意味・教訓
「働かざる者食うべからず」とは、労働をしない者は食事をする資格がない、という意味の言葉です。
社会の一員として、働くことの重要性、義務、そして、それによって得られる対価(食事)の価値を説いています。
この言葉は、単に怠惰を戒めるだけでなく、労働を通じて社会に貢献することの尊さを教えているとも言えるでしょう。
語源・由来
この言葉の正確な初出は不明ですが、広く知られるようになったのは、新約聖書の「テサロニケ人への第二の手紙」3章10節にある「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」という一節が元になっていると考えられています。
この聖書の言葉は、キリスト教の信仰共同体の中で、労働の重要性を説く文脈で使われました。
その後、社会主義や共産主義の思想においても、この言葉は重要なスローガンとして用いられました。
特に、ソビエト連邦の指導者レーニンは、この言葉を引用し、「働かざる者は食うべからず」を社会主義社会の原則として強調しました。
使用される場面と例文
「働かざる者食うべからず」は、主に以下のような場面で使われます。
- 怠けている人や、働く意欲のない人を戒めるとき。
- 労働の重要性や、社会貢献の必要性を説くとき。
- 自立の精神を養うように促すとき。
例文
- 「学生の本分は勉強だが、アルバイトも社会勉強になる。働かざる者食うべからずの精神で、少しは家計を助けなさい。」
- 「ニート生活も楽じゃない。働かざる者食うべからず、そろそろ仕事を探さないと…。」
- 「働かざる者食うべからずと言うけれど、病気や怪我で働けない人もいることを忘れてはいけない。」
- 「宝くじに当たって大金持ちになったとしても、働かざる者食うべからずの精神は忘れたくないものだ。」
類義語
- 無為徒食(むいとしょく):何も仕事をしないで、ぶらぶらと遊び暮らすこと。
- 怠け者の節句働き(なまけもののせっくばたらき):普段怠けている者が、特定の日(節句などの人が働く日)に限って働くこと。
※「働かざる者食うべからず」が労働の重要性を説くのに対し、こちらは怠け者の行動を揶揄するニュアンスが強いです。 - 不労所得:労働の対価としてではなく、資産運用などによって得る収入。
※これは厳密には類義語ではないが、対比される概念として
対義語
英語表現(類似の表現)
- If a man will not work, he shall not eat.
直訳:もし人が働こうとしないなら、彼は食べてはならない。
意味:働かない者は食べるべきではない。 - No work, no pay.
意味:仕事がなければ、報酬もない。 - He who does not work, neither shall he eat.
意味: 働かざる者食うべからず
使用上の注意点
この言葉は、働くことができない人(病気や障害を持つ人、高齢者、子どもなど)を非難する意味で使うべきではありません。
また、労働の価値は、賃金の額だけで測れるものではないことにも留意が必要です。
ボランティア活動や家事労働など、金銭的な対価を得られなくても、社会的に重要な役割を果たしている労働はたくさんあります。
まとめ
「働かざる者食うべからず」は、労働の大切さや社会への貢献を促す言葉です。
この言葉は、怠惰を戒めるだけでなく、働くことの意義や尊さを伝えています。
ただし、使う際には、働きたくても働けない人への配慮が必要です。
また、労働の価値は必ずしも金銭だけで測れるものではなく、社会や家庭での役割など、多様な形で表れることも忘れてはなりません。
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