「蓼食う虫も好き好き」の意味・語源・由来
意味
人の好みは様々であり、一般的には理解しがたいものでも、それを好む人がいるということを意味します。
「蓼(たで)」とは、辛味のある葉を持つ植物で、一般的には好んで食べるものではありません。
しかし、中にはその辛い蓼を好んで食べる虫もいることから、人の好みも千差万別であることを表しています。
このことわざは、自分の価値観を他人に押し付けず、多様な好みを認めることの重要性を示唆しています。
語源・由来
このことわざの語源は、辛味のある蓼を食べる虫がいるという事実に基づいています。
「蓼」はヤナギタデを指し、その葉は非常に辛みが強いことで知られています。
人間にとっては食用に適さないような辛い蓼でも、それを好んで食べる虫がいる。
このことから、「人の好みや趣味は、他人から見れば理解しがたいものであっても、それぞれに理由があり、尊重されるべきである」という意味が生まれました。
また、「蓼食う虫」は、具体的にはタデオサムシやタデハムシなどの昆虫を指していると考えられます。
このことわざは、江戸時代にはすでに使われていたことが、当時の文献からも確認できます。
「蓼食う虫も好き好き」の使い方(例文)
- あんなに辛い食べ物が好きなんて信じられないけど、蓼食う虫も好き好きって言うしね。
- 彼はいつも変わった料理ばかり食べているけど、蓼食う虫も好き好きってことわざもあるし、個人の自由だよ。
- 彼が選んだ結婚相手は、周囲からは意外に思われたが、蓼食う虫も好き好きだ、幸せならそれでいい。
注意! 間違った使い方
- 彼はいつも遅刻ばかりするけど、蓼食う虫も好き好きだから仕方ないね。
(※人の好みではなく、単なる怠惰な行動に対して使うのは不適切) - あの子は野菜嫌いでいつも怒られているけど、蓼食う虫も好き好きだよね。
(※人の好き嫌いを表したことわざだが、その子の好き嫌い=野菜が食べれないということを表しているわけではないので不適切)
「蓼食う虫も好き好き」の文学作品などの用例
世の中はさまざま、蓼食う虫も好き好きで、人間もいろいろな人間がゐると思ふが、それにしても、あの変つた男は、この自分の眼にさへ、不愉快千万に映つた。
– 太宰治『火の鳥』
「蓼食う虫も好き好き」の類義語
- 十人十色:人それぞれに好みや考え方が異なること。
- 千差万別:一人ひとり、好みや考え方が違っていること。
- 三者三様:三人いれば、三通りの考え方ややり方があること。
- 好みはさまざま:人の好みは多種多様であること。
- 人の意見は西の風(※西風が変わりやすいことから): 人の意見は変わりやすいということ、または、多種多様であること。
「蓼食う虫も好き好き」の対義語
- 右へ倣え:周りの人と同じように行動すること。
- 長い物には巻かれろ:権力や勢力のある人には逆らわず、従っておく方が良いという教え。(※他人に合わせるという点で対照的)
- 出る杭は打たれる:目立つ存在や、人と違ったことをする人は、非難されたり抑圧されたりするということ。
使用上の注意点
「蓼食う虫も好き好き」は、人の好みや価値観の多様性を表すことわざです。
しかし、他人の好みを揶揄したり、自分の好みを正当化したりするために使うのは避けましょう。
あくまでも、個人の自由や多様性を尊重するという文脈で使うことが大切です。
また、社会的に許容されないような行動や、他人に迷惑をかけるような行為に対して使うのは不適切です。
「蓼食う虫も好き好き」の英語表現
There’s no accounting for taste.
直訳:好みを説明することはできない。
意味:人の好みはそれぞれで、理由を説明できない。
例文:
He likes to eat that strange food, but there’s no accounting for taste.
(彼はあの変な食べ物を好んで食べるけど、蓼食う虫も好き好きだね。)
To each his own.
直訳:それぞれにそれぞれのものを。
意味:人それぞれに好みがある。
例文:
I don’t like that kind of music, but to each his own.
(私はその手の音楽は好きじゃないけど、蓼食う虫も好き好きだね。)
Different strokes for different folks.
直訳:人によって違うやり方がある。
意味:人それぞれに好みややり方が異なることを表します。
例文:
You like to stay at home, and I like to travel. Different strokes for different folks.
(あなたは家にいるのが好きで、私は旅行が好き。蓼食う虫も好き好きだね。)
まとめ
「蓼食う虫も好き好き」は、人の好みは多種多様であり、他人が理解できないようなものでも、それを好む人がいるということを表すことわざです。
このことわざは、自分の価値観を他人に押し付けず、多様な好みを認めることの重要性を教えてくれます。
他人の趣味や嗜好を尊重し、寛容な心を持つことが大切であることを、このことわざは示しています。
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