【特集】誤用されがちな ことわざ、四字熟語、慣用句

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意味を間違いやすい【ことわざ】

情けは人の為ならず(なさけはひとのためならず)

  • 本来の意味:
    人に親切にすれば、その相手のためだけでなく、巡り巡って自分にも良い報いが返ってくる、ということ。
  • よくある誤用:
    「情けをかけることは、結局はその人のためにならない(甘やかすだけだ)」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「ならず」は「~ではない」という否定の形です。  
    「人のためではない」=「自分のためでもある」と理解するのがポイントです。

流れに掉さす(ながれにさおさす)

  • 本来の意味:
    棹(さお)で水底を突いて、流れに乗って舟を進めること。  
    転じて、時流に乗って物事を有利に進める、勢いを増す、という意味。また、逆らう流れに棹をさして舟を押しとどめようとする意味も。
  • よくある誤用:
    「時流や大勢に逆らう」「邪魔をする、水を差す」という意味で使われる。  
    また、単純に「便乗する」という意味で使われることも。
  • 正しい使い方・ポイント:
    本来の意味が複数あり、文脈によって解釈が分かれやすい言葉です。  
    誤解を避けたい場合は、より直接的な表現を使うのが無難かもしれません。一般的には「時流に乗る、時勢に乗じて事を行う」が主な意味とされます。

煮詰まる

  • 本来の意味:
    十分に議論や検討が重ねられ、結論が出る直前の状態になること。
  • よくある誤用:
    「議論が行き詰まって、どうにもならなくなる」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    料理が煮詰まって完成に近づくイメージです。行き詰まった状態は「行き詰まる」と表現しましょう。

檄を飛ばす(げきをとばす)

  • 本来の意味:
    自分の主張や考えを広く人々に知らせ、同意や決起を求めること。檄文(げきぶん)という文書を方々に発信することから。
  • よくある誤用:
    「頑張れ、と励ます」「激励する」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    スポーツの応援などで使われがちですが、本来はもっと強い主張や呼びかけを伴います。  
    単なる激励は「声援を送る」「励ます」などが適切です。

出る杭は打たれる(でるくいはうたれる)

  • 本来の意味:
    才能や手腕があって目立つ人は、他の人から憎まれたり妨害されたりしやすい、ということのたとえ。
  • よくある誤用:
    「勝手な行動をする」「和を乱す」と非難されたり制裁を受けたりする、という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    本来は、優れているがゆえに憎まれる、というニュアンスです。  
    集団の中で目立ちすぎることへの戒めとして使われることもあります。

他力本願(たりきほんがん)

  • 本来の意味:
    仏教(特に浄土教)の用語で、自分の修行によって悟りを開く(自力)のではなく、阿弥陀仏の本願(すべての人を救おうという誓い)の力によって救われること。
  • よくある誤用:
    努力せず、他人や人まかせにすること。人頼み。
  • 正しい使い方・ポイント:
    日常会話では誤用の方が広く使われていますが、元々は深い信仰心を表す言葉です。  
    文脈によっては、本来の意味で使われることもあります。

意味を間違いやすい【故事成語】

破れ鍋に綴じ蓋(われなべにとじぶた)

  • 本来の意味:
    欠点のある者でも、それにふさわしい相手がいるというたとえ。
  • よくある誤用:
    「ダメなもの同士がくっついた」など、ネガティブな意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    本来は「人にはそれぞれ合う相手がいる」という温かい意味合いです。  
    皮肉に使われることもありますが、文脈によって伝わり方が大きく変わるので注意が必要です。

画竜点睛を欠く(がりょうてんせいをかく)

  • 本来の意味:
    最も肝心な部分が欠けていて、全体が締まらないこと。
  • よくある誤用:
    「完璧なものにさらに手を加えて、かえって台無しにする」という意味で使われる(これは「蛇足」と混同)。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「絵に描いた竜に最後に目を入れないと完成しない」という由来から、「最後の仕上げ」がない、という意味になります。  
    逆に「目を入れて台無しになった」とはなりません。

