私たちの周りには、さまざまな個性や考え方を持つ人々がいます。
現代社会では、こうした「多様性(ダイバーシティ)」を認め合い、尊重し、共に生きていくことの重要性がますます高まっています。
本記事では、「十人十色」「和して同ぜず」など、多様性や個性の尊重、相互理解につながる日本のことわざ、慣用句、四字熟語、故事成語、さらには世界の格言などを集めてご紹介いたします。
もくじ
多様性を表す【四字熟語】
人や物事のあり方がさまざまであることを示す四字熟語。
- 十人十色(じゅうにんといろ):
考え方や好み、性格などが、人それぞれに違うこと。多様性の基本を示す代表的な言葉。 - 三者三様(さんしゃさんよう):
三人の人がいれば、考え方ややり方も三通りあるように、それぞれに異なること。 - 各人各様(かくじんかくよう):
一人ひとり、すべて違うやり方や考え方であること。三者三様と類義。 - 多種多様(たしゅたよう):
種類や性質などが、さまざまであること。多くの異なるものが存在している状態。 - 千差万別(せんさばんべつ):
多くのものが、それぞれ比較できないほどに違っていること。違いの幅広さ。 - 大同小異(だいどうしょうい):
細かい点での違いはあっても、大筋では同じ・似ていること。違いを認めつつ共通点を見出す視点。 - 百花繚乱(ひゃっかりょうらん):
様々な種類の花が色とりどりに咲き乱れること。転じて、多くの優れた才能や業績が一時に現れるさま。多様な個性が花開くイメージ。 - 和而不同(わじふどう):
他者と協調はするが、主体性を失わず安易に同調しないこと。『論語』由来の「和して同ぜず」。多様な意見を尊重する基本姿勢。 - 一視同仁(いっしどうじん):
すべての人を差別なく平等に愛し、同様に扱うこと。多様な人々を公平に遇する精神。 - 適材適所(てきざいてきしょ):
その人の能力や性質に合った地位や任務を与えること。個々の違いや特性を活かす考え方。
多様性・個性の尊重に関連する【ことわざ・慣用句】
好みや価値観、文化の違い、個性の尊重などを示すことわざや慣用句。
- 蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき):
苦い蓼を好んで食べる虫がいるように、人の好みはさまざまで、一概には言えないことのたとえ。価値観の多様性を示す代表例。 - 所変われば品変わる(ところかわればしなかわる):
土地が違えば、習慣や言葉、物の価値なども異なること。文化や地域の多様性の理解。 - 馬には乗ってみよ人には添うてみよ(うまにはのってみよひとにはそうてみよ):
何事も自分で直接経験したり、人と深く付き合ったりしてみなければ、本当のことは分からないということ。見た目や先入観で判断しない大切さ。 - 清濁併せ呑む(せいだくあわせのむ):
善も悪も、清らかなものも濁ったものも、分け隔てなく受け入れる度量の大きさ。様々な側面を持つ人や物事を受け入れる姿勢。
多様性を考えるヒントになる【故事成語・世界の格言】
日本の故事や世界の様々な文化から生まれた、多様性の理解を深める言葉。
- 和して同ぜず(わしてどうぜず):
『論語』より。他者と協調はするが、自分の意見や信念をしっかり持ち、むやみに同調はしないこと。多様な意見が存在する中での主体性の重要性。 - 三人寄れば文殊の知恵(さんにんよればもんじゅのちえ):
平凡な人でも三人集まって相談すれば、知恵の菩薩である文殊菩薩のような良い知恵が出ること。多様な視点や意見が集まることの価値。 - It takes all sorts to make a world.:
「世界は様々な種類の人間から成り立っている」という意味の英語のことわざ。多様性が世界の基本であるという考え方。 - Variety is the spice of life.:
「多様性は人生のスパイス」という意味の英語のことわざ。変化や違いがあるからこそ、人生が面白く豊かになるという価値観。 - 一本の指ではノミはつぶせない(アフリカのことわざ):
