「背に腹はかえられぬ」の意味・語源・由来
意味
切迫した状況においては、他のことを犠牲にしても、最も重要なことを守らざるを得ないという意味です。
目前の重大なことのためには、他のことを犠牲にすることもやむを得ないというたとえです。
空腹で死にそうな時は、背中を守ることより腹を満たすことが優先されることから来ています。
語源・由来
このことわざは、文字通りの状況から来ています。
人間の体で、腹は内臓があり生命維持に直結する重要な部分です。
一方、背中は(腹に比べて)生命維持の優先度が低いです。
飢餓状態のような極限状態では、背中を多少傷つけたり、背中の防御を犠牲にしたりしてでも、腹を満たすことを優先しなければ生きていけないという状況を表しています。
そこから転じて、より広い意味で「重大なことのためには、他のことを犠牲にせざるを得ない」という意味で使われるようになりました。
「背に腹はかえられぬ」の使い方(例文)
- 「プロジェクトの締め切りが迫っている。背に腹はかえられぬので、多少の残業は覚悟しなければならない。」
- 「子供の学費のためなら、背に腹はかえられぬ。自分の趣味の出費は抑えよう。」
- 「会社の経営が苦しい。背に腹はかえられぬので、泣く泣く社員をリストラすることにした。」
- 「災害直後には、背に腹はかえられぬ。まずは人命救助を最優先に行動すべきだ。」
- 「どうしても欲しい限定品のスニーカーがあるんだ。背に腹はかえられぬから、今月は節約生活だな。」
「背に腹はかえられぬ」の類義語
- 苦肉の策(くにくのさく):苦し紛れに思いついた、やむを得ない手段のこと。
- 窮余の一策(きゅうよのいっさく):苦しんだ末にやっと考え出した一つの方法。
- 断腸の思い(だんちょうのおもい):苦渋に満ちた決断、つらい選択をすること。
- 泣く泣く(なくなく):仕方なく、嫌々ながら物事を行うさま。
- 火急(かきゅう):非常にさしせまっていること。
「背に腹はかえられぬ」の対義語
- 大局を見る(たいきょくをみる):目先のことにとらわれず、全体的な状況を把握すること。
- 長い目で見る(ながいめでみる):将来を見据えて、じっくりと取り組むこと。
- 二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず):欲張ると結局何も得られないこと。
「背に腹はかえられぬ」に類似した英語表現
Needs must when the devil drives.
直訳:悪魔に駆り立てられるときには、必要が優先される。
意味:必要に迫られれば、嫌なことでもやらなければならない。
例文:
I didn’t want to work overtime, but needs must when the devil drives.
(残業はしたくなかったが、必要に迫られたのでやらざるを得なかった。)
Desperate times call for desperate measures.
意味: 絶望的な時は、絶望的な手段が必要である。
例文:
We had to take out a loan to pay for the unexpected medical bills. Desperate times call for desperate measures.
(予期せぬ医療費を支払うために、借金をしなければなりませんでした。背に腹はかえられぬ状況です。)
使用上の注意点
「背に腹はかえられぬ」は、あくまで最終手段として、やむを得ず何かを犠牲にする場合に使うことわざです。
安易な選択や、努力不足の言い訳として使うべきではありません。
犠牲にするものの重要性を十分に考慮し、本当にやむを得ない状況かどうかを慎重に見極める必要があります。
まとめ
「背に腹はかえられぬ」は、差し迫った状況で、重要なものを守るために、他のものを犠牲にせざるを得ないことを表すことわざです。
この言葉を使う際は、本当にやむを得ない状況なのか、他に方法はないのかをよく考えることが大切です。
また、類義語や英語表現も覚えておくことで、表現の幅が広がるでしょう。
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