藪から棒

  • 本来の意味:
    前触れも脈絡もなく、突然に物事が起こること。
  • よくある誤用:
    「乱暴な態度」や「強引な言動」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    竹藪から急に棒が飛び出すような唐突さを表しています。  
    「突然の質問で驚いた」「脈絡のない話題に困惑した」といった場面にぴったりです。

確信犯

  • 本来の意味:
    自らの信念や思想に基づき、正しいと信じて行う犯罪行為。政治的・宗教的な信念による行為が多い。
  • よくある誤用:
    「悪いと分かっていながら意図的にやる犯罪(=悪意ある犯人)」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    現在では誤用のほうが一般的に通じやすくなってしまいましたが、法律や社会問題に関わる文脈では正しい意味で使われます。誤用を避けるなら「故意犯」「悪質な犯行」などと使い分けましょう。

意味を間違いやすい【慣用句・表現】

敷居が高い(しきいがたかい)

  • 本来の意味:
    相手に対して不義理や面目のないことがあり、その人の家に行きにくいこと。
  • よくある誤用:
    「高級すぎたり、格が高すぎたりして、入りにくい」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    元々は、訪ねる側に負い目がある状況で使います。  
    近年は誤用とされる意味も広く浸透していますが、本来の意味を知っておくと良いでしょう。  
    文化庁の調査でも、誤用の方が多数派になっています。

失笑する(しっしょうする)

  • 本来の意味:
    こらえきれずに、思わず吹き出して笑うこと。「失」は「うっかり~する」の意。
  • よくある誤用:
    「笑いも出ないほどあきれる」「軽蔑して鼻で笑う」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    本来は「笑ってしまう」状況で使います。あきれている状況では「あきれる」「唖然とする」などを用います。

ぞっとしない

  • 本来の意味:
    感心できない、興味をそそられない、面白みに欠ける、といった意味。
  • よくある誤用:
    「怖くない」「恐怖を感じない」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「怖さ」に関係するように見えて、実は「感情が動かない=面白くない」という評価を示す言葉です。  
    たとえば、「あの映画はぞっとしなかった」は「恐怖が足りなかった」ではなく、「面白くなかった」となります。

役不足(やくぶそく)

  • 本来の意味:
    その人の力量や能力に比べて、与えられた役目が軽すぎること。不満を示す言葉。
  • よくある誤用:
    「その役目を果たすには力量が足りない」という意味で使われる。これは本来「力不足(ちからぶそく)」が当てはまります。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「役」に対して「(自分の)力が不足している」のではなく、「(自分の力量に対して)役の方が不足している」と覚えましょう。謙遜のつもりで使うと、逆に尊大な印象を与えかねません。

的を射る(まとをいる)

  • 本来の意味:
    物事の肝心な点を的確に捉える、要点をうまく言い当てること。
  • よくある誤用:
    「的を得る(まとをえる)」と間違われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    弓矢で「的を射る」のが本来の形です。「得る」も間違いではないとする辞書も増えていますが、伝統的には「射る」が正しいとされています。

御の字(おんのじ)

  • 本来の意味:
    それ以上は望めないほど満足できること。十分ありがたいこと。
  • よくある誤用:
    「最高だ」「最上級だ」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「期待以上ではないが、十分満足できる水準」というニュアンスです。「最高」ではなく、「これなら文句はない」くらいの状況で使うと自然です。

気が置けない

  • 本来の意味:
    遠慮したり気遣いをしたりする必要がなく、心から打ち解けられること。
  • よくある誤用:
    「油断できない」「気を許せない、信用できない」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「気を置く」が「遠慮する、気を使う」という意味なので、それを打ち消しています。つまり「気を使わないで良い(=打ち解けられる)」相手や間柄を指します。

憮然(ぶぜん)

