意味
「頭隠して尻隠さず」とは、悪事や欠点の一部を隠したつもりでも、全体が露見していることのたとえです。
本人は隠しおおせているつもりでも、周りからは丸見えである状態を指します。
浅はかな考えで、すぐに露呈するような隠し方をしていることへの、批判や嘲笑のニュアンスを含みます。
語源・由来
このことわざの直接の由来ははっきりとしていません。
しかし、キジ(雉子)の習性が元になっているという説が有力です。
キジは、敵に襲われそうになると、草むらの中に頭だけを突っ込んで隠れたつもりになることがあります。
しかし、実際には長い尾が丸見えで、全く隠れられていないのです。
この様子から、「頭隠して尻隠さず」という言葉が生まれたと考えられています。
使用される場面と例文
「頭隠して尻隠さず」は、一部分だけを隠して、全体を隠したつもりになっている滑稽な様子や、見え透いた隠蔽工作などを指摘する際に使われます。
例文
- 「最近、甘いもの控えてるんだ!」と言いながら、ポケットにチョコの包み紙を隠し持っている。「頭隠して尻隠さず」じゃないか。
- 彼はカンニングペーパーを手の中に隠していたが、腕に書いた答えが丸見えだった。まさに「頭隠して尻隠さず」だ。
- 上司が来た途端に仕事をするフリをしていたが、パソコンの画面にはゲームのウィンドウが開きっぱなし。「頭隠して尻隠さず」だね。
注意点
このことわざは、人を非難したり、揶揄したりするニュアンスを含みます。使う場面や相手には注意が必要です。
特に、目上の人に対して使うのは失礼にあたるため、避けるべきです。
類義語
- 穴を塞いで尻を出す(あなをふさいでけつをだす):一つの欠点を隠そうとして、別の欠点を露呈すること。
- 隠したつもりの露見(かくしたつもりのろけん):隠したつもりでも、実際にはバレバレであること。
- 小細工を弄する(こざいくをろうする):その場しのぎの、浅はかな手段でごまかそうとすること。
関連する心理学の概念
- 認知バイアス:自分に都合の良い情報だけを集め、都合の悪い情報を無視してしまう心理的な傾向。
- 自己奉仕バイアス:失敗の原因を外部に求め、成功の原因を自分に帰属させる傾向。
対義語
対義語としては、「隠蔽工作が完璧であること」を意味する慣用句は一般的ではないため、「欠点がない」という意味の言葉をあげます。
- 完全無欠:欠点が全くないこと。
- 完璧主義:欠点がない状態を目指す考え方。
(注:完璧主義は必ずしも良い意味でのみ使われるわけではありません。)
英語表現(類似の表現)
- Like a pheasant hiding only its head.
直訳:頭だけ隠しているキジのよう
意味:「頭隠して尻隠さず」ということわざそのものを表す。
以下は「頭隠して尻隠さず」とは少しニュアンスが異なります。
- To hide one’s head in the sand (like an ostrich)
直訳:砂の中に頭を隠す(ダチョウのように)。
意味:現実から目を背ける、問題を直視しない。 - Bury one’s head in the sand
直訳:砂の中に頭を埋める。
意味:現実から目を背ける、問題を直視しない。 - To be caught with one’s pants down
直訳:ズボンを下ろした状態で捕まる。
意味:不意を突かれる、準備不足の状態でいる。
まとめ
「頭隠して尻隠さず」は、キジの習性を元にしたことわざで、悪事や欠点の一部を隠しても、全体が露見している状態を表します。
本人は隠せているつもりでも、周りからは丸見えであるという、滑稽さや皮肉を込めた表現です。
ビジネスや日常生活の様々な場面で、不完全な隠蔽工作や、見え透いた言い訳などを指摘する際に使われます。
ただし、批判的なニュアンスが強いため、使用する際には注意が必要です。
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