「鰹節を猫に預ける」の意味・語源・由来
意味
鰹節を猫に預けるとは、油断できないこと、危険なことのたとえです。
猫の大好物である鰹節を猫に預ければ、当然食べられてしまう可能性が高いことから、この意味が生まれました。
特に、盗まれたり、失くしたりしては困るものを、その危険性が高い人に任せてしまう状況を指します。
語源・由来
「猫に鰹節を預ける」ということわざの正確な起源ははっきりしていませんが、猫が鰹節を狙うという日常的な光景から生まれた可能性が高いとされています。鰹節は日本の伝統的な保存食であり、猫はその匂いに引き寄せられてよく狙う存在でした。このような状況から、油断できない、または危険な状況を表すことわざとして自然発生的に生まれたのでしょう。
また、江戸時代の戯作者・平賀源内の浄瑠璃作品『神霊矢口渡』に次の一節があります。
「盗人に鍵をあづけるも此の事、魚を猫に預け、薪を狐に荷はするも同然、油断はならぬ人の事」
この中で「魚を猫に預ける」とあり、直接的に「鰹節を猫に預ける」という表現ではありませんが、そのニュアンスは非常に近く、この一節がことわざの成立や普及に影響を与えたと考えられます。最終的にこの表現が口語で広まり、ことわざとして定着したのではないかと推測されます。
「鰹節を猫に預ける」の使い方(例文)
- 「彼にお金の管理を任せるなんて、鰹節を猫に預けるようなものだよ。」
- 「彼女に秘密を打ち明けるのは、鰹節を猫に預けるのと同じくらい危険だ。」
- 「あの会社に個人情報を登録するのは、鰹節を猫に預けるようなものかもしれない。」
- 「鰹節を猫に預けるような真似はしたくないから、貴重品の管理は自分でしっかりやる。」
- 「上司は、鰹節を猫に預けることになると知りながら、彼に重要な仕事を任せた。」
注意! 間違った使い方
- 「彼に任せれば、猫に鰹節を預けるようなものだから安心だね。」(✕ 誤用)
ことわざを反転させて、安全であることを伝えたい時に使うのは誤用です。
「鰹節を猫に預ける」の類義語
- 猫に魚の番:猫に魚の番をさせること。
- 盗人に鍵を預ける:泥棒に鍵を預けること。油断ならないこと、危険なことのたとえ
「鰹節を猫に預ける」の対義語
- 適材適所:その仕事に適した人に適した地位や仕事を与えること。
使用上の注意点
このことわざは、相手を「猫」に、預けるものを「鰹節」に例えています。
そのため、相手を信頼できない、または警戒すべき人物だと暗に示していることになります。
使う相手や状況によっては、失礼にあたる場合があるため、注意が必要です。
特に、目上の人やビジネスシーンでの使用は避けるのが無難です。
「鰹節を猫に預ける」に類似した英語表現
Let the fox guard the henhouse.
直訳:キツネに鶏小屋の番をさせる。
意味:日本語のことわざとほぼ同じ意味です。
例文:
Letting him manage the finances is like letting the fox guard the henhouse.
(彼に財務管理を任せるのは、キツネに鶏小屋の番をさせるようなものだ。)
Set a wolf to watch the sheep
意味:オオカミに羊の番をさせる。
例文:
Asking him to keep the secret is like setting a wolf to watch the sheep.
(彼に秘密を守るように頼むのは、オオカミに羊の番をさせるようなものだ。)
まとめ
「鰹節を猫に預ける」は、猫の好物である鰹節をそばに置くと、猫が食べてしまう可能性が高いことから、非常に危険で油断できない状況を表すことわざです。
ビジネスや人間関係など、さまざまな場面で、注意喚起や戒めとして用いられます。
このことわざは、リスク管理の重要性や、誘惑に負けない自制心の大切さを教えてくれるでしょう。
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