「溺れる者は藁をも掴む」の意味・語源・由来
意味
「溺れる者は藁をも掴む」とは、切羽詰まった状況にある人は、どんなに頼りないものにでもすがろうとする、というたとえです。
溺れている人が、浮くために藁のような頼りないものでも掴もうとする様子から来ています。
危機的な状況では、普段なら頼らないようなものや、わずかな可能性にも頼ろうとする人間の心理を表しています。
語源・由来
このことわざの直接的な由来は不明ですが、人が溺れるという状況は古くから存在し、その際に藁や草など、水に浮くものにすがろうとする行動は自然なものです。
そこから、危機的な状況下での人間の心理を突いた、このことわざが生まれたと考えられます。
世界各地に類似の表現があり、人間の普遍的な行動や心理に基づいていることがわかります。
「溺れる者は藁をも掴む」の使い方(例文)
- 「彼は多額の借金を抱え、溺れる者は藁をも掴む思いで怪しげな投資話に手を出してしまった。」
- 「試験に落ち続けている彼は、溺れる者は藁をも掴む心境で、あらゆる開運グッズを買い集めている。」
- 「会社が倒産寸前の社長は、溺れる者は藁をも掴むとばかりに、どんな小さな仕事でも引き受けている。」
- 「溺れる者は藁をも掴むというけれど、冷静さを失ってはいけない。」
- 「絶体絶命のピンチに陥った時、彼はまさに溺れる者は藁をも掴む思いだった。」
注意! 間違った使い方、間違いやすい読み方
- 「溺れる者は藁をも掴もうとしない」
(✕ 誤用:ことわざの意味と反対のことを言っている)
「溺れる者は藁をも掴む」の文学作品、小説などの使用例
その時、わたしは、溺れる者は藁をも掴むという諺を思い出しました。
(出典:太宰治「人間失格」)
「溺れる者は藁をも掴む」の類義語
- 窮鼠猫を噛む:追い詰められたネズミが猫に噛みつくように、弱い者でも必死になれば強い者に立ち向かうことのたとえ。
- 背に腹はかえられぬ:目前の重大なことのためには、他のことを犠牲にしても仕方がないことのたとえ。
- 窮すれば通ず:追い詰められれば、かえって活路が開けること。
「溺れる者は藁をも掴む」の対義語
- 石橋を叩いて渡る:非常に用心深く、安全を確認してから行動することのたとえ。
- 急がば回れ:危険な近道をするよりも、安全な遠回りをする方が、結局は早く着くことのたとえ。
- 君子危うきに近寄らず:賢い人は危険を察知し、事前に回避すること。
使用上の注意点
このことわざは、危機的な状況下での人間の行動を的確に表していますが、必ずしも肯定的な意味合いだけで使われるわけではありません。
頼りないものにすがることの愚かさや、冷静さを失うことの危険性を指摘する文脈で使われることもあります。
また、「藁」はあくまで比喩であり、実際に藁を掴めば助かるという意味ではありません。
「溺れる者は藁をも掴む」に類似した英語表現
A drowning man will clutch at a straw.
直訳:溺れている人は藁を掴むだろう。
意味:日本語のことわざと全く同じ意味です。
例文:
He knew it was a scam, but he was desperate for money; a drowning man will clutch at a straw.
(それが詐欺だと分かっていたが、彼はお金に困っていた。溺れる者は藁をも掴む、だ。)
Grasp at straws
意味: 望みの薄いものにすがる、わらにもすがる思いでいる。
例文:
He was grasping at straws when he tried to fix the problem with that old tool.
(あの古い道具で問題を解決しようとしたのは、彼がわらにもすがる思いだったからだ。)
まとめ
「溺れる者は藁をも掴む」は、危機的な状況にある人は、どんなに頼りないものでもすがろうとする、という人間の心理を表したことわざです。
類義語や対義語、そして英語表現も多く存在し、人間にとって普遍的なテーマであることがわかります。
このことわざは、単に事実を述べるだけでなく、冷静さを失うことへの戒めや、状況を客観的に見ることの重要性を示唆しているとも言えるでしょう。
どんな状況でも、最善の選択をするためには、このことわざを心に留めておくことが大切です。
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