危機一髪

四字熟語 故事成語
危機一髪(ききいっぱつ)

6文字の言葉き・ぎ」から始まる言葉
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意味・教訓 – 危険が目前に迫る瀬戸際

「危機一髪」とは、あと少しで非常に危険な事態に陥りそうな、きわどい瀬戸際の状態を意味する四字熟語です。

まるで髪の毛一本ほどのわずかな差で、危険を回避できるかどうかの、極めて切迫した状況を表します。
ハラハラするような、非常に危ない状況や瞬間を指して使われる言葉です。

この言葉からは、常に危険は身近に存在しうること、そして、ほんのわずかな差が大きな結果の違いを生むことがある、といった教訓や状況の緊迫感を読み取ることができます。

語源・由来 – 髪の毛一本で千鈞を引く危うさ

「危機一髪」の語源は、中国・唐代の文人である韓愈(かんゆ)が書いた『与孟尚書書(孟尚書に与うるの書)』にある一節、「其危如一髪引千鈞(そのあやうきこと、いっぱつをもってせんきんをひくがごとし)」に由来するとされています。

  • 危機(きき):危険な時期、あやうい状態。
  • 一髪(いっぱつ):髪の毛一本。ここでは、極めてわずかなこと、非常に危険できわどい状態にあることのたとえ。

「千鈞(せんきん)」とは、古代中国の重さの単位で、「鈞」は約6kg、「千鈞」は約6トン(一説には約18トンとも)にもなる非常に重いものを指します。
つまり、「一髪 千鈞を引く」とは、「髪の毛一本で千鈞もの重いものを引っぱるようなものだ」という意味になり、いつ切れてもおかしくない、極めて危険で不安定な状態を表しています。

この強烈な比喩表現が元になり、「危機一髪」という四字熟語が生まれ、非常に危険な瀬戸際を意味する言葉として定着しました。

使用される場面と例文 – 絶体絶命のピンチを表現

「危機一髪」は、事故に遭いそうな瞬間、試合で負けそうな土壇場、計画が失敗しそうな瀬戸際など、あと一歩で大変なことになる、という緊迫した場面で広く使われます。
ドラマや小説、ニュース報道などで、危険な状況を表現する際にも頻繁に登場します。

例文

  • 「トラックがスリップし、危機一髪のところで歩行者を避けた」
  • 「ダムの決壊は危機一髪のところで食い止められた」
  • 「ゴール前で転倒したが、危機一髪でライバルをかわし優勝した」
  • 「飛行機のエンジンが停止し、まさに危機一髪の状況だった」

類義語

「危機一髪」と似た、危険が迫っている状況を表す言葉はいくつかあります。

  • 間一髪(かんいっぱつ):危険がすぐそこに迫っていること。髪の毛一本ほどのすきま。「危機一髪」とほぼ同義で使われます。
  • すんでのところ:もう少しでそうなるところ。あと一歩のところ。
  • 危ういところ(あやういところ):危険な状態になりそうな瀬戸際。
  • 絶体絶命(ぜったいぜつめい):どうにも逃れる方法がない、切羽詰まった状態。
    ※「危機一髪」が回避できる可能性も含むのに対し、「絶体絶命」はより追い詰められた状況を表すことがあります。
  • 風前の灯火(ふうぜんのともしび):風の前の灯火のように、いつ消えるかわからない危険な状態。命や物事がはかないさま。
  • 薄氷を踏む(はくひょうをふむ):薄い氷の上を歩くように、非常に危険な状況に臨むこと。

関連語

  • 瀬戸際(せとぎわ):成功と失敗、安全と危険などの分かれ目。
  • 土壇場(どたんば):決断や行動を迫られる、ぎりぎりの場面。
  • ピンチ:苦境、危機的な状況。
  • スリル:恐怖感を伴うような、ぞくぞくする面白さや興奮。

対義語 – 安全や安定を示す言葉

「危機一髪」とは反対に、危険がなく安全な状態や、安定している状況を示す言葉には、以下のようなものがあります。

  • 絶対安全(ぜったいあんぜん):危険が全くないこと。
  • 安泰(あんたい):無事でやすらかなこと。変化がなく穏やかなさま。
  • 盤石(ばんじゃく):非常に堅固で、安定しているさま。
  • 万全(ばんぜん):少しの抜かりもなく、完全であること。

英語での類似表現 – 髪の毛一本の差

英語で「危機一髪」の緊迫したニュアンスを表現するには、いくつかの言い方があります。

  • by a hair’s breadth
    直訳:髪の毛一本の幅で。
    意味:間一髪で、すんでのところで。(「一髪」の語源に近い表現です)
  • a close call / a narrow escape
    意味:危機一髪、九死に一生を得ること。
  • in the nick of time
    意味:ちょうど良い時に、ぎりぎりのタイミングで。
  • touch and go
    意味:非常に不安定な状態、どうなるかわからない状況、一触即発

使用上の注意点 – 言葉の重みと適切な使いどころ

「危機一髪」は、非常に危険で切迫した状況を表す強い言葉です。
そのため、大した危険ではない場面で頻繁に使うと、本来の緊迫感が薄れてしまう恐れがあります。

日常会話では、「危機一髪だったよ!」と少し大げさな表現として使うこともありますが、本来の意味は「極めて危険な瀬戸際」です。
特に深刻な状況を伝える際には、より具体的で客観的な表現を選ぶほうが適切な場合もあるでしょう。

まとめ

「危機一髪」は、ほんのわずかな差で極めて危険な状態に陥ることを表す四字熟語です。

この言葉を通じて、わずかな違いが大きな結果を生むことを意識してみるとよいでしょう。

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