井戸の中の蛙大海を知らず

ことわざ
井戸の中の蛙大海を知らず(いどのなかのかわずたいかいをしらず)

17文字の言葉」から始まる言葉
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「井戸の中の蛙大海を知らず」の意味・語源・由来

意味

井戸の中にいる蛙は、そこが世界の全てだと思い込み、広い海があることを知らないということ。

転じて、自分の狭い知識や経験だけで物事を判断し、広い世界や可能性があることを知らない人や、そのような状態を指します。

専門分野に閉じこもり、他の分野に目を向けない人や、小さな成功に満足し、さらなる成長を目指さない人に対して使われることが多いです。

このことわざは、広い視野を持つことの大切さを教えてくれる戒めの言葉です。

語源・由来

このことわざは、中国の古典『荘子(そうじ)』の「秋水篇」に由来します。

以下のような話が出典とされています。

ある時、河の神「河伯(かはく)」は、自分の治める河が秋の長雨で増水し、どこまでも広がっているように見えたため、「世界で最も大きい」と誇っていました。

しかし、河伯が河を下って北海(ほっかい)までたどり着くと、あまりの広大さに驚愕します。

そこで北海の神「海若(かいじゃく)」にこう言いました。

「私は自分の河が一番大きいと思っていたが、ここであなたに会い、自分の考えが間違っていたことに気づいた。このままだったら、私は物知りな人から笑いものにされていただろう。」

海若は次のように答えました。

「井戸の中の蛙に海のことを話しても理解できない。なぜなら、蛙は狭い場所に閉じこもっているからだ。
夏の虫に氷のことを話しても理解できない。なぜなら、虫は夏しか知らないからだ。
狭い了見の学者に道のことを話しても理解できない。なぜなら、学者は自分が学んだ教えに縛られているからだ。
しかし、あなたは今、自分の住んでいた狭い河から出てきて、大きな海を見た。そして、自分の過ちを知った。これからは、あなたと大きな道理について語ることができるだろう。」

この話から、「井戸の中の蛙」が狭い見識を、「大海」が広い見識を象徴するようになり、「井戸の中の蛙大海を知らず」ということわざが生まれました。

「井戸の中の蛙大海を知らず」の使い方(例文)

  • 彼は自分の専門分野では優秀だが、他の分野には全く興味を示さない。まさに井戸の中の蛙大海を知らずだ。
  • 海外留学を経験したことで、井戸の中の蛙大海を知らずだった自分に気づき、視野が広がった。
  • あの社長は、自社の業績が好調なことに満足し、海外市場に目を向けようとしない。
    まさに井戸の中の蛙大海を知らずだ。

注意!間違った使い方

  • 彼は旅行が好きで、世界中を旅している。まさに井戸の中の蛙大海を知らずだ。
    →この使い方は誤りです。「井戸の中の蛙大海を知らず」は、狭い世界しか知らない人を指します。
    世界中を旅している人は広い視野を持っているため、このことわざは当てはまりません。

「井戸の中の蛙大海を知らず」の類語

  • 管から天を窺う(くだからてんをうかがう):狭い見識で、大きな事柄について、勝手な推測をすることのたとえ。
  • 針の穴から天を覗く:自分の狭い了見で、大きな事柄を推測することのたとえ。
  • 木を見て森を見ず:物事の細部や一部分に気を取られて、全体像を把握できないことのたとえ。

「井戸の中の蛙大海を知らず」の対義語

  • 滄海の一粟(そうかいのいちぞく):広い海の中の一粒の粟(あわ)。広大なものの中に、極めて小さいものが存在することのたとえ。
  • 管仲随に昇る(かんちゅうずいにのぼる):見識が広くて、奥深いことのたとえ。

「井戸の中の蛙大海を知らず」の英語表現

A frog in a well cannot conceive of the ocean.

井戸の中の蛙は、大海について想像できない。
「井戸の中の蛙大海を知らず」を直訳的に英訳した表現です。

例文:
He has never been abroad and knows nothing about other cultures.
A frog in a well cannot conceive of the ocean.
(彼は外国に行ったことがなく、異文化について何も知りません。井戸の中の蛙大海を知らず、です。)

He has a parochial view.

彼は視野が狭い。
parochialは「教区の」という意味ですが、「(考えなどが)狭い、偏狭な」という意味でも使われます。

例文:
If you only read the local news, you will have a parochial view of the world.
(地元のニュースしか読まないと、世界に対する視野が狭くなります。)

He is small-minded.

彼は心が狭い/器が小さい。
考え方が偏狭な人を指す際に使われる表現です。

例文:
He is so small-minded that he can’t accept any opinions different from his own.
(彼は心が狭いので、自分と異なる意見を受け入れることができません。)

まとめ

「井戸の中の蛙大海を知らず」は、限られた環境でしか経験のない人が、自分の知る世界が全てだと思い込む姿勢を戒めることわざです。

私たち自身も「井の中の蛙」にならないよう、常に好奇心を持ち、新しい考え方や経験に対して心を開いておくことが大切です。

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