意味・ニュアンス – 花々に例えられる女性の美しさ
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」とは、美しい女性の容姿や立ち居振る舞いを、それぞれの花の美しさに例えて最大限に賞賛する言葉です。
芍薬、牡丹、百合という、それぞれに異なる魅力を持つ美しい花々を引き合いに出し、立っている時も、座っている時も、歩いている時も、どんな時でもその女性が美しいことを表現しています。
優雅で、やや古風な響きを持つ言い回しです。
由来 – なぜ芍薬・牡丹・百合なのか?
このことわざは、それぞれの花の持つ特徴や咲き方が、女性の美しい姿や振る舞いを連想させることから生まれたと考えられています。
- 芍薬(しゃくやく): すっと伸びた茎の先に、華やかで美しい花を咲かせます。そのすらりとした立ち姿が、美しい女性が立っている姿に重なります。
- 牡丹(ぼたん): 枝分かれした低木に、大きく豪華な花を咲かせます。その豊かで安定感のある姿が、椅子などにゆったりと座っている女性の華やかな美しさを思わせます。
- 百合(ゆり): 清らかで凛とした花姿で、風に揺れる様子には気品があります。そのしなやかで優美な様子が、美しい女性がしとやかに歩く姿に例えられます。
このように、女性の異なる姿勢や動作の美しさを、それぞれの花の最も美しい瞬間に見立てているのです。

補足:漢方薬に由来する説
別の説として、これらの植物が漢方薬として用いられる際の効能に関連付ける考え方もあります。
- 芍薬:主に根を使い、血行を良くして筋肉のけいれんや痛みを和らげる効能があり、美肌効果も期待されることから、すらりとした美しさに結び付けられた。
- 牡丹:根の皮(牡丹皮)が婦人病の薬として用いられることから、女性の健康的な美しさを象徴するとされた。
- 百合:球根(鱗茎)が咳止めや滋養強壮、精神安定などに用いられることから、清らかでしとやかなイメージに繋がった。
ただし、一般的には花の姿そのものから連想されたとする説が広く知られています。
使用される場面と例文 – 美しさを最大限に称える時
この言葉は、主に女性の容姿や立ち居振る舞いの美しさを、感嘆の気持ちを込めて表現する際に使われます。
物語や詩的な表現の中で用いられることもありますが、現代の日常会話で頻繁に使われることは少なくなってきているかもしれません。
使う場合は、相手への最大限の賛辞として伝わるでしょう。
例文
- その女優は、まさに「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と称されるにふさわしい美しさだった。
- 祖母は若い頃、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と言われるほどの美人だったそうだ。
類義語 – 美人を称える他の言葉
美しい女性を称賛する言葉は他にも多くあります。
- 花顔柳腰(かがんりゅうよう):花のように美しい顔立ちと、柳のようにしなやかで細い腰つきのこと。美人の容姿を具体的に描写する言葉です。
- 羞花閉月(しゅうかへいげつ):花も恥じらい、月も隠れてしまうほどの絶世の美人のこと。中国の四大美女(西施、王昭君、貂蝉、楊貴妃)の美しさを形容する言葉に由来します。
- 沈魚落雁(ちんぎょらくがん):魚も水底に沈み、雁も地に落ちるほどの美人のこと。こちらも中国の故事に由来する言葉です。
これらの言葉は、いずれも最上級の美人を称える表現ですが、由来やニュアンスが異なります。
対義語 – 直接的な反対語は?
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」に直接的に対になるような、容姿が美しくないことを指すことわざや慣用句は特にありません。
容姿について否定的な表現を使うことは、相手を傷つける可能性があるため、一般的に避けるべきとされています。
あえて反対の状況を考えるならば、「平凡な容姿」「飾り気のない様子」といった表現になりますが、これらは対義語というよりは、単に「際立って美しいわけではない」状況を示す言葉です。
英語での類似表現 – 美しさをどう伝えるか?
このことわざの持つ詩的なニュアンスや、特定の三つの花に例える文化的な背景をそのまま英語で表現するのは困難です。
直訳しても意味が通じにくいでしょう。
美しさを称賛するという意図を伝えるには、以下のような表現が考えられます。
- She is as beautiful (lovely) as a flower.
意味:彼女は花のように美しい。 - She possesses breathtaking beauty in every movement.
意味:彼女はどんな動きも息をのむほど美しい。 - A woman beautiful in any pose (or state).
意味:どんな姿勢(状態)でも美しい女性。(説明的な表現)
特定の決まった英語表現があるわけではなく、状況に応じて美しさを称える言葉を選ぶことになります。
使用上の注意点 – 現代における捉え方
この言葉は、女性の美しさを花に例えた非常に優雅な表現ですが、現代で使用する際にはいくつか注意したい点があります。
- 古風な表現: やや古めかしい言い回しであるため、日常会話で使うと少し大げさに聞こえたり、場違いになったりする可能性があります。
- 容姿への言及: この言葉は、主に外見的な美しさを称賛するものです。美しさの基準が多様化し、内面や能力なども重視される現代においては、容姿だけを取り上げて称賛することが、必ずしも肯定的に受け止められるとは限りません。相手や状況によっては、容姿至上主義と捉えられたり、不快感を与えたりする可能性も考慮する必要があります。
使う場面や相手との関係性をよく考え、相手がどのように感じるかを想像してから使うことが望ましいでしょう。
まとめ
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」は、美しい女性の立ち居振る舞いを、それぞれの花の持つ美しさに例えて称賛する、古くから伝わることわざです。
芍薬の立ち姿、牡丹の座った姿、百合の歩く姿という、異なる状況での美しさを捉えた、非常に優雅で詩的な表現と言えます。
現代では使う機会が減っているかもしれませんが、女性への最大限の賛辞として用いられてきました。
ただし、容姿のみを称賛するニュアンスがあるため、現代社会においては使う相手や状況を選ぶ配慮が必要です。
コメント