大魚は小池に棲まず

ことわざ
大魚は小池に棲まず(たいぎょはしょうちにいず)

12文字の言葉た・だ」から始まる言葉
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「大魚は小池に棲まず」の意味

「大魚は小池に棲まず」とは、「優れた才能や大きな器量を持つ人物は、狭い環境や低い地位に甘んじることなく、より大きな活躍の場を求めるものである」というたとえです。

文字通り、大きな魚が小さな池では窮屈で生きていけないように、非凡な能力を持つ人は、自分の力を十分に発揮できる、より広い世界や高い地位を目指すのが自然である、という考え方を示しています。

将来性のある人物の旅立ちや、現状に満足しない向上心などを肯定的に表現する際に用いられることわざです。

「大魚は小池に棲まず」の語源

このことわざの直接的な語源となる特定の故事や、出典とされる古典などは明確にはありません。

「大魚(たいぎょ)」つまり大きな魚が、「小池(しょうち)」すなわち小さな池には棲むことができない、という自然界のありさまを、そのまま人間の才能や器量にたとえたものと考えられます。

大きな魚には、その体を維持し、自由に泳ぎ回るための広い空間と豊富な餌が必要です。
それは小さな池では満たされません。
同様に、優れた才能を持つ人物も、その能力を活かし、さらに成長するためには、相応の環境や機会が必要である、という発想から生まれた言葉と言えるでしょう。
シンプルながら、的を射たたとえとして古くから使われています。

「大魚は小池に棲まず」の使用される場面と例文

「大魚は小池に棲まず」は、優れた人物がその能力に見合った、より大きな環境や活躍の場を求めて移っていく状況や、そうした人の向上心や大志を表す際に使われます。
例えば、優秀な社員がより条件の良い大企業へ転職したり、才能ある若者が故郷を離れて都会や海外を目指したりするような場面で用いられます。

例文

  • 「彼ほどの才能があれば、この部署に留まらず、いずれ本社へ行くだろう。大魚は小池に棲まず、だよ。」
  • 「彼女は若くして会社を辞め、海外で起業した。まさに大魚は小池に棲まずを地で行く人物だ。」
  • 「あんな優秀な研究者が地方の研究所を去るのは残念だが、大魚は小池に棲まずと言うし、仕方ないのかもしれない。」
  • 「現状に満足せず、常に新しい挑戦を続ける彼の姿は、大魚は小池に棲まずという言葉を思い出させる。」

「大魚は小池に棲まず」の類義語

  • 蛟竜雲雨を得(こうりょううんうをう):蛟(みずち)や竜といった伝説上の生き物が、活躍の時機である雲や雨を得て天に昇ることから、英雄や優れた人物が機会を得て大いに活躍することのたとえ。活躍の「機会」に焦点がある。
  • 竜は浅瀬に遊ばず(りゅうはあさせにあそばず):優れた能力を持つ竜が、身の危険があり、また能力を発揮できない浅瀬では活動しないことから、優れた人物は自ら危険を冒したり、自分の能力にふさわしくない低い地位に甘んじたりしないことのたとえ。身の処し方についてのニュアンス。
  • 鷹は飢えても穂を摘まず(たかはうえてもほをつまず):誇り高い鷹は、たとえ飢えても地面に落ちた稲の穂を拾って食べるようなことはしないという意味から、高潔な人物はどんなに困窮しても不正な行為や卑しい行いはしないことのたとえ。高潔さやプライドに焦点がある。

「大魚は小池に棲まず」の関連語

  • 雄飛(ゆうひ):鳥などが勢いよく勇ましく飛び立つこと。転じて、大きな志を持って、広い社会で思う存分活躍すること。「大魚は小池に棲まず」という状況の後に続く行動を表すことがある。

「大魚は小池に棲まず」の対義語

  • 鶏口となるも牛後となるなかれ(けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ):大きな組織や集団の末端にいるよりも、たとえ小さくてもその組織の長となる方が良いという考え方。大きな活躍の場を求めるのとは逆の価値観を示す。
  • 井の中の蛙大海を知らず:井戸の中にいる蛙は、外に広がる大海の存在を知らないことから、自分の狭い知識や見識にとらわれ、他に広い世界があることを知らないことのたとえ。小さな世界に安住する様子を表す。
  • 燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや(えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや):ツバメやスズメのような小さな鳥には、オオハクチョウのような大きな鳥の遠大な志は理解できないという意味。小人物には大人物の考えや志は分からないということ。

「大魚は小池に棲まず」の英語での類似表現 – 似た考え方を示す英語

「大魚は小池に棲まず」ということわざの精神を伝える英語表現はいくつか考えられます。

  • A great person (or talent) will not stay confined to a small place (or position).
    意味:偉大な人物(または才能)は、小さな場所(や地位)に閉じ込められたままではいないだろう。直訳に近く、意味合いが伝わりやすい表現。
  • An eagle does not hawk at flies.
    意味:鷲はハエを狩らない。これは、優れた人物は些細なことに関わったり、低いレベルで満足したりしない、という意味合いで使われることがある。
  • You can’t keep a good man down.
    意味:良い(有能な)人間を抑えつけておくことはできない。才能ある人物はいずれ頭角を現し、相応の場所へ行くものだ、というニュアンス。

「大魚は小池に棲まず」の使用上の注意点

このことわざは、才能ある人物の向上心や将来性を肯定的に評価する際に使われますが、使い方によっては意図せず相手やその環境を否定的に響かせてしまう可能性があります。

例えば、ある組織から人が去る際にこの言葉を使うと、その組織を「小池(=狭い、物足りない場所)」と暗に評価しているように受け取られかねません。
相手を励ますつもりで使ったとしても、その人が現在いる場所や状況を軽んじているような印象を与えないよう、言葉を選ぶ配慮が必要です。

まとめ – 「大魚は小池に棲まず」が示す未来への飛躍

「大魚は小池に棲まず」ということわざは、優れた才能や大きな志を持つ人は、現状の小さな枠にとどまることなく、より広い世界へと羽ばたいていくものだ、という道理を示しています。
人の持つ可能性や、より大きな舞台への挑戦を肯定的に捉える言葉です。

一方で、この言葉は比較対象となる環境を「小池」と表現するため、使い方によっては現状を否定するようなニュアンスを含むこともあります。
誰かの門出を祝ったり、向上心を表現したりする際には、その言葉が相手や周囲にどのような印象を与えるかを少し立ち止まって考えることも大切かもしれません。
才能が輝くべき場所へと向かう、その前向きなエネルギーを感じさせることわざと言えるでしょう。

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