意味・教訓 – 命令や方針がすぐに変わること
「朝令暮改」とは、朝に出した命令(令)や方針が、夕方(暮)にはもう改められてしまうという意味から、命令や方針、主張などが頻繁に変更され、一定せず、あてにならないことを指す四字熟語です。
せっかく新しい指示に従おうとしたら、すぐにまた違う指示が出る…。
そんな、一貫性がなく、言うことや決まりがころころと変わる状況を表します。
主に、政府の政策や、会社・組織の方針、個人の主張などに対して、批判的な意味合いで用いられます。
この言葉は、朝令暮改が行われると、人々が混乱し、不信感を抱き、物事がうまく進まなくなるという、その弊害を示唆しています。
語源・由来 – 朝の命令、夕方の改定
「朝令暮改」は、その漢字が示す時間の流れと行動から、意味を理解することができます。
- 朝(ちょう):朝、午前中。
- 令(れい):法律、命令、指示。
- 暮(ぼ):夕方、日暮れ時。
- 改(かい):改める、変更する。
つまり、「朝に出された命令(朝令)が、その日の夕方にはもう改められてしまう(暮改)」というのが、文字通りの意味です。
この言葉の由来は、古代中国の歴史書『漢書(かんじょ)』にあるとされています。
前漢の時代、ある役人が、民衆を混乱させるような、頻繁に変わる法令や、思いつきのような政策を批判した際に、この「朝令暮改」という表現が用いられたと言われています。
それ以来、一貫性がなく、あてにならない法令や方針を批判する言葉として使われるようになりました。
使用される場面と例文 – 一貫性のない方針や指示に
「朝令暮改」は、政府や自治体の政策が頻繁に変わる場合、会社の方針や上司の指示がころころと変わる場合、あるいは個人の主張が一貫しない場合など、その場しのぎで一貫性のない変更が繰り返される状況を批判的に表現する際に使われます。
例文
- 「政府の方針が朝令暮改では、国民は何を信じて良いかわからなくなる。」
- 「うちの部署は部長の方針が朝令暮改で、部下はいつも振り回されている。」
- 「彼の言うことは朝令暮改で、全く信用できない。」
- 「計画が朝令暮改されるたびに、現場は混乱するばかりだ。」
類義語 – 似た意味を持つ言葉
- 朝改暮変(ちょうかいぼへん):朝に改めたことを夕方にまた変えること。「朝令暮改」とほぼ同じ意味で使われます。
- 二転三転(にてんさんてん):方針や意見などが、何度も変わること。
変更の頻度や回数の多さを強調します。 - 方針が定まらない(ほうしんがさだまらない):進むべき方向や基本的な考え方が、はっきりと決まっていない状態。
「朝令暮改」が起こる原因の一つとも言えます。 - 言うことが変わる(いうことがかわる):発言内容に一貫性がないこと。
より口語的で、個人の発言の移ろいやすさを指します。
対義語 – 反対の意味を持つ言葉
- 首尾一貫(しゅびいっかん):初め(首)から終わり(尾)まで、一つの方針や態度で貫かれていること。
※ 方針が変わらない、一貫性のある状態を示します。 - 初志貫徹(しょしかんてつ):最初に心に決めた志や目標を、最後まで貫き通すこと。
※ 途中で考えを変えずに、やり遂げる意志の強さを表します。 - 方針が明確(ほうしんがめいかく):進むべき方向や考え方が、はっきりしていること。
※ 曖昧さがなく、安定している状態です。 - 揺るがない(ゆるがない):考えや決意などがしっかりしていて、動じないさま。
※ 外からの影響や状況の変化で、簡単に変わらない様子。
英語での類似表現 – 頻繁で一貫性のない変更
- inconsistent orders / policies
意味:一貫性のない命令/方針。
「朝令暮改」の状態を直接的に説明する表現です。 - frequent changes
意味:頻繁な変更。
変更が多いという事実を指します。 - chopping and changing
意味:方針などを頻繁に変えること。(主にイギリス英語)
絶えず変更を繰り返す様子を表す口語的な表現です。 - fickle policy
意味:気まぐれな政策、変わりやすい方針。
方針が安定せず、信頼できない様子を指します。
使用上の注意点 – 批判的な意味合いを込めて
「朝令暮改」は、命令や方針が一貫せず、すぐに変わってしまうことへの不満や批判を込めて使われる、強い否定的な言葉です。
それによって引き起こされる混乱や不信感を指摘するニュアンスがあります。
計画の変更が全て悪いわけではありませんが、「朝令暮改」と評される状況は、多くの場合、計画性のなさ、熟慮の不足、あるいはその場の思いつきによる変更と見なされます。
使う際には、その批判的な意味合いを理解しておくことが大切です。
まとめ
「朝令暮改」とは、朝に出た命令が夕方にはもう変わっているという状況から、方針や指示が頻繁に変更され、一貫性がなく、あてにならない様子を批判的に表す四字熟語です。
このような状況は、周りの人々を混乱させ、不信感を生み、物事の効率的な進行を妨げます。
この言葉は、私たちに、しっかりとした計画性や、一度決めたことに対する責任感がいかに重要であるかを、反面教師として示しています。
信頼を築き、事を成すためには、一貫した姿勢が求められるということかもしれませんね。
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