- 忠言耳に逆らう(ちゅうげんみみにさからう):真に自分のためを思って忠告してくれる人の言葉は、素直に受け入れがたいものであるということ。
- 苦言を呈する(くげんをていする):相手のためを思って、あえて厳しい意見を述べること。
- 獅子は我が子を千尋の谷に落とす(ししはわがこをせんじんのたににおとす):自分の子に苦難を与え、その才能を試すこと。また、我が子に敢えて試練を与え、鍛えること。
「良薬は口に苦し」の対義語
- 甘言は口に甘し(かんげんはくちにあまし):甘い言葉には、裏がある場合がある。
- 口蜜腹剣(こうみつふっけん):口ではうまいことを言いながら、心の中で害をなそうとするたくらみがあること。口先は甘く親切そうだが、心の中では険悪で陰険なことのたとえ。
使用上の注意点
「良薬は口に苦し」は、相手の成長を願って、あえて厳しい言葉をかける際に用いられます。
しかし、単なる批判や、相手を傷つけるだけの言葉は、「良薬」とは言えません。
相手の立場や気持ちを考え、適切なタイミングと言葉を選ぶことが大切です。 また、相手がアドバイスを求めていない場合にこの言葉を使うと、押しつけがましく聞こえる可能性があるので注意が必要です。
「良薬は口に苦し」の英語表現
Good medicine tastes bitter.
(良い薬は苦い味がする)という意味。
例文: I know it’s hard to hear criticism, but remember, good medicine tastes bitter.
(批判を聞くのはつらいことだけど、良薬は口に苦しだよ。)
Advice most needed is least heeded.
(最も必要とされる忠告は、最も聞き入れられない)という意味。
例文: He didn’t listen to my warning, proving that advice most needed is least heeded.
(彼は私の警告を聞き入れなかった。 最も必要とされる忠告は、最も聞き入れられないということを証明している。)
The truth hurts.
(真実は痛い)という意味。
例文: I know the truth hurts, but you need to hear it.
(真実が痛いのはわかるけど、君はそれを聞く必要がある。)
まとめ
「良薬は口に苦し」とは、身のためになる忠告や教訓は、耳に痛いものであるという例えです。
このことわざは、苦い薬が病気に効くように、耳の痛い言葉こそが自分を成長させてくれるという教えを伝えています。
自分の欠点を指摘されたり、厳しい意見を言われたりした時は、感情的にならずに、まずは冷静に受け止めることが大切です。
そして、その言葉の中に、自分を成長させるヒントがないか、考えてみましょう。
「良薬は口に苦し」という言葉を胸に、素直な心を持って、成長していきたいものです。
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