  • 本来の意味:
    意外な出来事に驚いたり、失望したりして、どうすることもできずぼんやりとしている様子。がっかりして、やりきれない気持ち。
  • よくある誤用:
    腹を立ててむっとしている様子。(これは「憤然(ふんぜん)」)
  • 正しい使い方・ポイント:
    「然」は「~の様子」という意味。「憮」は驚きや落胆を表します。怒りではなく、がっかりして呆然としているイメージです。

気の置ける相手

  • 本来の意味:
    遠慮したり気遣いをしたりしなければならない相手。気軽に接することができない相手。
  • よくある誤用:
    「気が置けない相手」と混同し、「親しい相手」「気心の知れた相手」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「気を置く」は「遠慮する」なので、そのまま「遠慮が必要な相手」となります。「気が置けない」の反対の意味です。

悪びれる

  • 本来の意味:
    恥ずかしがったり、気後れしたり、おどおどしたりすること。
  • よくある誤用:
    「悪びれる様子もなく」という形で、「反省しない」「ふてぶてしい態度をとる」という意味で使われる。(これは、本来の意味の否定形「悪びれずに」から逆算した誤解)
  • 正しい使い方・ポイント:
    本来は、悪いことをした際に内心で感じる気まずさや恐れを表す言葉です。否定形「悪びれずに」で「平然と」「臆することなく」という意味になります。

情けない

  • 本来の意味:
    期待外れで嘆かわしい。思いやりがない。みじめで見るに忍びない。恥ずかしい。
  • よくある誤用:
    「かわいそう」「気の毒だ」という意味で使われる。(これは「情け(なさけ)」から連想した誤解)
  • 正しい使い方・ポイント:
    相手への同情ではなく、対象(自分自身を含む)に対する否定的な感情(嘆き、非難、羞恥)を表します。「試験に落ちて情けない」など。

破天荒

  • 本来の意味:
    今まで誰も成し遂げなかったこと、前人未到のことを初めて行うこと。
  • よくある誤用:
    「型破りな」「豪快な」「大胆で無茶な」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    中国の故事で、今まで合格者が出なかった科挙に初めて合格者が出たことを「天荒を破る」と称したことから。単に性格や行動が型破りなだけでなく、「前例のない偉業」というニュアンスです。

雨模様

  • 本来の意味:
    空が曇ってきて、今にも雨が降り出しそうな様子のこと。
  • よくある誤用:
    小雨が降ったりやんだりしている状態。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「模様」は「ある事態になりそうな様子」を示します。まだ雨は降っていない状況を指すのが本来の使い方です。

食指が動く(しょくしがうごく)

  • 本来の意味:
    ある物事に対して興味や関心がわくこと。何かを欲しい、やってみたいという気持ちになること。
  • よくある誤用:
    「食欲がわく」「おいしそうだと感じる」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    中国の故事で、ご馳走が出ると人差し指(食指)が動いたという人物の話から。食欲に限らず、広く興味や欲望が刺激される状況で使います。

なし崩し

  • 本来の意味:
    物事を少しずつ片付けていくこと。借金などを少しずつ返していくこと。
  • よくある誤用:
    物事を曖昧にしたまま、うやむやにしてしまうこと。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「崩す」は「形をなくす」ですが、ここでは「少しずつ減らしていく」という肯定的な意味合いです。「なし崩し的に計画が進んだ」は本来「少しずつ計画が進んだ」の意味ですが、誤用が広まっています。

うがった見方

  • 本来の意味:
    物事の本質や真相を的確に見抜いた見方。深読みした鋭い見方。
  • よくある誤用:
    「疑り深い見方」「ひねくれた見方」「皮肉な見方」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    「穿つ(うがつ)」は「穴をあける」「奥深く掘る」という意味。表面だけでなく、本質まで掘り下げて見る、という肯定的な意味の言葉です。

おもむろに

  • 本来の意味:
    落ち着いて、ゆっくりと行動を始める様子。
  • よくある誤用:
    「突然に」「不意に」「いきなり」という意味で使われる。
  • 正しい使い方・ポイント:
    慌てず、ゆったりと動作に移る様を表します。「突然」という意味の「やにわに」と混同しないようにしましょう。

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