意味・教訓
「逃がした魚は大きい」とは、手に入れ損なったもの、失ったものは、実際よりも価値があるように思えてしまう心理を表すことわざです。
あとになって「あの時ああしていれば…」と後悔する気持ちを、釣り人が逃がした魚を大きく見せる様子に例えています。
未練や後悔の念、そして人間の欲深さを表しているとも言えるでしょう。
語源・由来
このことわざの正確な起源は不明ですが、釣りをする人々の間で自然発生的に生まれた表現だと考えられます。
実際に、釣り上げた魚よりも、逃がしてしまった魚の方が大きく感じることは、釣り人の間ではよくある経験です。
水面下で見えにくかったり、針から外れる瞬間の抵抗が強く感じられたりすることが、そう思わせる要因でしょう。
この経験則が、人間の心理全般を言い表すことわざとして広まったと考えられます。
使用される場面と例文
「逃がした魚は大きい」は、恋愛、仕事、チャンスなど、さまざまな場面で使われます。
逃してしまったものに対して未練や後悔を感じている状況を表現したり、そのような状況にある人を慰めたりする際に用いられます。
例文
- 「あの時、彼女に告白していれば…、逃がした魚は大きいとはまさにこのことだ。」
- 「あの会社から内定をもらっていたのに、断ってしまった。今思えば、逃がした魚は大きいな。」
- 「セールで買いそびれたあの服、やっぱり買っておけばよかった。逃がした魚は大きいとは言うけれど、本当に後悔してる。」
類義語・関連語
- 後悔先に立たず:事が終わった後で後悔しても、取り返しがつかないことのたとえ。
- 覆水盆に返らず:一度してしまったことは、元に戻せないことのたとえ。
- 失地回復(しっちかいふく):一度失ったものを取り戻すこと。
関連する心理学の概念
- 損失回避: 人は、何かを得ることよりも、何かを失うことの方に、より強く反応する傾向があります。この心理が、「逃がした魚は大きい」と感じさせる一因となっています。
対義語
- 諦めが肝心(あきらめがかんじん):思い切ってあきらめることが大切であるということわざ。
(未練を残さず、気持ちを切り替えることの重要性を示唆しています。)
英語表現(類似の表現)
- The one that got away.
直訳:逃げてしまったもの。
意味:手に入れ損ねた人や物を指す、英語の慣用句。 - The grass is always greener on the other side (of the fence).
直訳:向こう側の芝生はいつも青い。
意味:自分の持っていないものは良く見える、隣の芝生は青い、という意味のことわざ。 - Hindsight is 20/20.
直訳:後知恵は20/20の視力。(20/20は、視力検査で「正常」とされる視力)
意味:後から考えると、何が最善だったか明確に分かる、という意味。
使用上の注意点
このことわざは、あくまで逃したものに対する未練や後悔の気持ちを表すものであり、実際に逃したものが価値のあるものであったかどうかは別問題です。
客観的に見れば、大した価値のないものであったとしても、本人が「逃がした魚は大きい」と感じてしまうことはあり得ます。
まとめ
「逃がした魚は大きい」は、手に入れ損なったものを過大評価してしまう人間の心理を、釣り人の経験に例えたことわざです。
恋愛、仕事、チャンスなど、さまざまな場面で、未練や後悔の気持ちを表す際に使われます。
このことわざは、失ったものを惜しむ気持ちを理解しつつも、過去にとらわれず前向きに生きることの大切さを教えてくれる…のかもしれません。
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