一人だけでは困難なことも、多くの人が力を合わせれば成し遂げられるということ。多様な力が協力することの重要性を示す例。
多様性を理解する上で重要なキーワード
多様性(ダイバーシティ)を理解し、それを社会で活かしていくために重要な、基本的な概念や考え方。
- 多様性(たようせい)/ダイバーシティ:
幅広く性質の異なるものが存在すること。
人種・民族・宗教・性別・性的指向・年齢・障害の有無・価値観・働き方などの様々な違いの尊重。 - 包摂(ほうせつ)/インクルージョン:
すべての人が尊重され、その一員として認められ、参加し活躍できる状態や、それを目指す考え方。
多様性を活かすための重要な概念。 - 個性(こせい):
その人(または物)にしかない、固有の性質や特徴。
一人ひとりの違いであり、尊重されるべきもの。 - 共生(きょうせい):
異なる背景や特性を持つ人々が、互いに認め合い、支え合いながら、共に生きていくこと。
多様性社会が目指す姿。 - 相互理解(そうごりかい):
互いの立場や考え方、文化などを理解し合うこと。
多様性を受け入れ、共生するための基盤となる姿勢。 - エクイティ(公平性):
形式的な平等(Equality)だけでなく、個々の状況や必要性に応じた配慮によって、実質的な機会の均等を目指す考え方。 - インターセクショナリティ(交差性):
人種や性別、階級など複数の属性が交差することで生じる、特有の差別や複合的な困難さに着目する視点。 - マイノリティ/マジョリティ:
社会的少数派/多数派。数だけでなく、権力関係の中で相対的に決まることもある概念。
多様性を考える上で注意したい言葉・考え方
多様性を理解し推進する一方で、その対極にある考え方や、無意識のうちに多様性を阻害してしまう可能性のある言葉や概念についても知っておくことが大切です。
ここでは、そうした言葉や考え方を見ていきましょう。
- アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見):
自分自身では気づいていない、ものの見方や捉え方の偏り。意思決定に影響を与え、多様性を阻害する要因となりうるもの。 - ステレオタイプ:
多くの人に浸透している、特定の集団や属性の人々に対する固定的・単純化されたイメージや信念。偏見につながりやすい考え方。 - 色眼鏡で見る(いろめがねでみる):
偏見や先入観を持って物事を見ること。上記のバイアスやステレオタイプに基づく代表的な行為。 - 類は友を呼ぶ(るいはともをよぶ):
性質が似ている者同士は、自然と集まりやすいということ。同質性を好む傾向を示し、多様な交流を妨げる可能性もある考え方。 - 千篇一律(せんぺんいちりつ):
どれもこれも同じようで、個性や変化がないこと。画一性を表す言葉。 - 画一性(かくいつせい):
すべてが同じ様式や性質で、個性や変化がないこと。多様性の対極にある状態。 - 排他性(はいたせい):
特定の仲間以外を排斥し、受け入れない性質や傾向。インクルージョン(包摂)の反対の概念。 - 同調圧力(どうちょうあつりょく):
集団の中で、少数意見を持つ人に対し、多数派に合わせるよう暗黙のうちに強制する力。個性の表現を妨げる要因。 - 差別(さべつ):
特定の属性(人種、性別、宗教など)を理由に、不当に不利益な扱いをすること。多様性を否定する行為。
まとめ
「十人十色」という言葉があるように、私たち一人ひとりが違うのは当たり前のことです。
多様性に関する古今東西の言葉は、その「違い」を認め、尊重し、時にはそれを新たな力に変えていくためのヒントを与えてくれます。
また、画一性や偏見を示す言葉を知ることは、多様性を阻む壁に気づくきっかけにもなるでしょう。
これらの言葉を道しるべに、互いの個性を活かし合える、より豊かな社会を共に築いていきたいですね。
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