意味・教訓
「窮すれば通ず」とは、行き詰まり、解決策が見出せないような困難な状況に陥った時に、かえって新たな活路が開けることがある、という意味のことわざです。
絶体絶命のピンチでも、諦めずに努力を続けたり、視点を変えたりすることで、思いがけない解決策や新しい発想が生まれる可能性があることを示唆しています。
困難な状況でも、希望を捨てずに前向きに取り組むことの大切さを教えてくれる言葉です。
語源・由来
このことわざは、中国の古典『易経』の「繋辞伝(けいじでん)」に記されている言葉に由来します。
「繋辞伝」には、
「窮則変、変則通、通則久」(窮まればすなわち変ず、変ずればすなわち通ず、通ずればすなわち久し)
と記されています。
これは、「行き詰まったら変化を求め、変化すれば道が開け、道が開ければその状態は長く続く」という意味です。
この「窮則変、変則通」という言葉が元となり、意味が近い形で日本でも「窮すれば通ず」ということわざとして広く使われるようになったと考えられています。
使用される場面と例文
「窮すれば通ず」は、困難な状況で活路を見いだそうとする時や、諦めずに努力することの重要性を説く際に使われます。
例文
- 「彼は、窮すれば通ずの精神で、長年の難病を克服した。」
(個人的な困難) - 「業績悪化で倒産寸前だったが、窮すれば通ずで、社員から出た斬新なアイデアが会社を救った。」
(ビジネス上の問題) - 「何度不合格になっても諦めなかった。窮すれば通ずと信じて勉強を続け、ついに司法試験に合格できた。」
(学習の場面) - 「窮すれば通ずと言うけれど、時には撤退する勇気も必要だ。」
(注意点を踏まえた使い方)
類義語・関連語
- 九死に一生を得る:ほとんど助かる見込みのない命がかろうじて助かること。
- 明けない夜はない:どんなにつらい状況でも、いつか終わりが来る。
- 万事休す / 進退窮まる:もう打つ手がない状態。
- 苦あれば楽あり: 苦しいことの後には楽しいことがある。
関連する心理学の概念
- レジリエンス:困難や逆境から立ち直る力、回復力。
対義語
- 八方塞がり(はっぽうふさがり):どの方面にも方法や手段がなく、全く動きがとれないこと。
- 手詰まり(てづまり):事態を打開する手段がないこと。
- 万策尽きる(ばんさくつきる):できる限りの手を尽くしたが、どうにもならないこと。
英語表現(類似の表現)
- Necessity is the mother of invention.
直訳:必要は発明の母。
意味:必要に迫られると、人間は工夫や発明をするものだということ。
(「窮すれば通ず」に近い意味のことわざ) - Adversity is the first path to truth.
直訳:逆境は真実への最初の道。
意味:困難や逆境は人を成長させ、真理に導く。
(困難の持つポジティブな側面を強調する表現)
■似た意味を持つ、よりポジティブな表現
- When one door closes, another opens.
直訳:一つのドアが閉まると、別のドアが開く。
意味:一つの機会を失っても、別の機会が訪れる。
使用上の注意点
このことわざは、単なる精神論や楽観論ではなく、積極的に行動を起こすことの重要性を示唆しています。
しかし、どんな状況にも当てはまるわけではありません。
時には、状況を冷静に判断し、最悪の事態を避けるために、損切りや撤退、方向転換をすることも必要です。
まとめ
「窮すれば通ず」は、困難な状況に直面しても、諦めずに努力を続け、発想を転換することで、道が開ける可能性があることを教えてくれることわざです。
しかし、このことわざは、やみくもに突き進むことを推奨しているわけではありません。状況によっては、戦略的な撤退や方向転換も視野に入れ、最善の策を模索することが重要です。
真に「窮すれば通ず」の精神を活かすには、状況を見極める冷静な判断力と、変化を恐れない柔軟性が求められます。
コメント