「後生大事」の意味・教訓 – 大切に思う心
「後生大事」という言葉には、主に二つの意味があります。
- 【本来の意味】… 来世での安楽を心から願い、仏道に励むこと。
「後生」は来世、「大事」は仏教で最も重要なこと(悟りや成仏など)を指します。
これが元々の、仏教的な意味です。 - 【現代でよく使われる意味】… 物や人を非常に大切にすること。大切にしまいこむさま。
まるで来世にまで持っていきたいと思うほど、何かを大事にする様子を表します。
特に、物に対して使われることが多いです。
現代では、ほとんどが2番目の意味で使われます。
「後生大事に」という形で、何かをとても大切そうに扱ったり、持っていたりする様子を表す副詞としてもよく用いられます。
時として、古びた物や他人から見れば価値のなさそうな物を大切にしすぎている様子を、少しユーモラスに、あるいは軽く皮肉を込めて表現する際にも使われることもあります。
「後生大事」の語源 – 来世への願いから生まれた言葉
「後生大事」の成り立ちを詳しく見てみましょう。
- 後生(ごしょう):
仏教の言葉で、死後に生まれ変わる次の世、来世のことです。 - 大事(だいじ):
これも仏教に由来し、単に「大切なこと」というだけでなく、悟りを開くことや来世で極楽浄土へ往生することなど、人間にとって最も根本的で重要な課題を指しました。
つまり、「後生大事」とは、元々「来世での幸福という最も大事なことを願って、熱心に信仰する」という意味だったのです。
それが時代と共に、「来世にまで持っていきたいほど大切にする」というニュアンスに転じ、現代でよく使われる「物などを非常に大切にする」という意味合いで広く使われるようになりました。
「後生大事」の使用される場面と例文
現代において「後生大事」は、主に何かを非常に大切に扱っている様子を表す際に使われます。
特に物に対して使われることが多いです。
- 古い物や思い出の品を大切に保管している様子
- 他人には価値が分からなくても、本人にとっては宝物である物を扱っている様子
- (副詞的に)何かをとても大切そうに、壊れないように持ったり運んだりする動作
文脈によっては、その「大切にしすぎる」様子を、微笑ましく見たり、少しからかったりするニュアンスが含まれることもあります。
例文
- 「祖母は、古い写真一枚一枚を後生大事にアルバムにしまっている。」
- 「彼は子供の頃にもらったぬいぐるみを、今でも後生大事に持っている。」
- 「そんながらくたを後生大事にして、どうするつもりだい?」(少し皮肉なニュアンス)
- 「彼女は割れ物の壺を、後生大事に両手で抱えて運んでいた。」(副詞的な使い方)
「後生大事」の類義語
■物を大切にする意味で
- 大切にする:価値あるものとして、丁寧に扱うこと。
- 宝物のように扱う:非常に価値のあるものとして、丁重に扱うさま。
- 秘蔵する:大切にしまいこんで、人に見せないようにすること。
- 掌中の珠(しょうちゅうのたま):手の中の宝の珠。最も大切にしているものや、一人娘などのたとえ。
■本来の仏教的な意味で
- 来世を願う:死後の世界の安楽を祈ること。
- 信心深い:神仏などを深く信じているさま。
「後生大事」の対義語
■物を大切にする意味で
- 粗末にする:物を大切にせず、ぞんざいに扱うこと。
- ぞんざいに扱う:乱暴でなげやりに扱うこと。
- 無頓着(むとんちゃく):物事に深く心を配らないこと。気にかけないさま。
- おろそかにする:いい加減に扱い、大切にしないこと。
■本来の仏教的な意味で
- 現世主義(げんせしゅぎ):来世や死後のことよりも、現在の世での幸福や利益を重視する考え方。
- 即物的(そくぶつてき):精神的な価値よりも、物質的な利益や快楽を重んじるさま。
「後生大事」の英語での類似表現 – Treasuring Something Dearly
■物を大切にする意味で
- treasure / cherish
意味:~を宝物のように大切にする。 - hold dear
意味:~を大切に思う、~を慈しむ。 - value highly
意味:~を高く評価する、~を重んじる。 - handle with great care
意味:細心の注意を払って扱う。
■本来の仏教的な意味で
- praying for happiness in the next life
意味:来世での幸福を祈ること。
「後生大事」のまとめ
「後生大事」は、元々は「来世での幸福を願って熱心に信仰する」という仏教的な意味でしたが、現代では主に「物などを非常に大切にする様子」を表す言葉として使われています。
「後生大事に」という副詞的な形で、何かを大切そうに扱うしぐさを表現することも多いですね。
時には、大切にしすぎる様子へのユーモアや軽い皮肉を含むこともありますが、根底には「それを失いたくない」という強い気持ちが流れています。
言葉の由来を知ると、単に物を大切にするだけでなく、その奥にある「かけがえのない想い」のようなものまで感じられる、味わい深い言葉と言えるかもしれません。
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