「二足の草鞋を履く」の意味・語源・由来
意味
一人の人が、性質の異なる二つの職業を兼ねること。
通常、本業とは別に副業を持つ場合や、全く異なる分野の仕事を掛け持ちする場合に使われます。
かつては、両立が難しいとされる二つの職業に就くことを指す、否定的なニュアンスを含む場合もありましたが、現代では肯定的な意味で使われることも多くなっています。
語源・由来
江戸時代、旅人が履く草鞋(わらじ)は、すぐに擦り切れてしまうため、予備の草鞋を必ず携行していました。
このことから、「二足の草鞋」は旅人の必需品を指す言葉でした。
一方、江戸時代には、捕吏(ほり、罪人を捕らえる役人)が、町人や博徒(ばくと、賭博で生計を立てる者)など、別の顔を持つことがありました。
昼間は普通の仕事をし、夜は捕吏として働く、あるいはその逆、といった具合です。
これらの人々は、二足の草鞋を履き替えるように、二つの異なる役割を使い分けていたことから、「二足の草鞋を履く」という表現が、二つの職業を兼ねることを意味するようになったとされています。
特に、相反するような職業を兼ねる場合に用いられることが多かったようです。
(例:ヤクザと岡っ引きなど)
「二足の草鞋を履く」の使い方(例文)
- 彼は、昼間は会社員、夜はミュージシャンという二足の草鞋を履く生活を送っている。
- 彼女は、小説家と大学教授という二足の草鞋を履き、精力的に活動している。
- 最近は、会社員をしながら起業し、二足の草鞋を履く人が増えている。
- 彼は、医師とYouTuberという二足の草鞋を履いて、医療情報を発信している。
- その政治家は、かつて俳優と二足の草鞋を履いていたことがある。
注意! 間違った使い方
- 彼は毎日、運動靴と革靴の二足の草鞋を履く。
(※文字通り二足の靴を履くという意味ではない。)
「二足の草鞋を履く」の文学作品などの用例
(特定の文学作品で特徴的に使用されている例は、すぐには見つけられませんでした。しかし、一般的な慣用句として様々な場面で使われています。)
「二足の草鞋を履く」の類義語
- 兼業(けんぎょう):本業のほかに、他の仕事もすること。
- 副業:本業以外に収入を得るための仕事。
- 掛け持ち:複数の仕事や役割を同時に受け持つこと。
- ダブルワーク:二つの仕事をすること。
「二足の草鞋を履く」の対義語
- 専業(せんぎょう):一つの仕事に専念すること。
- 一本(いっぽん):一つのことに集中すること。
使用上の注意点
「二足の草鞋を履く」は、単に二つの仕事をしているというだけでなく、それぞれの仕事が互いに異なる性質を持っている場合に使うのが適切です。
また、かつては否定的なニュアンスを含むこともありましたが、現代では、多様な働き方を表す言葉として、肯定的な意味で使われることも多くなっています。
「二足の草鞋を履く」の英語表現
Wear two hats.
二つの帽子をかぶる、という意味合い。二つの役割を果たすことを表す。
例文:
He wears two hats, working as a teacher and a writer.
(彼は教師と作家という二足の草鞋を履いている。)
Have two jobs.
二つの仕事を持っている。
Moonlight as …
副業として…をする、という意味。
例文:
He works as an engineer and moonlights as a DJ.
(彼はエンジニアとして働き、副業としてDJをしている。)
Hold down two jobs.
二つの仕事を両立させる。
まとめ
「二足の草鞋を履く」は、江戸時代の旅人の必需品と、捕吏の二面性に由来する慣用句で、一人の人が性質の異なる二つの職業を兼ねることを意味します。
現代では、働き方の多様化を背景に、肯定的な意味で使われることが多くなっています。
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