生き馬の目を抜く

ことわざ 慣用句
生き馬の目を抜く(いきうまのめをぬく)

9文字の言葉」から始まる言葉
スポンサーリンク

意味とニュアンス – どんな様子を表す?

「生き馬の目を抜く」とは、非常に素早く物事を行い、他人を出し抜くのが巧みであること、また、油断も隙もない様子を表す慣用句であり、ことわざとしても使われます。

多くの場合、単に素早いだけでなく、「ずる賢い」「抜け目がない」といったネガティブなニュアンスを含んで使われます。
人が気づかないうちに何かを成し遂げたり、利益を得たりするような、機敏さや狡猾さを表現する言葉です。

語源 – 江戸の世知辛さから?

この言葉の語源は、「生きている馬の目ですら、気づかれずに抜き取ってしまうほど素早い」という、やや過激な比喩表現にあります。

馬のように注意深い動物の目を、生きている間に抜き取るのは至難の業です。
それをやってのけるほど、行動が素早く、ずる賢いことを強調しています。

江戸時代、人の多い江戸のような都市では、競争が激しく、少しでも油断すると他人に出し抜かれてしまう状況がありました。
そのような世知辛い世の中の様子や、抜け目なく立ち回る人を指して使われるようになったと考えられています。
正確な初出は定かではありませんが、江戸時代の文献には見られる表現です。

使用される場面と例文 – 現代での使われ方

「生き馬の目を抜く」は、競争の激しいビジネスの世界や、油断のならない状況、抜け目のない人物を評する際などに使われます。

ただし、前述の通りネガティブな意味合いが強いため、褒め言葉として使うことは通常ありません。

例文

  • あの業界は生き馬の目を抜くような厳しい競争が繰り広げられている。
  • 彼は生き馬の目を抜くと言われるほどの交渉上手だ。
  • 油断していると、生き馬の目を抜くように、あっという間にチャンスを奪われてしまうぞ。
  • ここは生き馬の目を抜くような都会だから、しっかりしないとね。

類義語 – 「抜け目ない」の様々な表現

「生き馬の目を抜く」と似たような、素早さや抜け目のなさを表す言葉には以下のようなものがあります。

  • 海千山千(うみせんやません):世の中の様々な経験を積み、物事の裏表を知り尽くしていて、したたかなこと。ずる賢いというニュアンスを含む場合があります。
  • 目から鼻へ抜ける(めからはなへぬける):非常に賢く、物事の理解が早いこと。利口さを肯定的に評価する場合に使うことが多いです。
  • 抜け目がない:自分の利益になるように、注意深く、手抜かりなく行動すること。
  • 悪賢い(わるがしこい):ずるい方面によく頭が働くこと。
  • 狡猾(こうかつ):ずる賢く、うまく立ち回ること。

対義語 – 「おっとり」した様子を表す言葉

「生き馬の目を抜く」とは反対に、行動が遅かったり、人が良かったり、警戒心が薄かったりする様子を表す言葉です。

  • うかつ:注意が足りず、ぼんやりしていること。
  • お人好し:人を疑うことを知らず、すぐに信用してしまうこと。だまされやすいというニュアンスも。
  • 間が抜けている:どこかぼんやりしていて、大事な点に気づかない様子。
  • 愚直(ぐちょく):正直すぎて、融通がきかないこと。要領が悪いとも言えます。
  • 後手に回る:相手に先を越され、受け身の立場になること。

英語での類似表現 – 素早さや狡猾さを表すフレーズ

英語で「生き馬の目を抜く」のような、素早さや抜け目のなさ、時にはずる賢さを表す表現には、以下のようなものがあります。

  • sharp practice
    意味:ずる賢いやり方、悪徳商法。ビジネスなどで、倫理的ではないが違法とまでは言えないような抜け目のない手法を指すことが多いです。
  • sly as a fox
    意味:キツネのようにずる賢い。狡猾さや抜け目のなさを強調する表現です。
  • quick-witted
    意味:機転がきく、頭の回転が速い。こちらは「生き馬の目を抜く」のネガティブなニュアンスは薄く、単に賢く素早いことを指す場合が多いです。
  • rob someone blind
    直訳:人を盲目にして奪う。
    意味:人を完全にだまして(金品などを)奪い取る。ずる賢く、容赦なく利益を得る様子を表します。

使用上の注意点 – 褒め言葉ではない?

「生き馬の目を抜く」は、その語感の強さから、使い方に注意が必要です。

  • 褒め言葉ではない: 基本的に「ずる賢い」「油断ならない」という否定的な評価を含むため、人を褒めるつもりで使うのは不適切です。相手を不快にさせる可能性があります。
  • 状況を選ぶ: 競争の激しさや世知辛さを客観的に表現する際には使えますが、特定の個人を評して使う場合は、批判的なニュアンスが強くなります。

この言葉を使う際は、相手や状況をよく考慮することが大切です。

まとめ

「生き馬の目を抜く」は、非常に素早く行動し、他人を出し抜いたり、気づかれずに利益を得たりする、油断も隙もない様子を表す慣用句・ことわざです。

その語源は「生きている馬の目ですら抜き取るほど素早い」という強烈な比喩にあり、江戸時代の競争の激しい社会状況を背景に生まれたとされます。
多くの場合、「ずる賢い」「抜け目がない」といったネガティブな評価を伴うため、使用する際には注意が必要です。

現代社会の競争の激しさや、抜け目のない立ち回りを表現する際に用いられる言葉ですが、その強い語感と背景にある意味を理解しておくことが重要です。

コメント