大恩は報ぜず

ことわざ
大恩は報ぜず(だいおんはほうぜず)

9文字の言葉た・だ」から始まる言葉
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意味・教訓

「大恩は報ぜず」とは、受けた大きな恩は、あまりにも大きすぎて、完全に報いることはできないという意味ですが、これは決して「返せないから返さなくて良い」という意味ではありません。むしろ、

  • 返しきれないほどの恩を受けた場合は、小手先の行為で報いようとするのではなく、
  • その恩にふさわしい生き方、例えば、恩義に感じて、その気持ちを胸に刻み、困っている人を助けたり、社会に貢献したりするなど、人として正しく生きること、
  • あるいはその感謝の気持ちを他の人に分け与えること、つまり、自分が受けた恩を、今度は自分が困っている人に手を差し伸べる形で返す「恩送り」をすること、

などで報いるべきだという教訓を含んでいます。自分が受けた恩を直接その人に返すのではなく、別の人に善意を繋いでいくことで、より大きな形で恩に報いることができる、という考え方です。

語源・由来

この言葉の正確な初出は不明です。しかし、「大恩」という概念は、仏教や儒教の影響を強く受けていると考えられます。

  • 仏教:父母の恩、師の恩、国の恩など、さまざまな恩が説かれています。
  • 儒教:親孝行や忠義など、恩を重んじる思想があります。

これらの教えが、日本古来の「恩」の考え方と結びつき、「大恩は報ぜず」という言葉が生まれたと考えられます。

また、武士道においても、「大恩」は重要な概念であり、主君から受けた恩(例えば、領地の拝領や危難を救われたことなど)に対しては、命をかけて尽くすことが当然とされていました。

このような背景から、単なる物質的な返礼ではなく、生き方や行動で恩に報いることの重要性が強調されるようになったと考えられます。

使用される場面と例文

「大恩は報ぜず」は、主に以下のような場面で使用されます。

  • 非常に大きな恩を受けたことを表現したい時。
  • 恩返しをしようとしても、完全に報いることができないと感じる時。
  • 恩を受けた相手に対して、感謝の気持ちを伝えたい時。
  • 恩に報いるために、立派に生きようと決意する時。

例文

  • 「先生には、進路の相談に乗っていただき、本当に感謝しています。大恩は報ぜずとは言いますが、いつか必ず恩返ししたいです。」
  • 「震災の時、隣人に助けてもらった。大恩は報ぜずと言うけれど、このご恩は一生忘れません。」
  • 大恩は報ぜず。先輩から受けた恩は、後輩に伝えることで返していきたい。」
  • 「両親から受けた愛情は、大恩は報ぜずという言葉では言い表せないほど大きいです。」

関連語

  • (おん):他人から受けた感謝すべき行為。
  • 恩返し(おんがえし):受けた恩に対して、感謝の気持ちを表すこと。
  • 報恩(ほうおん):受けた恩に報いること。
  • 恩送り(おんおくり):受けた恩を直接返すのではなく、別の人に送ること。

対義語

  • 恩を仇で返す(おんをあだでかえす):受けた恩に対して、感謝するどころか、害を与えること。

英語表現(類似の表現)

  • Great kindness cannot be repaid.
    直訳:大きな恩は報いることができない。
    意味:このことわざに最も近い意味を持つ英語表現です。
  • One can never fully repay a great debt of gratitude.
    意味:大きな感謝の負債は、完全に返済することはできない。
  • Pay it forward: これは「恩送り」に似た概念で、「誰かから受けた親切を、別の誰かに渡していく」という意味です。
    「大恩は報ぜず」の文脈で使う場合は、「受けた恩を直接返すのではなく、他の人に善意を広めることで間接的に恩に報いる」というニュアンスを伝えることができます。

まとめ

「大恩は報ぜず」は、受けた大きな恩は完全に報いることはできないものの、その感謝の気持ちを胸に刻み、人として正しく生きること、あるいはその恩を他の人に送ることで報いるべきだという教訓を表すことわざです。

この言葉は、「返せないから返さなくて良い」と諦めるのではなく、大きな恩を受けたことへの深い感謝と、それに応えようとする真摯な姿勢、そして、その恩を次へと繋げていくことの大切さを教えてくれます。

人間関係における「恩」の重みと、それに対する向き合い方について、改めて考えさせてくれる、貴重な教訓と言えるでしょう。

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