意味と用いられる状況
「異口同音」とは、たくさんの人が口々に同じことを言う様子、または多くの人の意見が一致することを表す四字熟語です。
会議や話し合いの場で、参加者全員が同じ結論に至ったり、ある出来事について複数の人が全く同じ証言をしたりするような状況で使われます。
- 異口(いく):異なる口。つまり、たくさんの人々の口を指します。
- 同音(どうおん):同じ声、同じ言葉、同じ意見のこと。
文字通り、「異なる口から同じ音(意見)が出る」という意味合いになります。
多くの人が同じ意見を持っている、という状況を的確に表現した言葉と言えるでしょう。
由来 – 多くの声が一つになる時
「異口同音」の語源は、複数の説がありますが、中国の歴史書『旧唐書・酷吏伝上(くとうしょ・こくりでんじょう)』にある一節に由来するという説が有力です。
そこでは、罪人たちがみな同じように「無実だ」と訴える様子が描かれており、「異口同音に『自分は無実だ』と叫んだ」という記述が見られます。
また、仏教経典の『法華経』などにも類似の表現が見られ、多くの人々が仏の教えを同じように称賛する場面などで使われています。
これらの背景から、「多くの声が一つになる」という状況を表す言葉として定着していったと考えられます。
使われる場面と例文
「異口同音」は、会議での決議、事件の証言、世間の評判など、複数の人の意見や発言が一致する様々な場面で使われます。
肯定的な場面(満場一致など)で使われることが多いですが、口裏合わせのように、不自然な一致を指して使われることもあります。
例文
- 会議の参加者は異口同音にその提案へ賛成した。
- 事件の目撃者たちは異口同音に犯人の特徴を述べた。
- 彼の人柄の良さは、誰もが異口同音に認めるところだ。
- 子供たちは異口同音に「楽しかった!」と叫んだ。
類義語 – 同じ意味合いを持つ言葉
- 衆口一致(しゅうこういっち):多くの人の意見や言うことが一致すること。「異口同音」とほぼ同じ意味で使われます。
- 口を揃える(くちをそろえる):多くの人が同じことを言う、という意味の慣用句です。「異口同音」よりもやや話し言葉的な表現です。
- 満場一致(まんじょういっち):会議場などにいる全員の意見が一致すること。「異口同音」よりも、特に会議などのフォーマルな場での全会一致を指す場合に用いられます。
対義語 – 反対の意味を持つ言葉
- 異口異音(いくいおん):人によって言うことが違うこと。「異口同音」の直接的な対義語です。
- 衆説紛紛(しゅうせつふんぷん):多くの人の意見が様々で、まとまりがつかない様子。意見が乱立している状況を表します。
- 三者三様(さんしゃさんよう):考え方、やり方、あり方などが、人それぞれに違うこと。意見の一致が見られない状況を示します。
- 百家争鳴(ひゃっかそうめい):多くの学者や専門家が、自由に自説を発表し、論争すること。様々な意見が活発に交わされる状況を指します。
英語での類似表現
- with one voice / with one accord
意味:一致して、異口同音に。複数の人が同じ意見や感情を表明する様子を表します。 - unanimously
意味:満場一致で。特に投票や決定などが全員一致で行われることを指します。 - in unison
意味:一斉に、調和して。声や動作などが完全に一致している様子を表します。音楽のユニゾンのようなニュアンスも含みます。
使用上の注意点 – 肯定的な意味だけではない?
「異口同音」は、主に意見の一致や共通認識を示す肯定的な文脈で使われます。
しかし、場合によっては、誰かに強制されたり、事前に示し合わせたりした結果として、表面上だけ意見が一致している状況(口裏合わせなど)を指し、皮肉や批判を込めて使われることもあります。
そのため、文脈によって意味が変わる可能性がある点に注意が必要です。
まとめ
「異口同音」は、多くの人が同じ意見を述べたり、同じ内容を口にしたりする状況を表す四字熟語です。
その由来は中国の古典や仏教経典とされ、会議での全会一致や、複数の証言が一致する場面など、さまざまな状況で使われます。
一般的には肯定的な意味合いが強いものの、文脈によっては口裏合わせのような不自然な一致を指すこともあるため、使い方には注意しましょう。
多くの声がひとつにまとまる様子を的確に表す言葉として、知っておくと役立ちます。
コメント